悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

ゆりまき

文字の大きさ
上 下
114 / 247
第二章 イシェラ王国

お父様はお怒りです

しおりを挟む
のんちゃんの規格外さを三度突きつけられた私が諦め顔で紅茶を淹れてあげるとアロイスは嬉しそうに香りをかいでいる。

「とにかく無事で良かったよ~あ、マントの端が破れてる。貸して?」

私が針を取り出しチクチク縫うのをアロイスはお茶を飲みながら楽しそうに眺めている。

「なんか、マリーも着々と淑女らしくなってくよね。」

「当たり前でしょう?誰に育てられてると思ってるの?」

お祖母様のおかげで淑女のたしなみは一通りできるようになってるんだから。

楽しくおしゃべりしていたらドスドスと荒い足音が近づいてきて扉がドンドンっと強く叩かれた。
私はアロイスと顔を見合わせてから返事をする。

「はい、どうぞ。」

すぐさま扉が開き青筋を立てたお父様が部屋に入ってくる。

「こんばんは、お父様。」

「お邪魔しています。アラン辺境伯。」

お父様は腕組みをしてアロイスを睨みつける。

「お邪魔していますじゃないだろうアロイス!何度言ったら分かるんだ。夜更けに婚約者とはいえ淑女の部屋を訪れるなんて非常識だ。」

「すみません。マリーに一目だけあったら帰ろうと思っていたんですが一緒の時間を過ごすという魅力に抗えなくてそれにアラン辺境伯にもお会いしたかったんです。急いで報告したいことがあって。」

なんか今またさらっと言ってたけど…もう少し慣れてきた自分が怖い。 

「まったく、日に日にファラスに似てきて困ったもんだ。」

「褒め言葉だと信じておきます。」

私の部屋で話すのはダメだと言うので三人でお父様の執務室へ移動する。
歩きながら夕食は食べたのかアロイスに聞いてあげている辺り、お父様もアロイスが好きなんだよね。
朝から携帯食しか食べていないというアロイスは

「そんなことだから背が伸びないのだ。」

と叱られている。

しゅんとしながらもどこか嬉しそうなアロイスもお父様が心配して言っているのがわかるのだろう。

執務室に到着すると机にはカリッと焼いたバケットに新鮮な野菜とお肉が溢れんばかりに挟まれたサンドイッチと暖かいスープが用意されていた。

目を輝かせるアロイスに話はまず食べてからだと告げるとお父様は巨大な執務机の前に座り書類をめくり始めた。

私は再び紅茶を淹れてアロイスとお父様の元に運ぶ。

あっという間に食べ終えたアロイスに足りたのか不安そうに聞くお父様。もはやお母さんみたいですけど…

皆んなで紅茶を飲んでひと心地ついた所でアロイスが例のツノを取り出す。

「今日、ヴェルフィアウルフの女帝からいただいたものです。」

さすがお父様、アロイスの唐突な規格外の話にもまったく動揺せずに黙ってツノをつまみあげしげしげと眺めている。

「切り口を見てください。自然に折れたにしてはおかしい。何度も刃を当てて少しずつ削り切り込みを入れたあとがあります。
調べたところ微量ですが刃物のこぼれカスと血がついていました。」

「誰かがヴェルフィアウルフのツノを密猟していると?」

神妙にうなずくアロイスと眉間にシワを寄せるお父様。

「このツノが最近のものなのかどうかはわかりません。女帝の力も移っているので。ただ最近ヴェルフィアウルフの頭数は減る一方だとアラン辺境伯がおっしゃっていたのを思い出したので。」

「確かにそうだ。もともと希少ではあったが最近成獣になれる数が減っているように感じていた。
まさかツノを採取するために?愚かな…」

「調べる価値はあると思います。
僕の推測ではヴェルフィアウルフの餌となる動物に大量の毒草を食べさせ、魔法で匂いを変えまだ魔法を感知できない子供が近づく場所にしかけ毒にやられた後ツノを奪っていると思われます。」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には 好きな人がいた。 彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが 令嬢はそれで恋に落ちてしまった。 だけど彼は私を利用するだけで 振り向いてはくれない。 ある日、薬の過剰摂取をして 彼から離れようとした令嬢の話。 * 完結保証付き * 3万文字未満 * 暇つぶしにご利用下さい

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。

ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」 ──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。 「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」 婚約者にそう言われたフェリシアは── (え、絶対嫌なんですけど……?) その瞬間、前世の記憶を思い出した。 彼女は五日間、部屋に籠った。 そして、出した答えは、【婚約解消】。 やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。 なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。 フェリシアの第二の人生が始まる。 ☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?

宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。 そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。 婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。 彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。 婚約者を前に彼らはどうするのだろうか? 短編になる予定です。 たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます! 【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。 ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...