38 / 247
第一章 リトア王国
ランギャー伯爵家から中継です 2
しおりを挟む
カイル伯爵は話しながら熱が入ったのか立ち上がり机の前を行き来し始めた。
「父が亡くなり、後を追うように実家に戻った母も死んだ。あんなに仲が悪かった二人がおかしなものだ。
役立たずな妹は遠縁にあたるスリジェ辺境伯家へと嫁いだ。
厄介者が片付いたと思っていたのに、あろうことか彼女がはらんだ赤子に強い魔力があることが報告された。
しかもそれはとても希少な力であることも。
あり得ない。あのいつも笑っていることしかできない出来損ないが我が子よりも力のある子を産む?そしてその子はランギャー家ではなくスリジェ家の子になる?
あり得ない。あってはいけない。リトア王国一魔力を持つ家はランギャーでなければ。
私は報告してきたものに妹の子を殺すように毒を渡した。
だが、毒はなぜか当主の口に入り妹は赤ん坊を連れて消えてしまった。
辺境伯は私を疑う様子もなく、あのメイドも辺境伯当主に毒をもったなど自身の不利益にしかならないようなことは触れ回らないだろう。
そう思い、妹の行方を探しながら私はひたすら息子に魔力を鍛えさせた。
だが、ディルは魔法より机で学ぶ勉学の方が面白いなどと言い私を失望させてばかりいる。
更に先の戦、イシェラ王国と真逆に隣接するフロン公国との戦いで騎士団長にまで登り詰めた兄が戦果をあげ、戦を収束へと導いた功績からフロン公国との国境を守る辺境伯の位を得たのだ。
妹は出奔したとはいえ離縁はされていない。
ランギャー家といえば東西の辺境伯と縁を持つ家。
我が家はそんな目で見られるようになった。
違う。違う。違う。ランギャー伯爵家はリトア王国一の魔力を持つ家でなければいけないのだ。
誰もがランギャー家と聞けばすぐに自分たちは持ち得ない力を持つ家だと畏怖するような。
ディルではだめだ。しゃくに触るが妹の、ランギャーの血を引く強い魔力を持つあの子供でなければ。
辺境伯家の者を皆殺しにし、子供を我が家に引き取ればいい。
幸い子供は女だ。ディルと結婚させればランギャー家の本来の姿が戻る。
私はランギャー家の名誉を守る為にスリジェ辺境伯家を潰さなければいけないわけだ。」
狂気に満ちた笑みを最後にアロイス様が手を振り見えていた映像が消えた。
カイル・ランギャー伯爵の企みを手っ取り早く説明するとアロイス様が始めた魔法はまるでテレビの録画を見ていたように鮮明で、一緒に映像を見ていた皆が緊張を解いたように動き始める。
「すごいね、アロイス様。これどうやって盗撮したの?」
こっそりアロイス様に近づいて聞いてみると呆れた顔をされた。
「盗撮とか言わない。しかもこれ、リアルタイムな映像だから。」
「わぁ。まさかの生中継?」
コソコソ話す私たちにお父様が近づいてきた。
「この様子はどうやって?」
アロイス様は慌てて顔を引き締める。
「ディル様にあらかじめ渡しておいた私の魔法を込めた道具でこちらに映像を飛ばしてもらいました。」
「ディル殿に?他人と魔力を合わせるのがどれほど困難なことか分かっているのか?しかも、そなたは遠く離れたここにいてその魔法を込めた道具とやらが扱えると?」
「大丈夫です。赤ん坊でも使えるくらい簡単操作にしてあるので。」
にっこり笑ったアロイス様から視線を外したお父様は公爵様を振り返る。
「だから言ってるじゃん。アロイスは規格外なんだよ~」
公爵様も困ったように眉尻をさげた。
「父が亡くなり、後を追うように実家に戻った母も死んだ。あんなに仲が悪かった二人がおかしなものだ。
役立たずな妹は遠縁にあたるスリジェ辺境伯家へと嫁いだ。
厄介者が片付いたと思っていたのに、あろうことか彼女がはらんだ赤子に強い魔力があることが報告された。
しかもそれはとても希少な力であることも。
あり得ない。あのいつも笑っていることしかできない出来損ないが我が子よりも力のある子を産む?そしてその子はランギャー家ではなくスリジェ家の子になる?
