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第三章 魔法学園

事件の影に彼女あり!です

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ニリーナ様に説明を求められたアロイスは困った顔をする。

「全部話すと長くなるので少し省略すると、
南の帝国に行ってソーマ皇子と仲良くなってあれこれ話してたら何故か皇帝にも会うことになってしまい、まぁそうしたら周りの皇族を刺激したらしく刺客を向けられまして…」

ペラペラ喋り始めたアロイスの話は相変わらず規格外なことばかりだ。

「いや~帝国は相当ピリついてるらしくてなりふり構わずって感じでソーマ皇子たちが住んでいた離宮がほぼ全焼してしまいました。」

「全焼?」

ルルが青ざめた顔で立ち上がる。

「手紙には何も…ソーマやみんなは?」

「あっ、死者は出てないから大丈夫。怪我人も軽い火傷やすり傷程度だし。ルルの部屋の品物も移動したから大丈夫だよ。っていうか離宮の中のものは大体全部移動したから。」

「品物だけじゃなく人もお前が運び出したんだろ?
ったく見境なしに魔力を使いまくるからその後敵に追われて魔力切れになるんだ。」

ニリーナ様に口を挟まれアロイスは苦笑いを浮かべる。

「さすが師匠は何でもお見通しですね。

そうなんです。火事の現場から人や物を運び出す移動場所に選んだ空き地に不思議な気配があるから調べたらちょうど別件で探してたヴェルフィアウルフ狩の犯人連中のアジトに行きついて。」

ヴェルフィアウルフ狩?
あっ!学園に来る直前に辺境伯領の魔の森であったあれか!

私は服の上からいつも首元に隠しているお守りをギュッと握った。

「帝国の第三妃はご自分の息子フェイ皇子を何としても次期皇帝に即位させるつもりらしく伝説の聖獣を作り出し用意した聖女と共にフェイ皇子が神に選ばれし皇帝だと宣言するつもりだったようです。

ヴェルフィアウルフとサバニアタイガーの力を併せ持ったハーフを作り出す実験を繰り返していました。

そこの犯人連中も放火犯のついでに捕まえて檻に囚われていたサバニアタイガーやヴェルフィアウルフは仲間の元へ送り返しました。
その子以外は。」

アロイスがホープに向かってニコッと笑顔をむける。

「ちゃんとマリーの元にたどり着いたんだね。良かった。」

「それに関しちゃ感謝してほしいね。アタシがわざわざ面倒ごと引き受けて連れてきてやったんだから。
まぁあのままソーマ皇子の側に置いときゃあっちが神に選ばれし皇帝?になれてただろうけど。
すでにその動きが始まってて連れてくったときゃあエライ感謝されたさ。ソーマ皇子は皇帝の座にさらさら興味がねぇらしい。」

ニリーナ様の言葉にアロイスは苦笑しながらうなずいている。

「そうなんです。そんな窮屈な椅子に座らされたらたまったもんじゃないと嘆いていらっしゃいました。
彼女をマリーの元へ連れてきてくださりありがとうございます。

あっ、そうだ!

師匠なら私がいつ賢者になれたのか分かりますか?」

唐突なアロイスの質問にもニリーナ様は平然としている。

「あぁ?そんなのお前がアイツを助け出した時に決まってんだろ?」

ニリーナ様はいつのまにかくわえていた煙管を口に挟んだままアゴでホープを示す。

一方のホープはキョトンとした顔で頭を傾けた。

(助けてもらった時、何かあったかなぁ~
あっ、そういえばパァーって光が差してすごくおじいちゃんな仲間が賢者アロイスとホープの額に鼻でツンってしたよ。
寝ぼけてたから本当か夢か分かんないけど)

私がホープの言葉を伝えるとアロイスはびっくりしている。

「本当?俺には全然見えなかったよ。何も感じなかったし」

「人間の分際じゃ目にすることはできないってことさ。ホープや仲間を解き放ったことが功績として認められたんだろう。
そんで?
犯人たちを拘束し終わったとたんに魔力切れを起こしたお前をまだ敵が潜んでいるかもしれないからと洞窟に隠してソーマ皇子は味方の連中と皇帝の元へ向かい、
揉め事を解決して戻ってみたら姿が消えていたらしいじゃないか。」

「いや~」

アロイスは頭の後ろに手をやって恥ずかしそうにしている。

「それがちょっとドジを踏んじゃって精神層で偽ニリーナに捕まっちゃって。」

出た!やっぱり事件ある所に偽ニリーナ様あり!だね。
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