上 下
153 / 247
第三章 魔法学園

新しい友達は最強のアシスト能力を持ってます

しおりを挟む
魔力を使ってこれ以上何か噂されたら嫌だけど明らかに様子がおかしい生徒もいる。

私は覚悟を決めていつものように操作画面を目の前に出す。

メニュー表示、能力、光魔法、浄化、上級、狭域。

(待ってマリー、こんな狭い範囲で上級浄化を浴びたら精神に影響が出るものもいるかもしれない。
下級浄化、広域に変更して。
1回で足りなかったら何度かやればいいよ)

突然響いてきたホープの声に従って急いで変更して両手をかざし魔法を発動させる。

フワッと柔らかい光が辺りに一瞬で広がり緩やかな風がひと吹きクラスを吹き抜け窓の外へと流れていった。

険しかったみんなの表情が少し緩んでいる。
放心したように座り込んでいた生徒たちはボンヤリと私の顔を見上げまぶしい光を見ているかのように目を細めている。

「あれ?なんかよく考えるとなんであんなにスリジェさんに腹を立ててたんだろう」

「すっげえ感じ悪って思ってたけどそもそもあんまり関わりないし話したこともあんまりなかったなぁ。」

「ロベリアがしょっちゅう噂してたから話にだけは聞いたことあったけど…あの子いっつも噂話ばっかりしてて何であんな話信じてたのかな?」

憑き物が落ちたようなと言うのはきっとこういうことを言うんだろう。
少しすっきりした表情で戸惑うようにキョロキョロあたりを見回しているクラスメイトたちは小声で囁きあっている。

心優しいヒロインはこの状況を喜びみんなと仲直りして素敵な学園ライフを送るんだろう。

でも残念ながら私は全然ヒロインの自覚もないしディルの方がヒロインらしいと思ってるから急にみんなの考えが変わったことに寒気すら感じてしまう。
洗脳しちゃったわけじゃないよねと青くなりつつ自分の魔力の強さが今更ながらに恐ろしくなった。さっきまでの騒ぎに自分たちも関わっているという自覚を持っている人があまりいないみたいなのも怖い。

だってさっきまでみんな私のこと睨んでたしひどい言葉を向けてきたのに今は不思議そうにこちらの様子を伺っているだけだ。

小さく震える指先に暖かいフワフワしたものがあたる。
ホープが耳をすり寄せてきていた。

(大丈夫?マリー)

私はしゃがんでホープと同じ目線になる。

(大丈夫。ちょっと驚いただけだから。さっきはありがとう。)

照れたようにエヘヘっと頭をこすりつけてくるホープかわいい。癒される。

理事長といつの間にか来ていた担任の先生が生徒たちに声をかけて全員を席に座らせひとりずつ別室で話を聞かせてもらうと話している中、ホープの首に腕を巻きつけて放心していた私の肩にそっと手が置かれた。
見上げるとセーラが心配そうにこちらを見下ろしている。

「マリーは大変な目にあったんだからひとまず場所を移しましょう」

ディルやイライザ、ルルも私を囲んでくれてセーラが伸ばした手につかまりそっと立ち上がった。

「マリー…」

涙ぐむイライザがギュッと抱きしめてくれる。

「ごめんなさい、マリー。私がおかしな態度をとってしまったせいですわ。」

抱きついてきた体は細かく震えていてイライザも怖かったんだ。と改めて感じジワっと涙が出てくる。

三日くらい会わなかっただけなのにイライザの姿が見られて声が聞けて、何より私を嫌って避けてたわけじゃないらしいことが嬉しくてギュッとイライザを抱きしめ返す。

席に座りながらもチラチラこちらを見ているクラスメイトの視線から隠すように私たちを囲んでセーラたちと教室を出るとディルの先導で私たちはクラスを出て人気のない中庭に出る。歩きながら私はずっと黙り込むルルのことが気になっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?

ラララキヲ
恋愛
 乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。  学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。  でも、ねぇ……?  何故それをわたくしが待たなきゃいけないの? ※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。 ◇テンプレ乙女ゲームモノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。

処理中です...