上 下
87 / 247
第一章 リトア王国

悪女扱いはごめんです

しおりを挟む
朝食を終えて食堂を出ると玄関にピシッと直立不動で騎士が2名立っていて私に気づくと何故か目を見張った後頭を下げてくれた。

私も頭を下げながら彼らの前を通り過ぎ、左右を守るようにアロイスとディルが立ってくれている。

「すげ~本当に元団長と同じ色だ。でもかわいくて似てね~しかももう男を侍らせてるぜ。将来が怖いな。」

「お前、辺境伯に殺されるぞ。馬鹿な発言するのは勝手だが俺を巻き込むなよ?」

「辺境伯ってどっちの?」

「どっちもだよ。」

は、は、侍らせてる?!

彼らの会話がしっかり聞こえた私は左手でディルを、右手でアロイスをぐいぐい押しやった。

「2人とももっと
離れて。」

ディルは大人しく二歩ほど離れてくれたけどアロイスは更にピッタリくっついてきた。

「あんな言葉気にしない気にしない。」

「嫌だよ~気になるよ。」

「じゃあ魔法であいつが言葉を発しても聞こえないようにする?」

「え?ヤダよ怖いよアロイスやめてよ。」

前はこんな人じゃなかったのに~

嘆く私の頭を冗談だよとポフポフしてるけど、あの顔は結構本気だった。
簡単だよ?って思ってるのが伝わってきたもん。

そうこうしているうちに応接間の前に差し掛かり、お父様がちょうど出てきた。

「「おはようございます。スリジェ辺境伯様」」
「お父様おはようございます。」

挨拶する私たちにお父様も挨拶をかえしてくれる。
アロイスがいることには何の違和感も感じていないらしい。

「マリーベル。陛下に呼ばれて王宮に行ってくる。皆と一緒に留守番していてくれ。
私が帰る前にクルートが到着したら必ず引き留めておいて欲しい。できるか?」

わぁ、お父様に頼まれるなんてしっかり頑張らなきゃ。

「はい、お任せください。」

久々に丁寧なカーテシーをする。
お父様の後ろにいたお客様たちがホゥと声をあげている。
どうだ、お祖母様仕込みの作法にはちょっと自信ついてきたんだから。

「昨日から陛下のご様子が以前の姿を取り戻したかのように調子がよく生き生きしていらっしゃるらしい。
決して良い状況というわけではない今だというのに。
アロイス、何もしてないだろうな?」

アロイスはまた天使のような輝く笑顔を浮かべている。

「そんなまさか、あの短い謁見の間に何をするとおっしゃるのですか?
何もしてないです。
あ、ちょっとした贈り物はしましたが…」

「してるじゃないか。何を贈ったんだ?」

「キノコです。デューク様も大変喜んでくださったので陛下にも是非と思って。」

お父様は右手で顔を覆いため息をついた。

「キノコを配り歩くのはやめなさい。
誰にでも合うか分からないだろ。」

「そんな~あらゆるサンプルをとって検証したのに…
でもそんなにすぐ効果が現れるなんて。もしかして食べちゃったのかな…」

「身体に危険が及ぶのか?!」

焦ったように身を乗り出すお父様にアロイスは笑いながら両手をふる。

「いえいえ、大丈夫です。あのキノコ小さかったし。陛下なら毒見役も複数名いらっしゃるでしょうから口にされたとしても少量です。
心も身体も浄化されてすこぶる調子が良いはずです。」

お父様は眉をひそめたまま慌ただしく出かけてしまった。
きっと自分の目で見ないと不安なんだと思う。

それにしてもクルートさんもう来るんだ早いな~

私はアロイスがアリアドネ様に言い出した提案を思い出していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

処理中です...