74 / 247
第一章 リトア王国
ドキドキの謁見です
しおりを挟む
イシェラ王国の国王陛下は黒い髪を後ろに撫でつけ、口髭を生やした口元はうっすらと笑みを浮かべている。
「ちょっとみんなして僕を無視するってどういうこと?」
拗ねたように声をあげる公爵様に呆れたような視線を向けてからお父様は私の背に手を置く。
「娘のマリーベル・スリジェと今回養子に迎え入れたディル・スリジェです。二人とも、陛下にご挨拶を。」
お父様の言葉にガクガク震えそうになりながらも一歩前に進み出てお祖母様にたっぷりしこまれたカーテシーをして名前を名乗った。
ディルも並んでお辞儀をして いるようだが今は自分のことで精一杯だ。
「なるほど、マリーベル嬢はまさにスリジェ家の色を受け継いでいるな。二人ともよく顔を見せてくれないか?」
陛下の言葉に従い顔をあげて初めて陛下の目を見ることができた。
相手の顔をじろじろ見るのはマナー違反だってお祖母様に気をつけるよう厳しく言われてたもんね。
陛下は晴れ渡った青空のような美しい空色の瞳をしていらっしゃる。
その目で興味深そうに私とディルを見ていた。
「幼いアランもこんなに可愛らしかったのかしら?」
陛下の右隣りに座る金髪の女性が黒い瞳を輝かせながらニッコリと私に笑いかける。
「アランは小さい頃から仏頂面だったに決まってるよ。一緒にしたらマリーちゃんが可哀想だ。」
お父様の隣に移動してきた公爵様が言うとようやくお父様は公爵様に顔を向けた。
「いらしたのか、エシャルロット公爵。」
「いたよ。ずっといたよ。お前も父親を無視するとは何事だアロイス。」
「これは気がつかず申し訳ありません。父上。」
ぜったい気づいてただろう…ぶつぶつ言う公爵様を面白そうに眺めながら陛下の左隣りに座っている女性が初めて口を開いた。
「二人は学生時代から変わらぬな。久しぶりに懐かしいやり取りをみた。」
女性にしてはハスキーな声につられて目を向けると透き通るような白い肌に銀色の髪、若葉のような緑色の瞳の妖精のように美しい人が座っている。
見た目もそうだけれど悠然とこちらを眺めている姿から王族の気品も感じられ思わず背筋が伸びる。
「今日は非公式の場だ。昔のように友として話そう。
私はイシェラ王国の国王キルライト。そして王妃のエライザと第二妃アリアドネだ。」
陛下の紹介に二人ともにこやかに私たちに挨拶をしてくれた。
金髪の女性がアリアドネ様、銀色の髪の女性がエライザ様。美しい女性を二人も妻に迎えているなんてさすが王様というべきか。前世の感覚では妻が二人なんてちょっと抵抗があるけど…
それにお父様の話ではアリアドネ様は転生者のはず…見ただけでは全然分からないけど。
私たちはいつのまにか用意されたテーブルに案内され木々に囲まれたお茶会が始まった。
「ちょっとみんなして僕を無視するってどういうこと?」
拗ねたように声をあげる公爵様に呆れたような視線を向けてからお父様は私の背に手を置く。
「娘のマリーベル・スリジェと今回養子に迎え入れたディル・スリジェです。二人とも、陛下にご挨拶を。」
お父様の言葉にガクガク震えそうになりながらも一歩前に進み出てお祖母様にたっぷりしこまれたカーテシーをして名前を名乗った。
ディルも並んでお辞儀をして いるようだが今は自分のことで精一杯だ。
「なるほど、マリーベル嬢はまさにスリジェ家の色を受け継いでいるな。二人ともよく顔を見せてくれないか?」
陛下の言葉に従い顔をあげて初めて陛下の目を見ることができた。
相手の顔をじろじろ見るのはマナー違反だってお祖母様に気をつけるよう厳しく言われてたもんね。
陛下は晴れ渡った青空のような美しい空色の瞳をしていらっしゃる。
その目で興味深そうに私とディルを見ていた。
「幼いアランもこんなに可愛らしかったのかしら?」
陛下の右隣りに座る金髪の女性が黒い瞳を輝かせながらニッコリと私に笑いかける。
「アランは小さい頃から仏頂面だったに決まってるよ。一緒にしたらマリーちゃんが可哀想だ。」
お父様の隣に移動してきた公爵様が言うとようやくお父様は公爵様に顔を向けた。
「いらしたのか、エシャルロット公爵。」
「いたよ。ずっといたよ。お前も父親を無視するとは何事だアロイス。」
「これは気がつかず申し訳ありません。父上。」
ぜったい気づいてただろう…ぶつぶつ言う公爵様を面白そうに眺めながら陛下の左隣りに座っている女性が初めて口を開いた。
「二人は学生時代から変わらぬな。久しぶりに懐かしいやり取りをみた。」
女性にしてはハスキーな声につられて目を向けると透き通るような白い肌に銀色の髪、若葉のような緑色の瞳の妖精のように美しい人が座っている。
見た目もそうだけれど悠然とこちらを眺めている姿から王族の気品も感じられ思わず背筋が伸びる。
「今日は非公式の場だ。昔のように友として話そう。
私はイシェラ王国の国王キルライト。そして王妃のエライザと第二妃アリアドネだ。」
陛下の紹介に二人ともにこやかに私たちに挨拶をしてくれた。
金髪の女性がアリアドネ様、銀色の髪の女性がエライザ様。美しい女性を二人も妻に迎えているなんてさすが王様というべきか。前世の感覚では妻が二人なんてちょっと抵抗があるけど…
それにお父様の話ではアリアドネ様は転生者のはず…見ただけでは全然分からないけど。
私たちはいつのまにか用意されたテーブルに案内され木々に囲まれたお茶会が始まった。
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。
ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる