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第二章
清掃師、叱咤する
しおりを挟む「ど、どうしよう、無理だよ。オーガを相手にするなんて……」
「怖いよぉ……」
「み、みなさん……死ぬときは、どうか一緒にいぃ……」
「お……おおおっ、お、終わりだあぁぁぁっ……!」
「……」
それまでの明るい空気があっという間に黒い絶望によって塗り替えられていく。オーガやエルフに普通のスキルが通用しないことは有名な話で、それに挟撃されてるのだから当然といえば当然か。
俺としてもみんなを守りながら、かつ力を抑えた状態でやり合わなきゃいけないわけで、正直焦りもあったがよくよく考えてみると、むしろ挟み撃ちというどうしようもない状況が有利に働くような気がした。ここで一方から来るとかのほうが、慌てて逃げようとしてさらなる泥沼を生みだす可能性があったからだ。
ただ、このままの状態でもいずれオーガが現れるわけで、大混乱に発展する可能性はある。
「みんな、最後まであきらめるな」
「「「「……」」」」
俺の言葉はきっと気休めにしか聞こえないだろうが、次の台詞の伏線にはなるはずだ。
「俺たちは、あの『アバランシェ・ブレード』の自然現象も乗り越えたじゃないか……」
「「「「あっ……!」」」」
みんなの顔に、生気という名の希望が浮かんだのがわかる。これを待っていたんだ。
「たっ……確かに、あたしたちには幸運の女神がついてるようなものじゃない……?」
「……うん。もしかしたら、大丈夫……かも……?」
「ア、アルファさん、でも、どうすればよいのですぅ……?」
「ア、アアアアッ、アルファ君、どうしたら、どうしたらいいのだっ……!?」
溺れる寸前のような眼差しが俺に掴みかかってくるのがわかる。
「挟撃されてるなら、それを逆に利用してやればいい」
「「「「えっ……?」」」」
「オーガは残虐だが、臆病という性質もある。だから怯えてたら向こうの思うつぼだし、こっちから行くんだ」
「「「「ええぇっ……!?」」」」
みんな俺の提案に対し、酷く驚いた顔を見合わせている。
「とにかく、どっちにしろオーガはやってくるんだし、こっちから逆に行ってやれば相手も怯む可能性が出てくるし、何か起きるかもしれない」
「で、でも、アルファ。オーガにスキルは通じないんだし、結局やられちゃうよ……」
「サーシャ、それはこっちのスキルを相手に使用したら、の話だろ?【見切り】はあくまでも受け身のスキルだから別じゃないか……?」
「あ……」
サーシャがはっとした顔になってる。一方でミュートは何か違和感を覚えたのか難しそうな表情をしてるが、何も言ってこないし上手くごまかせたようだ。ってなわけで俺の考えた作戦を聞かせると、みんな一様に納得した様子でうなずいてくれた。
『――お、おおおっ、人間だ……。こっちからいい匂いがすると思ったら、やっぱり人間だったあぁ……』
まもなく、前方から涎を垂らしたオーガが現れる。ここからが腕の見せ所だ。
「なんだ、オーガか。大したことないな、雑魚だ」
「「「「ププッ……」」」」
よしよし、みんな怯んだ様子は隠しきれなかったものの、ちゃんと俺の言う通り笑ってくれた。
『なっ……なんだと……?』
オーガは一瞬怯んだような顔をしたあと、見る見る表情を険しくしていった。
『ハッタリだ……ハッタリに決まってるううぅぅっ――』
「――サーシャ、今だ!」
「うんっ!」
飛び掛かってくるところで、俺たちは背中を壁につけてサーシャに【見切り】を発動させる。
『おおっ……?』
その結果オーガは勢いよく後方に流され、そのままもう一匹のオーガの悲鳴とともに消えていった。よし、成功だ。
「「「「「やったああぁぁっ!」」」」」
みんな飛び上がる勢いで喜んでる。実をいうと、オーガが手刀で攻撃してくるという行動を読むことで俺が神気を【一掃】したので【見切り】が効いたというわけだった。
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