68 / 247
第一章 リトア王国
お母様出奔の真相とは
しおりを挟む
互いに自己紹介をすませ、改めて顔を合わせる。
ディルはマーガレット様の隣で嬉しそうにしていてなんだか可愛い。
オーレルさんはディルに目を向け、弟の幼い頃に似ている…と呟いた。
「カイルがあんな馬鹿げたことを企んだのは我がランギャー家、そして私が彼を追い詰めてしまったからです。本当に申し訳ありません。」
「カイル・ランギャーの処分は聞いているか?」
「はい。今は精神の治療を施しているようですが、退院後は引き取るつもりです。」
ディルはその言葉を聞いてホッとしたようだ。
「マーガレット殿にも我が領地へ来ていただこうかと思っていたのですが、どうしても首を縦に振ってはいただけず。」
私たちの視線が集まるとマーガレット様は静かにうなずき両手を膝の上に重ねた。
「私は教会へ参ります。」
ええ?教会?
「実家には戻らないのか?」
「父も母も今回の一件に心を痛めておいでです。私の決断にも賛成してくださいました。
それに、私は夫と離縁するつもりはないので教会で働きながら主人が元気になったあかつきには平民として共に生きて行ければと思っています。」
「教会ってもしかして…」
「はい。マリーベル様がいらしたあの教会です。」
ディルはすでに知っていたのか特に動じずに固まっている。
「では、教会の皆んなに会いにいけばマーガレット様ともお会いできますね。
ディルと一緒に行きます。」
色々聞きたいことはもちろんあったが私はあえてそう言った。
お父様たちも黙っている。
「ありがとうございます。是非、そうしてください。」
マーガレット殿が微笑んでうなずいた。笑顔を初めて見たけどやっぱり綺麗な人だ。
「やはりマリーベル様はお母様に似ていらっしゃいますね。」
綺麗な笑顔のままニコニコとそう言われる。
「確かに、顔立ちや色は隊長だが、物腰や雰囲気は妹によく似ている。」
オーレルさんもうなずいている。二人から母の話を聞きたかったが、お父様の反応が気になって詳しく聞き出しづらい。
そう思っていたけれどお父様は特に気にする様子もなく二人の言葉に相槌をうっている。
ジッと見る私を不思議そうに見返してくるので私は意を決して口を開いた。
「お父様はお母様のことを怒っていらっしゃいますか?」
「何故だ?」
「何故って…お母様が勝手に出て行ってしまったから?」
「いや。怒られこそすれ、怒るなどとんでもない。
あの頃、フロン公国との戦にかかりきりになってずっと側にいられなかった。
それにベルが出て行ったのは少しでも長くマリーベルと共にありたかったからだ。」
?どういうこと??
首をかしげる私にマーガレット様が話してくれる。
「お母様、ベルは生まれつき身体が弱かったの。子供を産むことはおろか結婚も難しいと思われていた。私はランギャー家に嫁入りした時にベルともずっと一緒に暮らすんだと思っていたくらい。」
「スリジェ家はベルを迎えるにあたり、彼女が早く邸に馴染めるよう武術に秀でている使用人たちもみな見せないようにしていた。ただでさえ辺境の地に移り住むのだから我が家が他家とあまりに違うことが知れてストレスになってはいけないと思ってな。
まぁ、見せておけばよかったと今なら思う。
ベルが皆を危険な目に合わせてしまうなどと思い急ぎ出て行くようなことにはならなかっただろうから。
教会に逃げ込まずとも保養のための家を作ってそこで過ごせただろうに。
だが、ベルは教会での暮らしを気に入っていたからな。だからこそ、あれほど長く命を繋げたのだろう。」
うん?今聞き捨てならない言葉を聞いたような…
「お父様はお母様の居場所を知っていらしたのですか?」
「もちろん。隊長を退いて戦地から戻りすぐに会いに行った。」
聞いてないんですけど?
