悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

ゆりまき

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第三章 魔法学園

王宮から呼び出されました

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翌朝、朝食とともに王宮からの手紙が運ばれてきた。
急な呼び出しにはなるが夕食を共にと記されたその手紙を口元に当てて考える。
どうやらアスターさんは昨日のうちに先触れを出しておいたらしい。

共に夕食に呼ばれたメンバーは昨日の面々に加えディルにリークやエドワード様、二人の護衛であるアンディーブ様やカストルももちろん出席するだろう。のんちゃんを除けばいつものメンバーが勢揃いだ。

のんちゃん、どこにいるんだろう…

朝食もそこそこに慌ただしく支度が始まった。
ホープは何が楽しいのか地獄のフルコース略式版を受ける私の横にピッタリ張り付いて嬉しそうに眺めている。

(マリーきれいきれいね~ヒラヒラシャラシャラ素敵ね~)

歌うように呟くホープが可愛くて自分には大振りすぎるな~と思っていたネックレスやブレスレットを首元や翼の根元に付けてあげる。

(わぁ、ホープもキラキラになった!ありがとう!)

うれしそうに部屋中を歩きまわって見せるホープにアイリーンも優しい眼差しを向けている。昨日連れて帰ってきた時はだいぶ驚いていたけど、この分なら打ち解けるのにも時間はかからないだろう。

そうこうしているうちに出発の時間になって迎えにやってきた王家の馬車に分かれて乗る。

私とディルはあまり緊張してないけどセーラは顔色も悪く小さく震えているみたい。

「大丈夫?セーラ。」

きちんと膝に重ねられた手を取るとヒンヤリしている。

「わっ、冷たい。大丈夫だよ。私たちが何か咎められるわけじゃないんだし」

ねっとディルに目を向けると困ったように首をかしげられた。

あれっ?もしかして叱られる可能性あり?

「多少危ないことに手を出していたのですからお小言ぐらいは覚悟しておいた方がいいかもしれないですよ。」

ううっ、もしかしてディルも怒ってる?敬語だしなんか笑顔がちょっと怖い。

私は無意識にセーラに身を寄せて彼女の両手を握りしめていた。

「大丈夫、私も一緒ですから。」

セーラが優しく言ってくれる。
あれ、おかしいなぁ。最初は私がセーラを慰めていたはずなのに。

私が首をかしげている頃、別の馬車ではルルとカストルが揉めていたらしい。

「揉めるというか、お兄様の融通の利かなさにルルが怒っていたんですわ。


とはイライザ談。

「お兄様があのように感情を表に出すのは珍しいことですから私はルルのような友人がそばにいてくれるのは良いことだと思っているんですが、お二人は互いを友人ではないと言っていて…まぁ似た者同士なんでしょうね。」

頬に手を当ててため息をついてみせるイライザはなんだか楽しそうだった。

リークはエドワード様やアンディーブ様と移動できて嬉しそうだった。(王宮に着いて馬車から降りてきたエドワード様は若干呆れた様子だったけれど)

ここでふと気付いた。肝心のアスターさんとソリーさんがいないことに。

慌てる私にイライザが呆れたような視線を向けてくる。

「嫌ですわマリー今更気づきましたの?
お二人はおそらくもう王宮についていらっしゃると思いますわ。」

「そうなんだ、やっぱりそれは王…」

イライザに睨まれて私は王家の影という言葉を飲み込んだ。

「お、王国にとって重大な話だから一刻も早くってことかな?」

慌てて言い直すとホッとした様子のセーラやルルも黙って頷いてくれた。

ふー秘密って苦手なんだよな~
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