あり得ない。あってはいけない。リトア王国一魔力を持つ家はランギャーでなければ。
私は報告してきたものに妹の子を殺すように毒を渡した。
だが、毒はなぜか当主の口に入り妹は赤ん坊を連れて消えてしまった。
辺境伯は私を疑う様子もなく、あのメイドも辺境伯当主に毒をもったなど自身の不利益にしかならないようなことは触れ回らないだろう。
そう思い、妹の行方を探しながら私はひたすら息子に魔力を鍛えさせた。
だが、ディルは魔法より机で学ぶ勉学の方が面白いなどと言い私を失望させてばかりいる。
更に先の戦、イシェラ王国と真逆に隣接するフロン公国との戦いで騎士団長にまで登り詰めた兄が戦果をあげ、戦を収束へと導いた功績からフロン公国との国境を守る辺境伯の位を得たのだ。
妹は出奔したとはいえ離縁はされていない。
ランギャー家といえば東西の辺境伯と縁を持つ家。
我が家はそんな目で見られるようになった。
違う。違う。違う。ランギャー伯爵家はリトア王国一の魔力を持つ家でなければいけないのだ。
誰もがランギャー家と聞けばすぐに自分たちは持ち得ない力を持つ家だと畏怖するような。
ディルではだめだ。しゃくに触るが妹の、ランギャーの血を引く強い魔力を持つあの子供でなければ。
辺境伯家の者を皆殺しにし、子供を我が家に引き取ればいい。
幸い子供は女だ。ディルと結婚させればランギャー家の本来の姿が戻る。
私はランギャー家の名誉を守る為にスリジェ辺境伯家を潰さなければいけないわけだ。」
狂気に満ちた笑みを最後にアロイス様が手を振り見えていた映像が消えた。
カイル・ランギャー伯爵の企みを手っ取り早く説明するとアロイス様が始めた魔法はまるでテレビの録画を見ていたように鮮明で、一緒に映像を見ていた皆が緊張を解いたように動き始める。
「すごいね、アロイス様。これどうやって盗撮したの?」
こっそりアロイス様に近づいて聞いてみると呆れた顔をされた。
「盗撮とか言わない。しかもこれ、リアルタイムな映像だから。」
「わぁ。まさかの生中継?」
コソコソ話す私たちにお父様が近づいてきた。
「この様子はどうやって?」
アロイス様は慌てて顔を引き締める。
「ディル様にあらかじめ渡しておいた私の魔法を込めた道具でこちらに映像を飛ばしてもらいました。」
「ディル殿に?他人と魔力を合わせるのがどれほど困難なことか分かっているのか?しかも、そなたは遠く離れたここにいてその魔法を込めた道具とやらが扱えると?」
「大丈夫です。赤ん坊でも使えるくらい簡単操作にしてあるので。」
にっこり笑ったアロイス様から視線を外したお父様は公爵様を振り返る。
「だから言ってるじゃん。アロイスは規格外なんだよ~」
公爵様も困ったように眉尻をさげた。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います
真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
他には何もいらない
ウリ坊
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した。
悪役令嬢のナタリア。
攻略対象のロイスに、昔から淡い恋心を抱いている。
ある日前世の記憶が戻り、自分が転生して悪役令嬢だと知り、ショックを受ける。
だが、記憶が戻っても、ロイスに対する恋心を捨てきれなかった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。
ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい!
…確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!?
*小説家になろう様でも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢はどうしてこうなったと唸る
黒木メイ
恋愛
私の婚約者は乙女ゲームの攻略対象でした。 ヒロインはどうやら、逆ハー狙いのよう。 でも、キースの初めての初恋と友情を邪魔する気もない。 キースが幸せになるならと思ってさっさと婚約破棄して退場したのに……どうしてこうなったのかしら。
※同様の内容をカクヨムやなろうでも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる