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第一章 リトア王国

二リーナ様は面倒ごとがお嫌いです

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近づいてきた私に気づき二リーナ様はニヤリと笑った。

「お嬢ちゃん、けったいな相手に捕まったね。」

「えぇ?」

「まぁ、あんたみたいな珍品を持ってる奴はこのくらいのに守られてる方が幸せだあね。自分の強運に感謝しときな。」

二リーナ様に髪をかき混ぜられアロイスはよろめいている。

「珍品って光の魔力のことですか?」

「あぁ。それか他にも心当たりがあんのかい?見たとこただの可愛いお嬢ちゃんって感じだけど。」

「ないですないです。」

私は慌てて手を振った。

「ふん、ならいいや。それよりあんた。そんな無防備な姿でいたら危ないよ。
お前もこの子がそんなに大事なら守りの一つも持たせたらどうなんだい?」

「守りなら渡して…マリーなんであのネックレス付けてないんだよ。」

「あ、ごめん。王宮なら危険はないかと思ってお祖母様たちが心配だから預けてきちゃった…」

「はぁ?あの人たちは兵士が百人押し寄せたって笑いながらお茶してられるよ。
一番危ないのはマリーなの!ちゃんと自覚してよ。もー
絶対に外せないように強制魔法を加えようかな…」

なにやらブツブツ言っているアロイスにお父様が近ずく。

「娘を心配してくれてありがとう。だが、あまり行き過ぎた品で拘束するのは感心しないな。」

「拘束だなんてそんな。マリーが嫌がるようなことはしませんよ。」

なんだろう…すごくにこやかなアロイスと仏頂面のお父様。2人の間に火花が散っているように見える。

「ほれほれ、いがみ合ってる場合じゃないよ。あんたらが協力してくれなきゃ私の面倒ごとが片付かないだろ?」

お父様は何のことやら分からなそうに二リーナ様を見てからアロイスに目を向けた。

「ま~た何か企んでるの?アロイス?」

ピリついた空間にどこからか現れたエシャルロット公爵の呑気な声が響いてきた。

二リーナ様が黙って伸ばした手に公爵様が何かをのせている。

「もう、二リーナ様も陛下も人使いが荒いんだから。困っちゃうよ。」

「なら次からはお前の息子を使うとするか。
なかなか使えそうな奴だし、性格も面白い。私好みだ。」

「え~それはそれで寂しいな~」

のんちゃん、二リーナ様にまでモテてる。

公爵様の声に気づき陛下もディルと一緒にこちらへやって来た。

「なぁ、キル坊。そろそろ弟を許してやっちゃどうなんだい?」

二リーナ様は手の中で輝く球のようなものを転がしながら陛下を見つめている。

陛下は突然の言葉に驚く様子もなく表情は変わらない。

「許すなど、そもそも私は初めから怒ってなどいない。
あれを城から出したのも貴族連中の勘ぐりで立場を悪くさせないためだ。
あれもアリアドネもむしろ私のわがままに巻き込んでしまった。」

「まぁ、普段わがまま言わないあんただからこそクリ坊もうなずいたんだろうよ。あの強情もんがね。

にしたってそろそろ帰ってきて本来の自分の仕事に戻るべきさ。

あんたは急にいなくなられちゃ困るかもしれないけど。さっさと後釜を探すんだね。」

最後の言葉はお父様に向けられている。

「いずれはこの日が来るだろうと思っていましたから。」

しれっと答えたお父様に二リーナ様はニヤリと笑う。

「そうかい。じゃ、娘が嫁に行く日のこともさっさと心づもりしときゃどうなんだ?」

「それとこれとは話が別ですので。」

答えながらお父様は私の肩に手を置いた。

「はん、あんたがそんな子煩悩になるとはね。長生きはするもんだ。」

「それで、彼に何をさせる気ですか?」

「何。大したことじゃないよ。
ちょっと私がリトアに戦をしかけるからそれを止めさせるだけさ。」

「…戦を止めるだけ…」

「あぁ、あとついでに私のニセモンを捕まえてリド教の腐ってるやつらも一掃して、リトアの国王も正気に戻させて…」

「引き受けるでしょうか…」

「受ける受ける。アリアドネの名前を出しゃすぐだよ。」

二リーナ様は笑いながら手をひらひらさせている。

「クリ坊のアリアドネ、アロイスのマリーベル。こういう分かりやすい弱みは大好きさ。」

カラカラ笑う姿が一瞬悪の親玉に見えてしまったのは仕方ないと思う。
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