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第三章 魔法学園

その頃噂の人物は…

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(ここから少しのんちゃん視点の話が続きます。)


心地よいまどろみの中ざわざわとした雑音が混ざってきて俺は嫌々ながらゆっくりと意識を戻していった。

「あっ、起きた!ずりーよな、望。
いっつも先生に見つからずに寝ててよ~」

「お前はイビキかいて寝るからすぐ見つかるんだろ。」

「こないだ寝言まで言ってたぞ。」

「う、うるせーな。」

目を開けてすぐにわちゃわちゃとふざけあう悪友たちの姿が目に入る。いつもの光景のはずだけどなんだか久しぶりな気がするな。

「今日の放課後どうする?今日はゆきちゃん部活の日だろう?」

「望んちでゲームやろうぜ。」

いつもバカなことばかり言っている奴がフッフッフッ。と変な笑い声を上げながらポケットから取り出した箱を高く掲げて見せた。

「ウッわ。どうしたんだよそれ!最近出たゲーミングマウスじゃねーか。」

「どうよ、どうよ、どうよこれ。
かっこいいだろう。バイトしまくって買ったんだよ~
これを手に入れるために何枚皿を洗ったことか。」

「つーかお前パソコンでゲームしないだろ。」

「だから今日、望に教えてもらうんじゃん。」

「はぁ?意味わかんね~なんで先にそれを買うんだよ。」

「だってかっこいいじゃん。持ってるだけで素敵な感じするだろ?」

「意味わかんねー」

「馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけどここまでとはな~」

「失礼だな~かっこいいものを持ち歩きたいってのは男のロマンだろ?
しかもこれ、虹色に光るんだぜ?」

「あのな、ゲーミングマウスは普通持ち歩かねーよ?」

「虹色に光るのはよくある仕様だよ。それより安いやつで虹色に発光するやつあるぞ。」

俺が箱からマウスを出して触らせてもらいながら言うと奴は、ウソだろ?!と大袈裟に嘆き始めた。

「まぁ家でゲームするのは構わないけどさ…」

そう口にした時背後からトンっと肩に手が置かれる。小さくて白い女の子の手だ。皆んなが急に黙り込んだから不思議に思って振り返るといつか告ってきたあの女が立っていた。

なるほど、彼女持ちのやつが黙って何か警戒してると思った。

「邪魔してごめんね。望くん、ちょっといいかな?」

綺麗な笑顔を浮かべてるけど全く気持ちが動かされない。

「わぁ~、なんだよモテるな~望。でも望にはゆきちゃんがいるからな~」

バカが大声で…イラッとする俺をよそに彼女はふふっと小さく笑う。

「有希はただの幼なじみなんでしょう?」

こちらの顔を覗き込むように言われる。
真っ白な肌に大きな黒い瞳。自分の見た目に自信があるんだろうな~可愛く首をかしげて見せてる。同性から見たらあざとすぎて嫌われそうだ。
淑女教育をバッチリ叩き込まれた俺がこんな薄っぺらい作り笑顔に騙されると本当に思ってるのかな?

ここまで考えてからおやっと思った。

「ど、どうしたんだよ望。
まさかクラッと来ちゃった?」

固まっている俺に友人から心配そうな声をかけられる。

望。そう俺は望だ。でもアロイスでもある。リノアでもある。

「どうしたの望くん。有希はただの幼なじみでしょう?何も気にすることないじゃない。」

「ただの幼なじみかどうか決めるのはお前じゃないだろ。」

俺の固く冷たい声に彼女の笑顔が引きつった。

「ただの幼なじみじゃないってこと?」

「俺らの関係をわざわざ聞きたがる理由は?」

「それはもちろん…私、望くんが気になってて…」

恥ずかしがるようにもじもじとうつむく彼女の姿に更に心が冷えていく。

「うわ~やべえ。俺らここにいちゃまずくない?」

そりゃそうだ。こんなところでする話じゃないよな。でもこいつ…


「悪いけど俺は全く君に興味持てないよ。」

「そんな…ひどい。そんな言い方…」

「もうちょい演技勉強したら?偽ニリーナ。本当は何て名前なんだ?」

「…」

黙り込んだ彼女の周りがボヤけて友人たちや教室の風景が揺らいでいく。
やっぱりな、という思いとたとえ幻覚だったとしてももう少し奴らと話していたかったという気持ちがぐるぐるこみあげる。

「簡単に名を明かすわけないじゃない。
見破ったのはお見事。でもその未覚醒の状態じゃ、彼らのいい餌食ね。せいぜい逃げ回りなさい。」

先ほどまでのはにかむような笑顔が嘘のように消え、冷たく蔑むような笑みを浮かべ彼女はゆっくりとボヤける景色に溶け込んでいった。

同時に複数の不穏な気配を感じ始める。

俺はグッと手を握りしめた。
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