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第三章 魔法学園

噂の人物が目覚めます

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ドシンっと盛大に尻餅をついて思わずイッテーと大声が出た。

痛みで目の前がチカチカしていたのが徐々におさまってくる。

ひんやりとした空間。岩の天井から絶え間なく雫があちこちから落ち、おそらく唯一濡れない場所だった巨大な平たい岩の上にたっぷりとしかれた枯葉とずり落ちた柔らかく温かい毛皮の敷き物。
ここに寝かされていた俺は毛皮ごと転がり落ちたらしい。

剥き出しのごつごつした天然石の地面に打ちつけた全身が痛い。

起きあがろうとしたけど痛いし身体が固まっているらしく動けない。

しばらくボーっと横たわったまま鍾乳洞のように尖った先から落ちてくる雫を眺める。

俺をここに隠せたということはソーマもおそらく無事なんだろう。
俺は日に焼けた人懐っこい暖かな笑顔を思い出す。

およそ一国の皇子らしくない見た目に性格もあっけらかんとしていて皇帝候補に示唆されて本人が一番困惑しているようだった。

宮廷内の足の引っ張り合いや企みに嬉々として参加するような性格ではなさそうだ。ルルの方がよっぽど策士に向いている。

ソーマはゲームではチラッとしか出てこなかった。エドワードルートの悪役として出てくるルルがヒロインをいじめ倒してでもエドワードの婚約者。王妃の座を狙った理由がソーマ皇子の帝国内での地位を確立するためだった。という事実が発覚、ヒロインが他のルートを選べば二人は和解しルルはエドワードと結婚。
でも残念ながらヒロインがエドワードとの好感度をある一定のところまであげるとソーマ皇子死去の知らせが届き廃人のようになったルルは帝国へと帰国。他国に人質同然で嫁がされる。
ちなみに自身の義理の姉がヒロインになるなんて許せないとルルの右腕よろしくヒロインに嫌がらせをしていたリノアは悪事が露見してルルと共に帝国へ送られルルの侍女として仕えるが帝国にいる間に暗殺される。ルルはエドワードルート以外では王妃になるハッピー?エンドなのにリノアだけはなぜこうも死に行く運命なのだろうか…

そんなことをつらつらと考えていたら目の前にずいぶんと透けた姿のリーダーがひょっこり現れた。

(大丈夫か?)

(あれ、リーダーずいぶん半端な姿だな)

(言い得て妙だ。
そなたの魔力量が足りなかったので力と実体のほとんどを彼方に置いてきた。
早く起き上がって魔力を注いでくれ)

(俺への扱い酷くない?
痛くて立ち上がれないんですけど…)

リーダーは長いしっぽをクルクル回してうっすらと笑ったような顔になる。

(我らの苦悩や葛藤をいともたやすく覆すと申したのだ。多少の八つ当たりぐらい多めに見よ。)

(ちぇっ。悪かったよ。もっと言い方を考えるべきだった。にしても本当に今動けないんだ。)

(癒しの力を使えばよいではないか。お主のマントに縫い付けられておる。)

俺は首だけ動かしてマントの裾、マリーが直してくれた部分を眺めた。確かにあの時、もしもの時の為に癒しの魔力のカケラを縫い込んでくれていた。

(いや~何か勿体なくてさ。今じゃないんじゃないかと思っちゃって使えないんだよな~)

(今使え。グズグズしているとあの女に見つかって厄介なことになるぞ)

リーダーがそう脅すから渋々俺はマントについた魔力のカケラを自分の中に取り込む。

じんわりと暖かく優しい熱が広がって強ばり固まっていた身体がみるみる軽くなる。

(さっすがマリー速攻で効くな。)

俺はスッと立ち上がって伸びをした。
清々しい気分だ。

ぐるっと辺りを見回すとどうやら滝の裏側にある洞窟らしい。光が差し込んできている側が緩くカーブしているから見えはしないけど滝が流れ落ちる音が聞こえている。

(さっさとしてくれ。あの女に見つからぬ様少ない力を駆使して気配を消してやっているのだぞ?)

フワフワと透けたリーダーが近づいてきて俺の額に自分の額をくっつけてきた。

俺は目を閉じてリーダーの体に力を注ぎ込む。リーダーの小さな体はすぐに魔力で満たされたけどどうも魔力の循環がうまく行っていない箇所がある。
ちょうど心臓の辺りだ。冷え切って強ばり固まったようなその箇所に自分の中に滞留していた癒しの魔力を移しこむ。

目を閉じていても分かるくらい強い光が数秒間輝き続けた。
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