悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

ゆりまき

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第二章 イシェラ王国

いよいよ隣国へ出発です

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ヴェルフィアウルフの件が気になりつつも1日2日で何か進展するわけもなく私が隣国へ留学する日がやってきた。
学園の入学式までまだ数日あるけど手続きやら入寮準備やらで数日はイシェラ王国のお城に滞在させてもらうことになっている。

というのも留学中の身元保証人をクルートさん。いや、クリアフォルト王弟殿下とアリアドネ王弟妃が引き受けてくださるからだ。
初めはエシャルロット公爵夫妻が身元保証人のはずだったのがスリジェ家に世話になったからとの殿下の一言でまさかの王弟夫妻預かりの身の上になってしまったのだ。
問題を起こしたりしないよう気をつけねば。

屋敷のみんなに別れを告げてリノア姿ののんちゃんと共に転移魔法の間に入る。
これがあるおかげでしょっちゅう帰ってこられるしあまり寂しい感じはしないけど今はすっかり元気になったお祖父様やお祖母様、お父様に使用人の皆んなが勢揃いしてくれている。ちなみにアイリーンは一足先に魔法学園の女子寮に行ってくれているのでここにはいない。

「行ってきます。」

最後にもう一度手を振っているとのんちゃんが魔法を発動させた。
頭を下げる皆んなと見守ってくれる家族の姿がかき消えあっという間に王城に到着する。

しんみりする隙もなくて便利だけどこれはこれでどうなんだろう?

扉を開けて外へ出るとパタパタと小さな足音が聞こえてくる。

「マリー姉様、リノア姉様~」

太陽の光のようにまばゆく愛らしい少女が足早に近づいてくる。

「シャルロット姫さま」

私に両手を上げてくる姿が可愛すぎて挨拶もそこそこに抱き上げる。

「マリー姉様、リノア姉様。シャルずっと待ってたのよ。」

柔らかい頬を首にスリスリされる。可愛すぎて離したくない。

「チャルねえたま~」

さらに小さな男の子がまだよちよち歩きの女の子の手を引きやってきた。

「ラックス王子、イドリス姫こんにちは。」

ニコッと微笑みかけたつもりだけど王子はヒッと息を飲んで後ずさり、ヒラヒラ手を振っているリノアを見てその場に固まってしまっている。

「ちょっとラックス。失礼でしょ?ちゃんと挨拶なさい。」

シャルロット姫はさっきまでの甘えた感じから一転お姉さんらしく弟に注意している。

「だって、ねえたま…」

私が下に下ろすと姫は2人の元へ近づき両手に1人ずつ弟と妹を連れて戻ってきた。

「ごめんなさい、ラックスは今人見知り期間中なの。」

すまし顔で大人のように言うシャルロット姫の背中に隠れそっとこちらを伺っているラックス王子。

「そうなんだね。こないだまで抱っこさせてくれたけど忘れちゃった?マリーだよ。」

しゃがんで手を振るけどラックス王子は出てきてくれない。

イドリス姫はシャルロットに手を握られたままキョトンと私たちを見ている。

フワフワ柔らかい金髪の子供達三人を前に私の頬は緩みっぱなしだ。

この子たちはクリアフォルト殿下とアリアドネ妃の間に次々生まれた子供たちで、アリアドネ様のお腹の中にはもう1人子供を授かっていらっしゃる。

「リノア、マリー。」

呼ばれて顔を上げるとカストルを連れたリークがこちらに近づいてくる所だった。

スラリと背が伸びた金髪に空色の瞳のリークはゲームの中のリークそのものだ。周りを取り巻く環境が変わったせいか性格は少々違うかもしれないけど…

「遅いと思ったらチビたちに捕まってたのか。」

リークはニコニコしながらラックス王子を抱き上げ足にかじりついたイドリス姫ももう一方の腕で抱き上げ2人にひっつかれている。いいな~

そんなリークを静かに見守るカストルはゲームの姿とだいぶ違う。
マントも被っていないし鍛えているせいか背の高さよりガッチリとした体格の方に目がいくし騎士の制服がよく似合っていて迫力がある。中身は昔とあまり変わらず人付き合いは苦手な物静かなタイプなんだけど真面目に努力しているから周りからの信頼も厚い。
 
「母上たちが待ち構えてるぞ。会うのは久しぶりだろう?」

「シャルも姉様たちと遊びたいわ。」

「後でな。」

「後っていつ?待ちきれる?」

「待ちきれる待ちきれる。シャルロットは立派なレディだからな。」

「えへへ、もちろん。」

自分の横をスキップするように楽しそうに歩くシャルロット姫をリークは優しい眼差しで見つめている。

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