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第一章 リトア王国
お母様出奔の真相とは 2
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オーレル伯父さんやマーガレット様と母の話をしていたら衝撃の事実。
「私はてっきり、お父様はお母様と私のことをずっと探し回っていらしたのかと…」
うろたえる私に対しお父様は表情を変えずにあっさりしている。
「人探しは今まで任務でも幾度となくこなしてきた。
素人のベルを見つけられないわけがないだろう?
もちろん対外的には探しているように振舞っていたが、教会が立つ彼の地は保養にとても良い場所だった。ベルが必要とする薬草もたくさん自生していたし。
教会の人間の何人かは私が派遣した者だ。
ベルの最後の時間も共に過ごすことができた。」
ここでアロイス様が首をひねりながらお父様に不思議そうに話しかける。
「ベル様が亡くなられてすぐにマリーベルを引き取らなかったのには何か理由があるのですか?」
お父様は苦い顔をしてアロイスと私を眺めた。
「もちろん、すぐに引き取るつもりだった。
だが、私が姿を現した途端に火がついたように泣き始めてな…
無理矢理連れ出すのはいたたまれなかったのだ。」
わぁ、申し訳ない。まったく記憶にございません。
前に初対面で泣き出さなかったマリー偉いとか思ってたよ。本当にごめんなさい。お父様…
「お、お父様…」
「いい。気にするな。」
青くなって口をパクパクさせる私の頭を撫でながらお父様が険しい顔になって睨んでいる。その視線をたどるとうつむいて肩を震わせているアロイスと顔を真っ赤にして笑いを堪えているディルがいる。
視線に気づいたディルは慌てて姿勢を正したが、アロイスはまだ笑っているみたいだ。
「疑問は解けたか?アロイス。」
お父様に呼びかけられ、アロイスもようやく顔をあげた。
「はい、教えてくださりありがとうございます。」
ちょっとアロイス、声が震えてるよ。
マーガレット様もオーレルさんも困った顔になっている。
「私はベルと頻繁に手紙のやり取りをしていたのでメイドからことの真相を打ち明けられたこと。身を隠さなければマリーベルが危ないことを聞き以前から懇意にしていたあの教会に行くよう手はずを整えたのです。
カイルはまさか私がベルの手助けをしているとは思っていませんでした。」
「マーガレット様はお母様と仲良しだったのですね。」
私の言葉にマーガレット様はにっこり笑った。
「ええ、ベルは屋敷からあまり出られなかったし。カイルとより長い時間一緒にいたんですもの。
だからこそ、結婚が決まった時も嬉しい反面寂しくて心配だったわ。
ベルは綺麗な人だった外見も内面も。」
オーレルさんも黙ってうなずいていたけれどゆっくり口を開いた。
「私は、あの息苦しい家を逃げ出すように出てしまった。
弟や妹を見捨てて。
カイルは、努力家で自分より家長にふさわしいと前から思っていたんだ。だが、うまく伝えられずに怒らせてしまい、そのままにしてしまった。ベルは私が家を出る話をしたらこれを渡してくれた。幸運を祈っていると言って。」
オーレルさんが私に渡して見せてくれたのはハンカチだった。もとは真っ白だったのだろうそれは色あせ少しヨレているけど大切に持ち歩かれていた証拠なんだと思う。
隅に美しい飾り文字で名前が刺繍されている。
「私はひどい兄だった。結局、ベルに何もしてやれなかった。
だからこそ今から挽回させてほしい。カイルのことは責任をもって面倒を見て更生させる。そしてマーガレット殿の元へ送り出す」
オーレルさんは私が返したハンカチを胸ポケットにしまい私たちを見回して言った。
マーガレット様はゆっくりと深くお辞儀をし、ディルもそれにならっている。
私はなんだかホッとしてお父様を見上げた。
無表情なお父様も心なしか嬉しそうに見える。
そうして私はマーガレット様にオーレルさんとも手紙のやり取りを約束してお別れになった。
みんな途中まで一緒に帰るのかと思ったら私たちはまだ行くところがあるらしい。
「今度はどこへ行くんですか?」
今日は王都にあるスリジェ家の邸に泊まり、明日出発だそうだけど…
「明日はイシェラ王国の陛下に謁見することになっている。」
お父様の言葉に私はピシッと固まった。
「え?連日王族にお会いするんですか?
しかも隣国ってそんなにすぐに行ける場所じゃ…」
「スリジェ家の敷地に隣国と繋げた道がある。アロイスの魔力があれば数分とかからず行けるだろう。」
振り返ってアロイスを見るとエヘっと肩をすくめている。
ちょっとのんちゃん。規格外にも程があるよ?
「私はてっきり、お父様はお母様と私のことをずっと探し回っていらしたのかと…」
うろたえる私に対しお父様は表情を変えずにあっさりしている。
「人探しは今まで任務でも幾度となくこなしてきた。
素人のベルを見つけられないわけがないだろう?
もちろん対外的には探しているように振舞っていたが、教会が立つ彼の地は保養にとても良い場所だった。ベルが必要とする薬草もたくさん自生していたし。
教会の人間の何人かは私が派遣した者だ。
ベルの最後の時間も共に過ごすことができた。」
ここでアロイス様が首をひねりながらお父様に不思議そうに話しかける。
「ベル様が亡くなられてすぐにマリーベルを引き取らなかったのには何か理由があるのですか?」
お父様は苦い顔をしてアロイスと私を眺めた。
「もちろん、すぐに引き取るつもりだった。
だが、私が姿を現した途端に火がついたように泣き始めてな…
無理矢理連れ出すのはいたたまれなかったのだ。」
わぁ、申し訳ない。まったく記憶にございません。
前に初対面で泣き出さなかったマリー偉いとか思ってたよ。本当にごめんなさい。お父様…
「お、お父様…」
「いい。気にするな。」
青くなって口をパクパクさせる私の頭を撫でながらお父様が険しい顔になって睨んでいる。その視線をたどるとうつむいて肩を震わせているアロイスと顔を真っ赤にして笑いを堪えているディルがいる。
視線に気づいたディルは慌てて姿勢を正したが、アロイスはまだ笑っているみたいだ。
「疑問は解けたか?アロイス。」
お父様に呼びかけられ、アロイスもようやく顔をあげた。
「はい、教えてくださりありがとうございます。」
ちょっとアロイス、声が震えてるよ。
マーガレット様もオーレルさんも困った顔になっている。
「私はベルと頻繁に手紙のやり取りをしていたのでメイドからことの真相を打ち明けられたこと。身を隠さなければマリーベルが危ないことを聞き以前から懇意にしていたあの教会に行くよう手はずを整えたのです。
カイルはまさか私がベルの手助けをしているとは思っていませんでした。」
「マーガレット様はお母様と仲良しだったのですね。」
私の言葉にマーガレット様はにっこり笑った。
「ええ、ベルは屋敷からあまり出られなかったし。カイルとより長い時間一緒にいたんですもの。
だからこそ、結婚が決まった時も嬉しい反面寂しくて心配だったわ。
ベルは綺麗な人だった外見も内面も。」
オーレルさんも黙ってうなずいていたけれどゆっくり口を開いた。
「私は、あの息苦しい家を逃げ出すように出てしまった。
弟や妹を見捨てて。
カイルは、努力家で自分より家長にふさわしいと前から思っていたんだ。だが、うまく伝えられずに怒らせてしまい、そのままにしてしまった。ベルは私が家を出る話をしたらこれを渡してくれた。幸運を祈っていると言って。」
オーレルさんが私に渡して見せてくれたのはハンカチだった。もとは真っ白だったのだろうそれは色あせ少しヨレているけど大切に持ち歩かれていた証拠なんだと思う。
隅に美しい飾り文字で名前が刺繍されている。
「私はひどい兄だった。結局、ベルに何もしてやれなかった。
だからこそ今から挽回させてほしい。カイルのことは責任をもって面倒を見て更生させる。そしてマーガレット殿の元へ送り出す」
オーレルさんは私が返したハンカチを胸ポケットにしまい私たちを見回して言った。
マーガレット様はゆっくりと深くお辞儀をし、ディルもそれにならっている。
私はなんだかホッとしてお父様を見上げた。
無表情なお父様も心なしか嬉しそうに見える。
そうして私はマーガレット様にオーレルさんとも手紙のやり取りを約束してお別れになった。
みんな途中まで一緒に帰るのかと思ったら私たちはまだ行くところがあるらしい。
「今度はどこへ行くんですか?」
今日は王都にあるスリジェ家の邸に泊まり、明日出発だそうだけど…
「明日はイシェラ王国の陛下に謁見することになっている。」
お父様の言葉に私はピシッと固まった。
「え?連日王族にお会いするんですか?
しかも隣国ってそんなにすぐに行ける場所じゃ…」
「スリジェ家の敷地に隣国と繋げた道がある。アロイスの魔力があれば数分とかからず行けるだろう。」
振り返ってアロイスを見るとエヘっと肩をすくめている。
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