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第三章 魔法学園

ここは乙女ゲームではなかったのでしょうか?

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「私は戦闘の方が性に合っていますね。体術も学びましたが今はこれの方が得意かもしれません。」

ソリーさんは言うと同時に手を動かしテーブルに何かが飛んできた。
よく見るとお茶菓子に出してくださったスコーン一つ一つに銀の短い串のようなものが刺さっている。

「手首に仕込んだコレから飛ばしています。」

ソリーさんが腕を振って小さな筒のようなものを見せてくれる。

「今はわざと見えやすくゆっくり投げていたけどいつもはもっと早いのよ~ソリーは拳銃の腕前もすごいし。」

アスターさんの言葉に私たちは目を丸くしてしまう。

「拳銃まで扱うんですか?」

「ええ、貴婦人の護身用の小さな物から仕込み銃まで色々練習できるわ。」

お二人が見せてくれたのは可愛らしいフリルがついた日傘の中棒が銃になっていて石突きから銃弾が飛びだすもの、ウエストに巻くお洒落なバックルがついたベルトのバックル部分の内側が実は銃になっているもの。
手袋の内側に隠し持つことができる小型銃などだった。

「のんちゃんのんちゃん、プリマベーラって乙女ゲームじゃなかったっけ?なんか、戦闘ゲームみたいだけど?」

ソファーから立ち上がり他にも色々な暗器をあれこれ見せてもらう中、私はのんちゃんにこっそり近づいてささやいた。

「そのはずだけど…なんかどんどんストーリーから脱線しててもはや本筋はないに等しいからな~まぁ、その方が自分の身の安静を確保できるからいいんだけど。」

二人でコソコソ話していたのに気づかれてしまいアスターさんがニコニコこちらへやってきた。

「いかがでしょう?我が部に興味を持っていただけまして?」

「もちろんです。入学前から淑戦部の話を伺って楽しみにしていたんです。」

「私も楽しみにしておりました。スリジェ家のご息女が入学なさるのを。」

アスターさんの目が怪しく光る。

「ぜひ、貴女の特技も披露していただきたいわ。騎士養成所の目に留まった剣技はもちろん、別の特技も。」

いつのまにか部屋は静まりかえり皆んながこちらを見ている。

「いいじゃない、減るもんじゃないし見せてあげなよ。相手役になるからさ。」

のんちゃんは注目を浴びていることなど一切気にならないらしく呑気にそう言い放った。

「でも、この技は人に見せびらかす為のものではないとお祖母様に言われているし。」

「お祖母様、セリーナ様ですわよね?」

アスターさんがキラキラした笑顔を浮かべ、私の両手を握った。

「貴婦人の中の貴婦人。美しく、強く、戦い方も優雅の極みだったと言われるセリーナ・スリジェ様。私の憧れです。
決して口外いたしませんから是非一目だけでも見せてください。」

大きなウルウルした黒目に見つめられる。
わぁ。こんなふうに頼まれたら断れないよ~
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