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第二章 イシェラ王国

私が知らないのんちゃんの胸の内

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(今回はのんちゃん視点です。)


「いよいよゲームスタートね。」

アリアドネ妃が嬉しそうに言い放つ。
いいよなぁ部外者は。
少しうんざりしているのが伝わったのだろうアリアドネ妃は俺に向かって

「大丈夫、悪い方向にいきそうになったらどんな手を使っても助けてあげるから。」

とウィンクしてみせた。

「ありがとうございます。」

コネは大事にしとくべきだよな。
それに1番の懸念案件を引き受けてもらった手前アリアドネ妃には感謝してるし。
少し膨らみ始めた彼女の腹部をチラッと見てから呑気にイドリス姫を抱いているマリーに目を向ける。

マリーには話してないけどヒロインにもバッドエンドはある。
特にやばいのがクリアフォルトだ。
ハッピーエンドなら2人は結婚して仲良く暮らしました的な流れだけど好感度をある程度上げたのに他のやつを選ぶとヒロインは監禁されずっとクリアフォルトだけの愛情を受けることになる。一生囚われの身だ。恐ろしい…
なんでアリアドネ妃の推しがクリアフォルトだったのか俺には全然理解できない。

けど幸せそうに暮らしてるみたいだしクリアフォルト殿下の愛情はアリアドネ妃に一身に注がれてるからマリーの身は安全だし。感謝しかないよな。

思わず拝んだ俺の意図が伝わっているのかアリアドネ妃は苦笑いを浮かべている。

他の攻略対象カストルや兄貴のアンディーブは今のところ恋愛に全く興味無さそうだしリークとディルも恋愛対象としてマリーを見ているわけじゃなさそうだ。
けどゲームが始まったら何か変わるのかもしれないし注意しておくに越した事ない。

後はゲーム内で一番人気だったエドワード第一王子。

実は二人はまだ会ったことがない。
マリーは遠くから見たことはあるだろうけど向こうがマリーを認識しているかは謎だ。
俺は兄貴やリークにくっついてリノアとして何度かエドワード王子に会っているけど…
あの堅物が国益より己の感情に走る姿なんて想像もできない。まぁ読めないという意味で一番警戒すべきだろうな。
向こうは最終学年。新入生との関わりなんて大してないし極力二人を出会わせないように気をつけよう。

俺はギュッと拳を握って気合いを入れた。

リノアの姿の時は精巧な目くらましを身にまとい声も変えているから完全に女に見えるはずだけどついこういう動作が出てしまうのに気をつけなきゃな。
スリジェ家で散々仕込まれたおかげで気を抜かなきゃ所作は完璧に近い。にしても貴族令嬢って大変だよな。
有希も良くあのしごきに耐えてきたな。ちょっと変な方向に頑張りすぎだけど有希らしいっちゃらしい。
今や完璧な辺境伯令嬢だ。

学園内でも新入生としてマリーが入学する噂が飛び交っていた。

希少な魔力持ちな上に武芸に長けているので有名なスリジェ辺境伯家の娘。父、春雷譲りの武芸の才と祖母セリーナ譲りの完璧な所作。しかも在学中は王弟夫妻預かりの身の上でエシャルロット公爵家の次男、つまり俺の婚約者。話題に事欠かなすぎだろ。

普段はリノアとして学園に通い、アロイスの姿ではなるべく目立たず最低限しか学園に姿を見せないようにしてるってのにマリーのせいで目立つことになったら面倒だな。ちょっと注意しておこう。

そう思ってマリーに話したらジト目を向けられた。
イライザから俺が学園で十分目立ってるし教師に恐れられていると聞いてるそうだ。
イライザったら大袈裟だな。
おまけにリノアの目くらましが自分より胸があると文句を言ってくる。
え?そういう体系が好きなのかって?
可愛いな~俺の好きなタイプはいつだってマリーだから安心して。

真っ赤になったマリーを愛でているとアリアドネ妃にごちそうさまと言われてしまった。

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