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第三章 魔法学園
いよいよ来ました淑戦部。
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『淑女暗器戦闘部』
真っ白な扉に美しい文字で書かれた金のプレート。よく読まずにいたら淑女の作法を学べる部活かと思ってしまいそうだ。
コンコン。っと金のノッカーを叩くとすぐに返事があり、躊躇なくのんちゃんが扉を開いた。
「こんにちは、見学希望の新入生を連れて参りました。」
サッとのんちゃんが身を引くと部屋の中が見渡せるようになる。
白い壁紙に床にはベージュと茶色の幾何学模様の絨毯が敷かれ、中央にはソファーセット。奥の窓際には白いクロスがかけられたテーブルにお茶のセット。二人の令嬢が向かい合って座っていた。
「まぁ、ようこそ。こんなにたくさんの方が見学に来てくださって嬉しいですわ。」
にこやかに立ち上がった令嬢は熟れたアプリコットのようなオレンジがかった髪をゆるふわハーフアップにしていて爽やかなミントグリーンに小花が散りばめられたドレスの上から真っ白でフリフリなエプロンドレスを身につけている。
そしてとっても小柄で可愛らしい。
座ったままこちらにペコっと頭を下げた令嬢は深い青色の髪のショートヘアに詰襟の細身なドレスを着ている。
短い髪もふくらはぎが見えるスリットの入ったドレスもこの世界では珍しいものだ。
「私はアスター。今年3年になります。彼女はソリダスティア。リノアさんと同じ学年の2年生ですわ。」
「ソリーと呼んでください。」
笑顔で紹介してくれたアスターさんの言葉とともにスッと立ち上がり頭を下げた彼女はとても背が高く中性的な美しさを持っていて彼女の方が3年生だと言われた方が納得できる。
「ご紹介しますか?」
のんちゃんが私たちの方に手を差し伸べるとアスターさんは笑顔のまま顔を横に振った。
「存じておりますもの。皆さん有名だから。スリジェさん、ローランドさん。そしてレディ・ランタナ。ようこそ、淑女暗器戦闘部へ。」
そうして私たちは部屋の中に招き入れられ中央のソファーに案内された。
「ちょっとお待ち下さいね。危ないものを片付けてきますから。」
アスターさんとソリーさんは白いテーブルクロスの裾を引っ張ったりティーセットを片付けたりテキパキと動き回ってから並んで座った私たちの向かい側に腰掛けた。
「見学にきてくださったのですよね?せっかくですからお茶を飲みながら見学してくださいな。」
アスターさんはポットを持ち上げてにこやかに言い、ソリーさんが手早く茶器をセットしてくださる。
いい香りのカップが配られ、のんちゃん以外の私たち三人は緊張気味にお礼を言いながらじっと向かい側の二人を見つめる。
「暗器戦闘部と銘打ってはおりますが、得意な戦い方は人それぞれ違います。入部して最初は自分に合うもの探しをしていただき互いに助け合いながら腕を磨き、自分に合うものも合わないものも一通りできるようになることを目指しています。」
どうぞ召し上がって。とうながされカップに手をかけて私はおもわず驚きの声をあげてしまった。
ソリーさんが渡してくださった紅茶は美しい琥珀色の澄み切った紅茶だった。でも今手元にあるカップの水面にはニコニコ笑顔を浮かべた小さなウサギが浮かんでいる。
セーラやルル、のんちゃんのカップも見せてもらうとクマや猫、キツネが浮かんでいた。
「驚きました?安心してくださいな。それは変わった形をしてますがお砂糖です。しばらくしたら溶けていきます。」
「見事ですね。魔法を使ったわけでもないのに。」
のんちゃんは感心した声を出しながら紅茶を飲む。
「フフ、相手に気づかれず、カップに触れずに物を仕込む。私の得意技の一つですわ。
これを身につけておけば、自分がされた時も分かるしもちろん仕掛けることもできる。甘いお砂糖でもその反対のものでもね?私は戦闘にならない戦い方が好きなもので。」
少女らしいあどけなさが残るアスターさんの物騒な一言に私は背筋がヒヤッとした。
淑女暗器戦闘部。思ってた以上にすごい部活みたい。
真っ白な扉に美しい文字で書かれた金のプレート。よく読まずにいたら淑女の作法を学べる部活かと思ってしまいそうだ。
コンコン。っと金のノッカーを叩くとすぐに返事があり、躊躇なくのんちゃんが扉を開いた。
「こんにちは、見学希望の新入生を連れて参りました。」
サッとのんちゃんが身を引くと部屋の中が見渡せるようになる。
白い壁紙に床にはベージュと茶色の幾何学模様の絨毯が敷かれ、中央にはソファーセット。奥の窓際には白いクロスがかけられたテーブルにお茶のセット。二人の令嬢が向かい合って座っていた。
「まぁ、ようこそ。こんなにたくさんの方が見学に来てくださって嬉しいですわ。」
にこやかに立ち上がった令嬢は熟れたアプリコットのようなオレンジがかった髪をゆるふわハーフアップにしていて爽やかなミントグリーンに小花が散りばめられたドレスの上から真っ白でフリフリなエプロンドレスを身につけている。
そしてとっても小柄で可愛らしい。
座ったままこちらにペコっと頭を下げた令嬢は深い青色の髪のショートヘアに詰襟の細身なドレスを着ている。
短い髪もふくらはぎが見えるスリットの入ったドレスもこの世界では珍しいものだ。
「私はアスター。今年3年になります。彼女はソリダスティア。リノアさんと同じ学年の2年生ですわ。」
「ソリーと呼んでください。」
笑顔で紹介してくれたアスターさんの言葉とともにスッと立ち上がり頭を下げた彼女はとても背が高く中性的な美しさを持っていて彼女の方が3年生だと言われた方が納得できる。
「ご紹介しますか?」
のんちゃんが私たちの方に手を差し伸べるとアスターさんは笑顔のまま顔を横に振った。
「存じておりますもの。皆さん有名だから。スリジェさん、ローランドさん。そしてレディ・ランタナ。ようこそ、淑女暗器戦闘部へ。」
そうして私たちは部屋の中に招き入れられ中央のソファーに案内された。
「ちょっとお待ち下さいね。危ないものを片付けてきますから。」
アスターさんとソリーさんは白いテーブルクロスの裾を引っ張ったりティーセットを片付けたりテキパキと動き回ってから並んで座った私たちの向かい側に腰掛けた。
「見学にきてくださったのですよね?せっかくですからお茶を飲みながら見学してくださいな。」
アスターさんはポットを持ち上げてにこやかに言い、ソリーさんが手早く茶器をセットしてくださる。
いい香りのカップが配られ、のんちゃん以外の私たち三人は緊張気味にお礼を言いながらじっと向かい側の二人を見つめる。
「暗器戦闘部と銘打ってはおりますが、得意な戦い方は人それぞれ違います。入部して最初は自分に合うもの探しをしていただき互いに助け合いながら腕を磨き、自分に合うものも合わないものも一通りできるようになることを目指しています。」
どうぞ召し上がって。とうながされカップに手をかけて私はおもわず驚きの声をあげてしまった。
ソリーさんが渡してくださった紅茶は美しい琥珀色の澄み切った紅茶だった。でも今手元にあるカップの水面にはニコニコ笑顔を浮かべた小さなウサギが浮かんでいる。
セーラやルル、のんちゃんのカップも見せてもらうとクマや猫、キツネが浮かんでいた。
「驚きました?安心してくださいな。それは変わった形をしてますがお砂糖です。しばらくしたら溶けていきます。」
「見事ですね。魔法を使ったわけでもないのに。」
のんちゃんは感心した声を出しながら紅茶を飲む。
「フフ、相手に気づかれず、カップに触れずに物を仕込む。私の得意技の一つですわ。
これを身につけておけば、自分がされた時も分かるしもちろん仕掛けることもできる。甘いお砂糖でもその反対のものでもね?私は戦闘にならない戦い方が好きなもので。」
少女らしいあどけなさが残るアスターさんの物騒な一言に私は背筋がヒヤッとした。
淑女暗器戦闘部。思ってた以上にすごい部活みたい。
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