上 下
134 / 247
第三章 魔法学園

イライザさんがご立腹です

しおりを挟む

旅立って行ったのんちゃんの予言?通り。授業は入学前にワクワクドキドキ、楽しみにしていたものとはちょっと違った。

座学の授業は念仏を唱えるような先生の声のおかげで睡魔と戦うのに必死だし実技の授業はずいぶん前にのんちゃんに教わったことばかりで気を抜くとやり過ぎちゃって皆んなから引き気味の視線を向けられちゃうし(先生を含む)別の意味でドキドキだ。

そんな中だからこそ、部活の時間が一番生き生きしているとルルに言われてしまうのも仕方がないと思う。

ルルはルルで寮にいる時間は気が休まらないせいで募ったイライラを部活で発散しているみたいだ。相変わらず帝国から来た使用人たちの態度は酷いらしく常に向けられる監視の目とたび重なる嫌がらせに疲れている様子でなんだか心配になる。

「ルル、今夜もお泊まり会する?」

汗を拭いながら私は尋ねる。
明日は学園が休みの日。その前日は私の部屋かイライザの部屋で集まってお泊まり会が恒例行事になりつつある。

いつもならすぐにうなずくルルだけど今日は残念そうに首を横に振った。

「今夜は第一、第二王子と会食があるので…とても残念だけど…」

「え?今夜?部活に出てて大丈夫なの?」

「大丈夫、時間あると余計なことされる。今から帰れば慌ててシンプルに準備だけ。」

黙っていると近寄りがたい神秘的な美女なルルだけどニンマリ笑う今は年相応で可愛いイタズラっ子の顔だ。

ルルが住む迎賓館まで送っていくと苛立ちをあらわにした侍女が入り口で待ち構えていた。
こちらに素っ気なく頭を下げるとやや乱暴にルルの背中を押して中へ消えていく。ルルはチラッとこちらを振り返り小さく手を振っていたけど勢いよく閉められた扉が私たちの間を隔てた。

大丈夫かな~何だか不安だ…

とぼとぼ女子寮に帰るとイライザの侍女が部屋から出てきた。
にこやかな彼女に招かれて部屋に入ると着飾ったイライザと困ったように微笑むセーラが向かい合って座っている。

「遅いですわ、マリー。話を聞いてもらおうと待っていたのに。セーラが親身に聞いてくださったのよ?」

「ええ?そんな~言ってくれたら早く帰ってきたけど…」

早速用意された椅子に座りながらつぶやくとセーラがにっこり笑いかけてくれた。

「気にしないで、イライザさんは今すこし苛立っていらっしゃるだけですから。」

「少しじゃないですわ。全く貴女の婚約者様ときたらすぐに妹を連れ出してしまわれるんですから。」

「ああ、のんちゃんまだ帰らないもんね。」

「おかげで今夜もリノアの代理で私が迎賓館で行われる会食に出席するはめになってるんですのよ?おまけにリークときたらそのことを私に伝え忘れたとか言って授業終わりに伝えてくるし。彼女たちにも無理をさせてしまいましたし。」

イライザが侍女たちに目線を向けると彼女たちはニコニコと首を振っている。
帝国の侍女たちの無愛想さと大違いだ。

私はつい、先ほどのルルとの会話や彼女の侍女たちの様子を話してしまった。

「…バタンって扉を閉められて。ルルが大丈夫か心配なんだよ~」

話終わりイライザを見ると眉間に深くシワを寄せ、真っ赤な顔をしている。

「なんて礼儀知らずな。この地に共に来た時点で主人はルル様のはず。それに、あんなに頑張り屋で良い方にそんな振る舞いをしているなんて許せませんわ!」

「ルルの気が休まらないのも心配です。」

2人はルルが使用人たちから監視されている話は知っていたけれど細かい嫌がらせは知らなかったらしい。

「よろしいわ。今夜の会食で彼女たちの行動をじっくり観察して参ります。アラを探し出してルルの側から外させますわ。」

毅然として立ち上がったイライザは激しい意気込みで迎賓館へと出かけて行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...