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第三章 魔法学園

ルルの事情は複雑です

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のんちゃんが帝国の言葉を所々挟みながらルルの事情を聞き出してくれた。

ルルが住むランタナ帝国の現皇帝には正妃の他に何人もの妃がいて、ルルのお母さんはその内の1人。帝国軍に侵略された小国の王女だったらしい。
大した後ろ盾もなく与えられた離宮でひっそりと暮らす王女の元を皇帝は気まぐれに訪れ
ルルのお兄さん、ソーマ第三皇子とルルが生まれた。

二人は皇子、皇女として認知はされているけど正妃や他の妃たちの子のように独立した宮はなくお母さんと同じ離宮で暮らし、勝手に出歩くことは禁じられていたらしい。

「望むならどんな教育も学べマシた。お金も品物も。デモ望まなければ何もない。」

それはそれで厳しい環境だよね。
ルルもお兄さんも自分から望んで色々なことを学んだらしい。
平和に暮らしていた日々が変わってしまったのは皇帝のある発言からだったそう。

「余が素質があると認めた者に皇帝の座は譲ろう。生まれた順や後ろ盾、家格は関係ない。余が認めたことが最大の後ろ盾となるのだからな。」

ここで問題なのが、皇帝の言葉がだれを示しているかだった。
帝国には三人の皇子様と四人の皇女様がいたけれどその内三人の皇女様は嫁いで帝国籍を外れている。
現在国に残っているのは正妃の子である第一皇子。
そして正妃の出身と対をなす家柄の帝国ではかなりの勢力を持つ家門の妃の子である第二皇子。

誰が見ても皇帝が示しているのはソーマ皇子とルルだった。

もともと後ろ盾もないのに皇帝の子を二人も産んだことで他の妃たちから嫌がらせを受けていたルルたちのお母さん、そしてルルたちは命の危険にさらされるようになった。

ソーマ皇子はまずお母さんの体調不良を皇帝に訴え祖国での療養を願い出た。皇帝はその訴えを認めたけれど付き添いとしてルルを同行させるのは認めなかった。

そこでソーマ皇子が考えたのがルルのイシェラ王国への留学だ。
帝国で魔力を持つ者はごくわずか。
正しく学ぶ機会を与えるべきだという皇子の願いは聞き届けられルルはイシェラ王国へ来ることになった。

「イシェラ王国の言葉教える。来た先生全く違う国の言葉教えたデス。
イシェラ王国近くなってきたトキおかしい気づいた。
村の人ブローチ交換。本もらった。勉強しまシタ。
付いてきた侍女、メイド、護衛、皆もともと一緒だったとチガウ。
食事に毒入る。私気づく。毒以外はどこまで避けられるか分からなイ。
眠れない。疲れる。マリーの側、安心。心地よい。光の魔力とすごく強い防御のチカラ感じる。」

そうか、それでルルは真っ先に私の隣に来たんだ。

「それだけと違う。マリー優しい。暖かい。友達って言ってくれた。嬉しかった。」

わぁ、何気なく発した言葉だったけどルルにとってはすごく特別な言葉だったんだ。
深く考えずに言ってしまったけど、友達って思ってるのは本当だから私も嬉しい。

「大丈夫だよルル。私が力になる。言葉も教えるし。護りも…」

のんちゃんに目を向けると彼女も深くうなずく。

「護りも安心して。それにルルの周りにいる人間もどうにかしなきゃだね。」

「二人とも、よく考えて発言していらっしゃるの?下手をすれば現皇帝妃たちを敵に回すことになるんですわよ?」

イライザが硬い表情でそう発言する。

「私が喋りすぎた。忘れてください。」

青くなったルルの言葉にイライザは首を振る。

「あいにく記憶力には自信がありますの。忘れることなんてできませんわ。
困っている人を見捨てるほど冷たくもありませんし。」

私たちの視線を集めたままイライザは立ち上がる。

「やるからには徹底的に、足元をすくわれるような事がないように警戒しなければいけません。ルル様の言葉に関しても隣国のマリーより私や新入生代表のセーラさんの方がいいでしょう。マリーからは護身術を学ぶ方が適材適所ですわ。

護りに関してはエシャルロット兄妹に任せればいいでしょうし。

帝国から付いてきた方たちが一人一人誰の手先なのか、最終目的はなんなのか調べなくては。こちらから監視をつけて…」

どうやらイライザが1番頼りになりそうだと私はルルに微笑みかけた。
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