悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

第一章 リトア王国

とりあえずご挨拶

とりあえずお客様をいつまでも玄関に留めておくわけにはいかないとお祖母様が率先して動き始め、まだグスグス言いつつも私とのんちゃんも離れたが、手はしっかりと握ったままだ。

大人たちは困惑しつつも何も言わずに私たちを談話室へと誘導してくれる。

お祖母様は玄関で起きた色々を微塵も感じさせない優雅なしぐさと笑顔で公爵様たちを座らせ紅茶や軽食をすすめはじめる。

のんちゃんと私も並んでソファーに腰かけた。のんちゃんはようやく手を離したが、まじまじと私を見つめている。
そんな私たちの元にお祖母様が近づいてきた。

「エシャルロット公爵家のアロイス様。でよろしかったでしょうか？」

私たちの距離の近さに少し不服そうなお祖母様にまずいと思ったのか、のんちゃん。いやアロイス様がさっと立ち上がり美しいお辞儀をして見せた。

「先ほどは取り乱してしまい申し訳ありません。エシャルロット家が次男。アロイス・エシャルロットと申します。」

お祖母様は彼の所作を見て少し表情を緩めた。

「遠い所をようこそおいでくださいました。私は前スリジェ辺境伯の妻セリーナ・スリジェ。そしてこちらは…」

のんちゃんと共に立ち上がっていた私はお祖母様の隣に並び直して改めてカーテシーを行う。

「アラン・スリジェが長女マリーベルでございます。
どうぞお見知り置きを。」

頭を上げるとのんちゃんは驚いた顔をしている。
ふふん、お祖母様のスパルタ教育の成果に驚いているな。
少し得意げになった私に今度は呆れた顔をするのんちゃん。
なんでだ？！