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第三章 魔法学園

規格外に巻き込まれそうです。

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眠たい……

昼食後の座学授業って拷問だと思うのは私だけじゃないはず。

淡々と魔法理論を語る先生はたまにこちらに怯えたような目を向けてくる。

何?私何かしました?
力を入れていないとくっつこうとするまぶたに更に力を入れて先生を見つめる。

隣ではセーラが真面目にノートをとり、ルルは辞典とにらめっこしている。

二人とも偉いな~私も頑張らなきゃ。

睡魔になんとか打ち勝って授業が終わるとルルが先生に聞きたいことがあるらしく私もくっついて行く。

「先生、ちょっと質問が…」

クラスを出たばかりの先生に声をかけると何故か先生はビクッと飛び上がり恐々こちらを向く。

「スリジェさん…やはり。質問とは何ですか?」

なんでそんな切羽詰まった顔に…

私は首をかしげながら質問があるのはルルだというと先生は明らかに安堵した様子でルルに近づきニコニコ答えている。
おかしい。私先生に嫌われてる?

落ち込んだ私は授業が終わるとその日もまっすぐに寮へ帰りのんちゃんに相談してみた。

「あははは、ごめん。それ俺のせいだわ。」

私から話を聞いたのんちゃんは盛大に笑いながら私の頭をポンポンとなでた。

「いや~あの先生の授業ちょっと俺の解釈と違う部分が色々あったから面白いな~と思って質問攻めにしてたら先生参っちゃってさ。俺の婚約者だから同じ目に合うと思ったんじゃない?あと眠いの我慢してたのが睨んでるみたいに見えたのかも。」

「なにそれ、睨んでなんかないよ~
大体のんちゃんの規格外に私を巻き込まないでほしいな。入試の筆記だって中の中くらいだったって聞いてるし。」

「まぁね。実技が規格外だったらしいけど。」

「そ、それはのんちゃんの特訓のせい。いや、おかげでしょ?」

安心するやら腹立たしいやら。

「もう、今日こそは淑戦部に行こうと思ってたのにあんなことがあったからまっすぐ帰って来たんだよ。」

「え?なんだ。じゃあ今から一緒に行く?」

「いいの?」

いっきに笑顔になった私の頭をまたポンポンしながらのんちゃんはうなずいた。

ウキウキしすぎて周りを気にせずのんちゃんの手を引いて寮を出るとセーラとルルが帰ってきた所だった。
二人は手を繋いでいる私たちに一瞬目を見開いていたけど淑戦部に行く話をしたら一緒に来ることになり皆んなで部室へ向かう。

「淑戦部は最高学年の三人が卒部してから3年が一人、2年が二人になったんだけど2年の子の一人が結婚が決まって退部しちゃったから今は2人だけなんだよ。」

のんちゃんはあらゆる事に詳しい。
そうなんだよね、せっかく入学しても結婚が決まって花嫁修行の為に途中退学する女子は結構いる。男子生徒も家を継ぐ事になったり呼び戻されたり。実は魔法学園をきちんと4年間通って卒業する生徒は半分より多ければいい方。

最初の入学試験で魔力の強さが測られて一年目の基礎で自分の魔力を制御できるようになれば仮卒業となり後は退学する者、更に魔力を高めるため進級する者に分かれる。ちなみに制御できなければ留年。また一年生やり直しだ。
やり直し組はそのメンバーだけで集められたクラスに入り、制御をできるようになったものから退学していくのがほとんどと聞く。たまにいる例外を除いて…

のんちゃんが言うには今現在、魔法学園にその例外の代表格がいる。カミル・フォルトン先生。初日にルルをクラスへ連れてきた先生だ。

フォルトン伯爵家の三男である先生は一年留年した後に戻ってくるよう促す家族を説得し、最終学年まで通い続け成績優秀者の中に名を連ねて卒業、学長の元で数年修行をした後に昨年最年少で魔法学園の教師に着任された。
カミル先生の補習授業のおかげで今年は何十年ぶりに留年者が出ていないそうだ。と噂が流れていた。

でも私は知っている…

入学式の数日前、のんちゃんがお裾分けと言って新鮮な野菜やら魚を持ってきたことがあった。
聞けば同級生の平民生徒が留年しそうだと嘆いていたので面倒を見てあげて無事に仮卒業できたそうで親御さんからお礼に山ほど送られてきたらしい。

農家や漁業の子で魔力をもち学園に入学する子たちは大切な働き手でもあるので大抵一年間制御を学んで帰ってこいと送り出されていて留年は家族にとっても重大問題なのだ。

のんちゃんは言わないけど助けられた生徒はたぶん他にもいるはず。

のんちゃんはファン層をどこまで広げるつもりなんだろう?

そんなことを考えているうちに私たちは部室棟にたどり着いた。
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