底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

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第二章

清掃師、頭を下げる

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『ギョリリリイィィッ……!』

 これで何匹目の巨大蟻の悲鳴を耳にしただろうか。

 あれから、最早数える気も起きないくらい蟻のモンスターを倒してきたわけだが、一匹目以降レアも蜜も出ず、不快な断末魔の叫び声と疲労感だけが蓄積されていくのだった。

 しかも洞窟内の通路は一方通行で、同じ道を延々と登ってるようにしか感じなかった。正解を選んだ俺自身でさえ、ループトラップに嵌ったんじゃないかと錯覚してしまうほどなんだ。

 しかし、これが正解の道であることは確かなはずだし、神スキル【一掃】の効果を信じてひたすら登るしかないだろう。

「――や、やっぱり間違いだったのではないだろうか……」

 閉塞感に包まれる中、ロディが重そうに口を開いた。まあそう考えてもなんらおかしくはない。

「リーダー、もうちょっと行ってみないとわからないよ……」
「わたしもそう思うの。少し疲れちゃったけど……」
「んー……今のところ、似たような道をループしてる感じはないですがねぇ。見落としてるかもですけど……」
「むう……」

 ロディはやや不満げだが、サーシャたちはまだこの道を信じてくれてるのか止まる気配はない。

「わ、私だってだな、アルファ君の眼力を信じたいが……誰だって間違えることもあると私は思うのだ!」
「……」

 確かにリーダーの言うことは一理あるが、この道が正解だとわかってる以上うなずくわけにはいかなかった。

 彼はしばらくブツブツ言いながらも歩いてたが、やがて露骨に足の進みが遅くなってきた。これは疲れもあるだろうが、不満によるもののほうが大きいんだろう。【一掃】でそれを払おうかとも考えたが、これはあくまで一時的なものだからなあ……。

 そんなわけで、なんとかもうちょっと我慢してほしいと思いながら歩いていたが、やがてとうとう恐れていたことが起きてしまった。一番後ろにいたロディだけ歩くのをやめてしまったのだ。

「――いっ……一体……いつまで歩くつもりなのだっ……!? どう考えてもこの道は不正解じゃないかっ!」
「リーダー! アルファを少しは信じてやれないの!?」
「そうだよ、ロディお兄ちゃん。わたしだってきついけど、もう少し頑張ってみようよ……」
「私も同意見ですう。長く続く道だからといってループトラップとは限らないとぉ、登山者バイブルにも載って――」
「――リーダーはあくまでこの私だぞっ!?」
「……」

 ロディは涙目だった。なんか自分のせいで空気が悪くなっちゃってるみたいで気まずいな……。

「それにだっ、私はアルファ君のためを思って言ってる! もしこのままずっとループすることになって不正解だとわかったら、最終的に傷つくのは彼だっ!」
「「「「……」」」」

 ロディの言葉が影響したらしく、みんなの足取りが明らかに鈍くなってる。まずいな。ここは俺がなんとか説得しなくては。

「リーダー、俺のために言ってくれてありがとう。でも、もしこっちが正解だったとしたら後悔してもしきれないし、俺自身がループトラップだって確信できるくらいまで登らせてほしい。みんなも、きついだろうけどこの通りだ」

 俺はロディたちに向かって深々と頭を下げた。

「うっ……そ、そんなに言うなら……まあ、し、仕方ないっ……。き、君が満足するまで……登ればいいっ……!」

 ロディは口をひん曲げつつも同意してくれた。内心、かなり苛立ってるだろうに。やっぱりいい人だ。

「ほら、リーダー、そうと決まったら早くこっちへ来てよ。いつまでも一人でそんなに後ろにいたら、オーガにさらわれちゃうよ?」
「サ、サーシャッ! そんな怖いことを言うなっ! 今行く――」

 ――はっ……。俺はロディがバランスを崩し、倒れそうになったのがわかったので、そのアンバランスさを【一掃】し、彼はなんとか転ばずに済んだ。こんなところで滑落したら洒落にならないからな……って、今なんか笑い声が聞こえてきたような……。

「あ、危ないところだった……!」

 ロディが追い付いてきて、開口一番そのことに触れる。あくまで自然にアンバランスさを払ったつもりだし、自力でなんとか転ばずに済んだと思ってるはず。それより、さっきの笑い声のほうが気になるな。

「もー、慌てるからでしょ」
「そうだよ」
「気を付けてくださいねえ」
「し、しかしだなっ、笑うことはないだろうとっ……!」
「……え? あたし笑ってないけど……」
「わたしも」
「私もですぅ」
「俺も」
「で、では誰が――」
「「「「――あっ……」」」」

 そのときだった。どこからともなくがしたのだ。まさか……っと、その前に笑ったのが彼女たちかどうか確認してみよう。

「――マリベルたち、笑ってない?」
「わしらは笑ってないのじゃっ」
「うむ、おそらくオーガだろう」
「なっ……?」

 カミュの言葉で背中に冷たい汗が流れる。

「わたくしもそう思いますわ」
「でもでも、オーガしゃんはまだこっちには気づいてないみたいでしゅう」
「……」

 まさか、今のところ一方通行だし前方からオーガがこっちへ迫ろうとしているのか? みんなを守りながらだとさらに厳しいことになりそうだが、果たしてどうなるか……。
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