悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

第一章 リトア王国

クルートさんとお話しします。

場所を応接間に移し、私たちはクルートさんと向かい合った。

「それで、どこまで知っているんです？」

「たぶん、ほぼ全部ですね。」

にこやかに答えるアロイスにクルートさんは
変わらず無表情だ。

「あなたは各国の要注意人物リストに載せられることになりそうですね。」

「その前に賢者として名を売っておきますよ。」

「すでに手遅れでしょうね、少なくとも二つの国で。」

指を2本立てたクルートさんに、えーっと不満そうな声をあげるのんちゃん。

そりゃ色々やってそうだもんね。

「しかし、感謝すべきなのでしょう。
少なくとも私にとっては良いきっかけができました。」

座ったまま頭を下げるクルートさんに私はあたふたしてしまった。

「礼にはおよびません。いずれ来るはずだった機会が早まっただけですし、この機会を生かすも殺すも王弟殿下次第ですから。」

ニコニコ答えるアロイスはすごい。場慣れしすぎでしょう？王弟殿下だよ？知らなかったとはいえ普通に接してた私はこんなに緊張してるのに！

「でも、王弟殿下が何故名前を変えて我が家にいたのかは知りません。」

アロイスは知ってるかもだけど無視無視、私は知らないもんね。

「アラン殿のおかげです。国に戻ったら私は自分を押し留められる自信がなかった。
再び兄上を失望させるようなことはしたくない。だが兄上との約束を守り二人に会わないまま王宮で暮らすことなどできる自信がなかった。
そこで王立騎士団長から退き辺境伯領へ戻るアラン殿が声をかけてくださりスリジェ家の当主補佐官として雇い入れてもらいました。」

「ではお父様も知っていらっしゃるのですね？リーク王子のことを…」

「アラン殿はアリアドネを兄上の第二妃にすることを反対してくれていましたから。」

なるほど、お父様はこんな事態になることを想定してたのかな？すごい。

コンコンっとノックの音がしてマントを羽織ったままのお父様が入ってきた。

「お父様、お帰りなさい。」

側へ駆け寄るとそっと頭に手を置かれる。

「ああ、ただいま。約束通りクルートを引き留めてくれてありがとう。」

アロイスたちとも挨拶をした後、お父様はクルートさんの前に立った。

アロイスがすっと立ち上がり私たちにも目配せする。
不思議に思いながらもディルに続いて立ち上がり部屋を出る。

「僕らは大体の事情を知ってるとはいえ子供の前じゃ話しにくいこともあるだろうから。」

なるほど。さすが気配りできるのんちゃん。

私たちは気を取り直して再び図書室へ向かった。