悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

第一章 リトア王国

アロイスは何か企んでます

考えこんでいるアロイスに頼れないので私は何とか思い出に浸っているアリアドネ様に話しかけた。

「えっと、クリアフォルト様はプリマベーラに登場する時は先生として出てくるんですよね？だったらその時に再会できますよね。」

「まぁね～まだ数年後だけど。
それに今更どんな顔して会えばいいのか…」

「そんな～感動の再会になりそうなのに。」

「あの…」

考えこんでいたアロイスがようやく動きだした。

「リーク様はこの話は知っていらっしゃるのですか？」

「まっさか～知らないわよ、こんな話。
それこそ口も聞いてくれなくなるわ。」

う～ん。とアロイスは首をひねっている。

「もしかしたらリーク様は薄々感じとっているのではないでしょうか？
アリアドネ様や陛下たちが自分に何か隠し事をしているのを。」

「え？そんなこと…」

「ないと言いきれますか？」

うぅ、とアリアドネ様は扇子で顔を隠しながら考えている。

「このままにしておかない方がいいと思います。リーク様のことも。
アリアドネ様とクリアフォルト様の問題も。時間が解決してくれるものではないですよね？」

「嫌だ～正論振りかざす美少年なんて可愛くない。」

少しふざけた調子でそう言ってからアリアドネ様はため息混じりに扇子を下ろした。

「そうよね、分かってた。このままじゃいけないって。
そうは言っても責めを負うべき私がしゃしゃり出ていいものか…」

アロイスはその言葉を待っていたかのようにニッコリと笑顔を浮かべた。
天使のようなその姿の裏に詐欺師のような胡散臭さを感じるのは私だけだろうか？

「僕にいい案があります。」

歌うようなご機嫌な声が部屋に響き渡った。

アロイスの語りだした案に一番びっくりしたのは多分、私だ。

それから私たちはアリアドネ様に先導されて二リーナ様たちが話し合っている部屋へ向かった。

泉の間と呼ばれていると説明しながらアリアドネ様が案内してくれたその部屋は少し薄暗く、部屋の奥から青い光が溢れてくる。

「おや、結局来たのかい？」

声に導かれるように奥へ進むと先程よりは少ないが立派な木が何本か立ち並び、砂利混じりの地面を進むと大きな泉が現れた。
こんこんと透き通った水が湧き出るその前に国王陛下、お父様、ディルが立ち、すぐ側の巨大な木の根に王妃様と煙管をふかしながらこちらを眺める二リーナ様が座っている。

アロイスは素早く二リーナ様の側に駆け寄り深く頭を下げた後、頭を傾けた二リーナ様の耳元で何かささやいている。
王妃様も興味深そうに2人の方へ耳を寄せて話を聞いているようだ。

泉の前にいる男性陣はチラッと振り返りはしたもののすぐに視線を泉に戻している。

気になった私が後ろから泉を覗き込むと水面にリトア王国で会ったミルクティー色に紫の瞳の二リーナ様の偽物が写っていた。

音声は聞こえないけれど、数人の男性が、彼女の前に片膝をつき深く頭を下げていて、彼女は彼らの前を行ったり来たりしながら何か言い聞かせているようだ。

私が泉の映像に夢中になっていると唐突に二リーナ様の豪快な笑い声が聞こえてきた。

「あっはっは、そりゃいいわ。私も面倒なことしなくて済むし、この子の問題もいい方向へ進むんじゃないかい？ま、相手が承諾すりゃいいけどさ。持ちかける価値はあんだろ。」

アロイスの背中をバシバシ叩く二リーナ様の隣でエライザ様はアリアドネ様の両手を握って何か話している。
あれ、アリアドネ様少し涙ぐんでる？
心配になって私は4人に近づいた。