ディルはマーガレット様の隣で嬉しそうにしていてなんだか可愛い。
オーレルさんはディルに目を向け、弟の幼い頃に似ている…と呟いた。
「カイルがあんな馬鹿げたことを企んだのは我がランギャー家、そして私が彼を追い詰めてしまったからです。本当に申し訳ありません。」
「カイル・ランギャーの処分は聞いているか?」
「はい。今は精神の治療を施しているようですが、退院後は引き取るつもりです。」
ディルはその言葉を聞いてホッとしたようだ。
「マーガレット殿にも我が領地へ来ていただこうかと思っていたのですが、どうしても首を縦に振ってはいただけず。」
私たちの視線が集まるとマーガレット様は静かにうなずき両手を膝の上に重ねた。
「私は教会へ参ります。」
ええ?教会?
「実家には戻らないのか?」
「父も母も今回の一件に心を痛めておいでです。私の決断にも賛成してくださいました。
それに、私は夫と離縁するつもりはないので教会で働きながら主人が元気になったあかつきには平民として共に生きて行ければと思っています。」
「教会ってもしかして…」
「はい。マリーベル様がいらしたあの教会です。」
ディルはすでに知っていたのか特に動じずに固まっている。
「では、教会の皆んなに会いにいけばマーガレット様ともお会いできますね。
ディルと一緒に行きます。」
色々聞きたいことはもちろんあったが私はあえてそう言った。
お父様たちも黙っている。
「ありがとうございます。是非、そうしてください。」
マーガレット殿が微笑んでうなずいた。笑顔を初めて見たけどやっぱり綺麗な人だ。
「やはりマリーベル様はお母様に似ていらっしゃいますね。」
綺麗な笑顔のままニコニコとそう言われる。
「確かに、顔立ちや色は隊長だが、物腰や雰囲気は妹によく似ている。」
オーレルさんもうなずいている。二人から母の話を聞きたかったが、お父様の反応が気になって詳しく聞き出しづらい。
そう思っていたけれどお父様は特に気にする様子もなく二人の言葉に相槌をうっている。
ジッと見る私を不思議そうに見返してくるので私は意を決して口を開いた。
「お父様はお母様のことを怒っていらっしゃいますか?」
「何故だ?」
「何故って…お母様が勝手に出て行ってしまったから?」
「いや。怒られこそすれ、怒るなどとんでもない。
あの頃、フロン公国との戦にかかりきりになってずっと側にいられなかった。
それにベルが出て行ったのは少しでも長くマリーベルと共にありたかったからだ。」
?どういうこと??
首をかしげる私にマーガレット様が話してくれる。
「お母様、ベルは生まれつき身体が弱かったの。子供を産むことはおろか結婚も難しいと思われていた。私はランギャー家に嫁入りした時にベルともずっと一緒に暮らすんだと思っていたくらい。」
「スリジェ家はベルを迎えるにあたり、彼女が早く邸に馴染めるよう武術に秀でている使用人たちもみな見せないようにしていた。ただでさえ辺境の地に移り住むのだから我が家が他家とあまりに違うことが知れてストレスになってはいけないと思ってな。
まぁ、見せておけばよかったと今なら思う。
ベルが皆を危険な目に合わせてしまうなどと思い急ぎ出て行くようなことにはならなかっただろうから。
教会に逃げ込まずとも保養のための家を作ってそこで過ごせただろうに。
だが、ベルは教会での暮らしを気に入っていたからな。だからこそ、あれほど長く命を繋げたのだろう。」
うん?今聞き捨てならない言葉を聞いたような…
「お父様はお母様の居場所を知っていらしたのですか?」
「もちろん。隊長を退いて戦地から戻りすぐに会いに行った。」
聞いてないんですけど?
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】ヒロインであれば何をしても許される……わけがないでしょう
凛 伊緒
恋愛
シルディンス王国・王太子の婚約者である侯爵令嬢のセスアは、伯爵令嬢であるルーシアにとある名で呼ばれていた。
『悪役令嬢』……と。
セスアの婚約者である王太子に擦り寄り、次々と無礼を働くルーシア。
セスアはついに我慢出来なくなり、反撃に出る。
しかし予想外の事態が…?
ざまぁ&ハッピーエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる