悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

第一章 リトア王国

ゲームの中では大変なことになってます

のんちゃんは気が乗らなそうに口を開いた。

「ディルの話をするには言っとかなきゃいけないことがあるんだけど…

ゲームではマリーベルは伯父さん一家以外の全ての身内を無くしてるんだ。」

「え？どういうこと？」

「つまり、ゲームでは今日起きた襲撃が成功してスリジェ家はマリーを残して全員暗殺される。使用人の過半数もね。

そして、ランギャー伯爵が後見人として屋敷に来る。妻と息子のディルを連れて。」

「あ、暗殺？全員？みんなあんなに強いのに？」

私はあったかもしれない未来を想像して震えてしまった。

「ゲームではスリジェ辺境伯家を襲った連中ももっと多かったし、まずスリジェ家の井戸に毒薬が投げ込まれたからみんな弱っていたんだ。」

「毒薬？それってどうなったの？」

「すり替えて証拠として親父さんに渡しといたよ。スリジェ家襲撃に賛同した連中も何人か事前に捕まえといた。うちの親父が丁度いいから野放しにしといてって言った奴ら以外だけど。」

公爵様ものんちゃんもこういうことに慣れてるんだろうか？いとも簡単に話すのんちゃんがちょっぴり怖い。

「ゲームで辺境伯家にやってきたディルはマリーベルの家族を殺したのが自分の父親たちだと知って罪悪感からマリーを避けて暮らしているんだけどその時から優しく仲良くなろうとしてくれるマリーが好きっぽいんだよね～魔法学園に入っても魔力が高くならずに落ち込んでるディルを元気付けたりすると好感度が上がっていくけど彼はマリーに対して引け目を感じてるからそこの駆け引きで攻略が難しいんだよね。
ハッピーエンドだと父親の罪を乗り越えて二人は結婚してスリジェ辺境伯と辺境伯夫人になる。
バッドエンドだとディルはマリーの前から姿を消してしまう。」

「のんちゃん…リノアはどうなるの？」

「リノアは毒で死ぬんだよ。
自分の罪を暴こうとするマリーを殺そうとランギャー伯爵が贈ったプレゼントを嫌がらせで取り上げてね。」

のんちゃんの目が遠くなっている。怖いとか思ってごめんね。自分にそんな悪い未来ばかり並べたてられたらそりゃ達観しちゃうよね。

「で、でもランギャー伯爵は捕まったからその流れはないよね。ひとまず安心だね。」

私をチラッと見てのんちゃんは悲しげに笑った。

「まぁね～まだまだまだまだ油断できないけどさ。毒殺は一番いやだったからな～
必死に動き回ったよ。ディルとも顔を合わせて話せたしね。いい奴だよ。」

「そうなんだ。会えるのが楽しみだな～
お父さんがこんなことになってショックだろうけど…」

テーブルに視線を下げた私の耳にノックの音が聞こえた。