悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

ゆりまき

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第一章 リトア王国

私の家族に威厳がありすぎる件

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アイリーンが扉をノックし、私を連れて来たことを告げると入るように、低いバリトンボイスが聞こえてくる。

緊張する私の背中に一瞬アイリーンが手をかけてくれた。
その暖かさから勇気をもらい私は部屋に足を踏み入れると両手でスカートを軽く持ち深くお辞儀をした。

「お呼びでしょうか、お父様、お祖母様。」

頭を下げたままきちんと聞き取れるようにはっきりと話す。

「頭を上げなさい。家族の前でそう堅苦しくなるな。」

父の言葉に顔をあげると無表情な父と苦々しそうな顔をした祖母が揃ってこちらを見ている。
60点と祖母の顔にはハッキリと書かれていた。

「マリーベル。隣国のエシャルロット公爵とそのご子息が我が家に滞在されることになった。
非公式の訪問ゆえ、そなたにとっても良い機会だ。母上とともにもてなしの準備をし、交流を持って欲しいのだが、出来るか?」

スキンヘッドに口髭を生やし、眉間には深いシワが刻まれた無表情な父に出来るかと問われ、出来ないなどと泣き言が言える人間がどれくらいいるのだろう、16年生きてきたゆきと幼女のマリーを合わせてもその威圧に反発できる度胸など一欠片もない。

「精一杯、務めさせていただきます。」

私は再び深くお辞儀をした。

「では、さっそく準備に取り掛かります。
マリー」

お祖母様に呼ばれて私は忠犬のように行儀よく程よい距離を保ちながら祖母に続いて退出する。

「マリー、入室時のカーテシーは硬すぎます。それに頭を上げる時に左へ少し傾いでいたわね。気をつけなさい。言葉をハッキリ喋るのは結構。でも優雅さがなければまるで兵士のよう。カーテシーの所作についても同じこと。柔らかく美しく優雅に動くこと。」

「はい。お祖母様。」

こちらに背中を向けたまま次々に注意が飛んでくる。

マリーの記憶にあるお祖母様はいつも厳し…

「背中を丸めるんじゃありません。
貴婦人は常に美しい姿勢で胸を張って堂々となさい。」

「はい、お祖母様。」

厳しく、背中にも目がついているらしい。
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