悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

ゆりまき

文字の大きさ
上 下
88 / 247
第一章 リトア王国

クルートさん?が到着です

しおりを挟む
あの時、アロイスはニコニコしながら言い出したのだ。

「僕、クリアフォルト様がどこにいらっしゃるか知ってますよ。

スリジェ辺境伯騎士団副団長 クルート様。アラン・スリジェ辺境伯の右腕として活躍していらっしゃいます。」

あの時の衝撃は今でも忘れられない。

「え?クルートさんが?あのいつもテキパキ働いてるメガネの人?」

「え?テキパキ?メガネ?何それ見たい。
今すぐスクショしたい。っていうか、クルートって名乗ってるの?ヤダ~私が呼んでた愛称じゃない。」

ざわめく私たちが落ちついたころにアロイスは再び話始めた。

「二リーナ様の偽物はリトア王国の貴族やリトア国王、イシェラ王国の貴族にも手を出して戦を起こそうとしています。
二リーナ様がそのことに激怒して双方の国に制裁を与えると言い出したことにしてもらえば…リトア、イシェラ両国の一大事です。
それをクリアフォルト王弟殿下が治めたとしたら…
大変な功績になりますよね?
陛下が望みを叶えてアリアドネ妃を王弟殿下の妃にしても不思議はないほど。
リーク王子にはお二人の出会いからきちんと説明してください。救国の騎士が自分の父親だと知って嫌がるタイプじゃないと思うんですよね。彼。」

「確かに、そういうの好きそうよねあの子。私に似ちゃったんだわ。」

アリアドネ様は頬に手を当てて困ったように首をかしげアロイスとワイワイ盛り上がっていたけど…

私の中のリーク王子の印象がどんどんおかしな方向へ向かっているのはどうしてくれるんだろう…

さて、お父様が出かけた後の勉強時間。私たち三人は図書室で各々の課題の本を読みながら午前中は何事もなく静かに過ぎていくと思っていた。

少しの間は確かに静かだった。でもその時間は長く続かず、急に図書室の窓がガタガタいい始め私たちは驚いて顔を上げる。

サッと窓に近づいたアロイスはすぐにこちらへ戻ってきた。

「なんだ、クルートさん。いや、クリアフォルト王弟殿下が到着しただけだ。」

いや、だけって。なんか窓の外に白い羽根みたいなのが舞ってる気がしますけど?

私とディルは窓辺に駆け寄りアロイスも頭の後ろで手を組みながら私たちの後ろをついて来た。

窓の外には驚きの光景が広がっていた。
白に近いベージュ色、たてがみやしっぽは薄茶色の立派な馬が真っ白な翼をはばたかせながらゆっくりと地上に降り立とうとしている。その背には金色の長い髪を三つ編みにした空色の瞳の……

「えぇ?あの人がクルートさん?いやクリアフォルト王弟殿下?

だってクルートさんは髪は黒に近い青だったし目は空色じゃなかったし。あんなキラキラした雰囲気背負ってなかったような…
しかもあれ、ペガサス?ペガサスってこの世界に存在するの?」

「ペガサスとは何ですか?」

一緒に驚いて覗いていたディルにきかれる。

「クルートさんの姿の時は魔法で見た目を変えて周りに自分の存在を溶け込ませる術を使っていたからね。
まぁ、だからこそ俺は怪しんで正体を探り出したんだけど。
あ、ペガサスっていうのは絵本に出てくる空想の生き物で翼を持つ馬のことだよディル。
でもあれはペガサスじゃないね。翼はクルート様が魔法で付けてる。
それにしてもあの飛び慣れてる感じ。きっとまだ小馬だった頃からやってたんだろうね。」

アロイスの言葉に二人でうなずいていたらクリアフォルト様がこちらを見上げていた。
私たちはペコっと頭を下げて急いで図書室を飛び出し玄関へ向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。

ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい! …確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!? *小説家になろう様でも投稿しています

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

他には何もいらない

ウリ坊
恋愛
   乙女ゲームの世界に転生した。  悪役令嬢のナタリア。    攻略対象のロイスに、昔から淡い恋心を抱いている。  ある日前世の記憶が戻り、自分が転生して悪役令嬢だと知り、ショックを受ける。    だが、記憶が戻っても、ロイスに対する恋心を捨てきれなかった。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい

みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたルビーは、このままだとずっと好きだった王太子殿下に自分が捨てられ、乙女ゲームの主人公に“ざまぁ”されることに気づき、深い悲しみに襲われながらもなんとかそれを乗り越えようとするお話。 切ない話が書きたくて書きました。 転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈りますのスピンオフです。

ヤンデレ悪役令嬢は僕の婚約者です。少しも病んでないけれど。

霜月零
恋愛
「うげっ?!」  第6王子たる僕は、ミーヤ=ダーネスト公爵令嬢を見た瞬間、王子らしからぬ悲鳴を上げてしまいました。  だって、彼女は、ヤンデレ悪役令嬢なんです!  どうして思いだしたのが僕のほうなんでしょう。  普通、こうゆう時に前世を思い出すのは、悪役令嬢ではないのですか?  でも僕が思い出してしまったからには、全力で逃げます。  だって、僕、ヤンデレ悪役令嬢に将来刺されるルペストリス王子なんです。  逃げないと、死んじゃいます。  でも……。    ミーヤ公爵令嬢、とっても、かわいくないですか?  これは、ヤンデレ悪役令嬢から逃げきるつもりで、いつの間にかでれでれになってしまった僕のお話です。 ※完結まで執筆済み。連日更新となります。 他サイトでも公開中です。

処理中です...