179 / 247
第三章 魔法学園
ついに帰ってきました
しおりを挟む「ア、ア、ア~」
アロイスの名前が出ずに口をパクパクさせる私を懐かしい香りがフワッと包み込む。
「ただいま、マリー驚かせてごめんね。」
優しく背中を撫でられて私は込み上げてくる涙を必死に押し戻しながらアロイスを抱きしめ返した。
帝国に行く前は私の方がちょっぴり背が高かったのにはっきり分かるくらい抜かされている。
いくらなんでも急に成長しすぎじゃ?色々疑問もあるけどアロイスの温もりを感じていたら全部どうでも良くなってしまった。
「お、遅いよ~色々、本当に色々大変だったんだから~」
「そうだよね、ごめん。」
ちっとも驚かない。さすがアロイス。見た目や雰囲気は変わっても規格外なところは変わってない。
私の色々についてももう把握済みなのかな?
「よく無事に戻ったなアロイス。」
陛下の言葉に、ケッとニリーナ様が頬杖をついて一蹴する。
「たりめーじゃないか。私の弟子がほいほいくたばっちゃこっちの面目も丸潰れだっての。」
いつもに増してすごい言葉使いなのは無事に帰ってきた嬉しさ隠しなのかな?
そんなニリーナ様にアロイスが苦笑しながら深々と頭を下げるとニリーナ様は眉をひそめジッとアロイスを見つめてから思わずという様子で立ち上がった。
「アロイス、お前…」
そっとアロイスに近寄り周りをぐるぐる回って眺めた後、戸惑った様子のアロイスのおでこをピンっと弾いた。
「あんた、師匠を早々に超えようなんていい度胸してんじゃないか。」
「いて!」
おでこをさすりながらアロイスは目を白黒させている。
「師匠を超える?」
陛下の戸惑った声も聞こえるけど私は頭に響いてきたホープの言葉に気をとられていた。
(不思議な気配すぐそこにいるよ。
ホープとそっくりだけど似てなくて、すごく強い。)
(え?すぐそこ?)
慌てて辺りを見回した時、アロイスの隣から青白い光が発光し、黒い生き物が現れた。
小型犬?にしては尻尾は猫みたいだし…
(マリー出たい出たい!)
ホープが珍しく騒ぐので驚いてしまう。
(いいよホープ。でもちゃんと側にいてね。)
ちゃんと聞いていたのか分からない勢いでホープはスッと私の中から出てくる。
呆気に取られてアロイスの方を見ていた部屋の皆んなが今度はホープの放つ強い光でこちらに注目してくる。
姿を現したホープは何も気にしていないらしくプルプルッと光を弾き飛ばすように身震いしてから真っ直ぐにアロイスの側に向かう。
(こら、ホープちょっと待って。)
急いで後を追おうとしたけどアロイスの側にいた生き物がクルリと振り返って真っ直ぐ私を見つめてきたから足が前に進まなくなってしまった。
ホープはクンクンとその生き物の匂いを嗅ぎまわり相手も嫌がりもせず好きにさせている。しばらくして二人は鼻と鼻をチョンとすり合わせ、ご機嫌なホープが私の元へ戻ってきた。
(マリー彼は仲間だった。賢者アロイスに仕えてる)
「賢者アロイス?」
驚いて思わず大声をあげてしまうとアロイスが照れたように頭の後ろに手をやる。
「いや~何かいつの間にかそんなことになっちゃって。」
「な~にがいつの間にかだ食えないガキだよ。」
「あ痛!もうニリーナ様それやめてくださいよ。地味に痛いんですから。」
再びピシッと額を弾かれたアロイスが不満げに声を上げる。
「いつの間にか賢者と認められて守護獣との契約まで果たしたってのか?次は何だ?いつの間にか神にでもなってんじゃないのか?」
「さすがにそれは…ないですよ。」
少し迷いながら答えるアロイスに周りの他の人の方が固まっている。
「へん、ちゃっちゃと全部説明しな。
こっちはあんただけじゃなくてあの女の子たちもかわいい顔して無茶するからそっちの対応もしなきゃいけなくて忙しいんだ。
全くどいつもこいつも手がかかるったらありゃぁしない。」
さすがのニリーナ様も疲れたのか椅子にどかっと座り足を組んで額を揉んでいる。
申し訳ない…
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。
ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」
──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。
「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」
婚約者にそう言われたフェリシアは──
(え、絶対嫌なんですけど……?)
その瞬間、前世の記憶を思い出した。
彼女は五日間、部屋に籠った。
そして、出した答えは、【婚約解消】。
やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。
なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。
フェリシアの第二の人生が始まる。
☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる