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第三章 魔法学園
イライザさんがご立腹です
しおりを挟む旅立って行ったのんちゃんの予言?通り。授業は入学前にワクワクドキドキ、楽しみにしていたものとはちょっと違った。
座学の授業は念仏を唱えるような先生の声のおかげで睡魔と戦うのに必死だし実技の授業はずいぶん前にのんちゃんに教わったことばかりで気を抜くとやり過ぎちゃって皆んなから引き気味の視線を向けられちゃうし(先生を含む)別の意味でドキドキだ。
そんな中だからこそ、部活の時間が一番生き生きしているとルルに言われてしまうのも仕方がないと思う。
ルルはルルで寮にいる時間は気が休まらないせいで募ったイライラを部活で発散しているみたいだ。相変わらず帝国から来た使用人たちの態度は酷いらしく常に向けられる監視の目とたび重なる嫌がらせに疲れている様子でなんだか心配になる。
「ルル、今夜もお泊まり会する?」
汗を拭いながら私は尋ねる。
明日は学園が休みの日。その前日は私の部屋かイライザの部屋で集まってお泊まり会が恒例行事になりつつある。
いつもならすぐにうなずくルルだけど今日は残念そうに首を横に振った。
「今夜は第一、第二王子と会食があるので…とても残念だけど…」
「え?今夜?部活に出てて大丈夫なの?」
「大丈夫、時間あると余計なことされる。今から帰れば慌ててシンプルに準備だけ。」
黙っていると近寄りがたい神秘的な美女なルルだけどニンマリ笑う今は年相応で可愛いイタズラっ子の顔だ。
ルルが住む迎賓館まで送っていくと苛立ちをあらわにした侍女が入り口で待ち構えていた。
こちらに素っ気なく頭を下げるとやや乱暴にルルの背中を押して中へ消えていく。ルルはチラッとこちらを振り返り小さく手を振っていたけど勢いよく閉められた扉が私たちの間を隔てた。
大丈夫かな~何だか不安だ…
とぼとぼ女子寮に帰るとイライザの侍女が部屋から出てきた。
にこやかな彼女に招かれて部屋に入ると着飾ったイライザと困ったように微笑むセーラが向かい合って座っている。
「遅いですわ、マリー。話を聞いてもらおうと待っていたのに。セーラが親身に聞いてくださったのよ?」
「ええ?そんな~言ってくれたら早く帰ってきたけど…」
早速用意された椅子に座りながらつぶやくとセーラがにっこり笑いかけてくれた。
「気にしないで、イライザさんは今すこし苛立っていらっしゃるだけですから。」
「少しじゃないですわ。全く貴女の婚約者様ときたらすぐに妹を連れ出してしまわれるんですから。」
「ああ、のんちゃんまだ帰らないもんね。」
「おかげで今夜もリノアの代理で私が迎賓館で行われる会食に出席するはめになってるんですのよ?おまけにリークときたらそのことを私に伝え忘れたとか言って授業終わりに伝えてくるし。彼女たちにも無理をさせてしまいましたし。」
イライザが侍女たちに目線を向けると彼女たちはニコニコと首を振っている。
帝国の侍女たちの無愛想さと大違いだ。
私はつい、先ほどのルルとの会話や彼女の侍女たちの様子を話してしまった。
「…バタンって扉を閉められて。ルルが大丈夫か心配なんだよ~」
話終わりイライザを見ると眉間に深くシワを寄せ、真っ赤な顔をしている。
「なんて礼儀知らずな。この地に共に来た時点で主人はルル様のはず。それに、あんなに頑張り屋で良い方にそんな振る舞いをしているなんて許せませんわ!」
「ルルの気が休まらないのも心配です。」
2人はルルが使用人たちから監視されている話は知っていたけれど細かい嫌がらせは知らなかったらしい。
「よろしいわ。今夜の会食で彼女たちの行動をじっくり観察して参ります。アラを探し出してルルの側から外させますわ。」
毅然として立ち上がったイライザは激しい意気込みで迎賓館へと出かけて行った。
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