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第二章
清掃師、名前を決める
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「オッホン……では、これから私が重要な会議を始めるから、心して聞くようにっ……!」
テラスでの夕食後、リーダーのロディが緊張した表情で語り始めた。なんだろう? 次に登頂を目指す迷宮山を決める、とかだろうか? みんなもそれを察してるのか息を呑んでリーダーのほうに注目している様子だった。
「それはだな……パーティー名についてだっ!」
「「「「……」」」」
なんだ、パーティー名か。俺もそうだが、メンバーも一様に拍子抜けした顔になったのがわかる。
そういや、一つでも迷宮山を登頂したことをギルドで証明すると、ただの無名パーティーから名前ありの正式なパーティーに進化できるんだったな。なんせずっとそういうのに縁がないと思ってたからすっかり忘れてた。
「リーダー、そんなの明日ギルドで考えたらいいじゃない」
「そうだよ、ロディお兄ちゃん。てっきり次に登る山を決めるとか思ってたのに」
「ふわあ、なんだか急に眠くなってきましたぁ……」
サーシャ、シェリー、ミュートが気怠そうに返すと、ロディの顔が見る見る赤くなっていった。
「きっ……君たちっ! パーティー名というのはな、かなり重要なものなのだっ! これから成り上がっていく上で、聞いただけで私たちだとわかるような、それでいて士気が高揚し、尊敬を集めるものになっていくのだからっ……!」
拳を振り上げて熱弁をふるうロディだったが、みんな苦笑してて温度差が激しい。
「では、どんなパーティーにするか、希望があれば名乗り出たまえっ!」
「「「「……」」」」
俺も含めてみんな黙っている。ロディの言ってることは一理あると思うが、いきなり言われてもな。
「ないなら、まずこの私が候補を挙げる! 一つ目、《ビクトリーズ》! ありがちだが勝利あるのみというコンセプトだっ! 二つ目、《ヒーリングデストロイヤーズ》! 回復すると見せかけて破壊的でインパクト抜群だっ! 三つ目、《ウルトラレジェンドクライマーズ》! とにかく凄そう、それに尽きる! ど、どうだっ!?」
「……うーん、却下で」
「ダメダメッ」
「いまいちですぅ」
「きっ……君たちにはこのセンスがわからないというのかあぁっ!」
サーシャたちが即座にダメ出しする中、ロディが真っ赤に充血した目を俺に近付けてきた。
「ア、アルファ君はどう思ったのだ!?」
「……んー、俺も悪いけど、どれも微妙だと思ったかな」
「ガーン……!」
両手で頭を抱えるロディ。この中じゃ《ビクトリーズ》が一番マシに見えるが、もう絶対あると思うし被るから申請が下りないと思う。
「リーダー、真面目に考えてるの?」
「サーシャ、私は至って真面目だっ!」
「ロディお兄ちゃんのセンスゼロッ」
「うるさーい!」
「正直、《ヒーリングデストロイヤーズ》は好きですけどねえ」
「おおっ!? ミュートよ、気に入ってくれるか!?」
「でも、目立ちすぎますぅ」
「う、確かによく考えてみればそうだな……」
リーダー、よく考えずに言ったのか……お、胸ポケットがざわめいてるし、マリベルたちの意見にも耳を傾けてみるか。
「アルファよ、わしは二番目のギャグが気に入ったがのー」
「我は三番目のギャグが良かった……」
「どれも中々のギャグでしたわっ」
「ユリムは一番目のギャグが面白かったでしゅう」
「……」
どのギャグが面白いか競ってるわけじゃないんだよなあ。それにしてもリーダーって、ドワーフの彼女たちにも影響を与えてるっぽいしもしかしたら色んな意味で持ってる人なのかもな。ボスのゴーレムも投石で倒してたし……。
あ……そうだ、彼女たちを見てピンときた。
「パーティー名だけど、《リファインズ》でどうかな? 色んなものに磨きをかけていくって意味で……」
「お……いいねえ、さすがアルファ君! 可憐なアルフェリナさんの兄なだけあるっ!」
「アルファ、いいね、それ!」
「アルファお兄ちゃん、センスあるねー」
「アルファさん、素敵な響きですねぇ」
どうやら決まったらしい。これも、俺をここまで磨いてくれた最高の鍛冶師でもあるマリベルたちのおかげなんだけどな。
「アルファよ、お見事じゃ。なんかお主の名前っぽい響きじゃのお」
「そういえば、確かに……」
アルファとリファインズか。確かに似ている。これも偶然ってやつか。
「いい名だ、アルファどの」
「あぁ、ありがとう、カミュ」
「素晴らしいですわ、アルファ様……」
「ど、どうも、ルカ」
「センス抜群れふ、アルファしゃんっ」
「そ、そりゃよかった、ユリム」
みんなの目がハートマークになっててなんだか怖くなってきた。
「ところでアルファよ、誰を嫁に――」
「――あ、そうだ、そろそろ寝ないとっ……」
俺は無理矢理彼女たちとの会話を断ち切った。飯も食ったし、パーティー名も決まったしであとは明日に備えてゆっくり休むだけだな。胸ポケットがかなりざわついてるけど、もう夜だししばらくしたら落ち着くだろう……。
テラスでの夕食後、リーダーのロディが緊張した表情で語り始めた。なんだろう? 次に登頂を目指す迷宮山を決める、とかだろうか? みんなもそれを察してるのか息を呑んでリーダーのほうに注目している様子だった。
「それはだな……パーティー名についてだっ!」
「「「「……」」」」
なんだ、パーティー名か。俺もそうだが、メンバーも一様に拍子抜けした顔になったのがわかる。
そういや、一つでも迷宮山を登頂したことをギルドで証明すると、ただの無名パーティーから名前ありの正式なパーティーに進化できるんだったな。なんせずっとそういうのに縁がないと思ってたからすっかり忘れてた。
「リーダー、そんなの明日ギルドで考えたらいいじゃない」
「そうだよ、ロディお兄ちゃん。てっきり次に登る山を決めるとか思ってたのに」
「ふわあ、なんだか急に眠くなってきましたぁ……」
サーシャ、シェリー、ミュートが気怠そうに返すと、ロディの顔が見る見る赤くなっていった。
「きっ……君たちっ! パーティー名というのはな、かなり重要なものなのだっ! これから成り上がっていく上で、聞いただけで私たちだとわかるような、それでいて士気が高揚し、尊敬を集めるものになっていくのだからっ……!」
拳を振り上げて熱弁をふるうロディだったが、みんな苦笑してて温度差が激しい。
「では、どんなパーティーにするか、希望があれば名乗り出たまえっ!」
「「「「……」」」」
俺も含めてみんな黙っている。ロディの言ってることは一理あると思うが、いきなり言われてもな。
「ないなら、まずこの私が候補を挙げる! 一つ目、《ビクトリーズ》! ありがちだが勝利あるのみというコンセプトだっ! 二つ目、《ヒーリングデストロイヤーズ》! 回復すると見せかけて破壊的でインパクト抜群だっ! 三つ目、《ウルトラレジェンドクライマーズ》! とにかく凄そう、それに尽きる! ど、どうだっ!?」
「……うーん、却下で」
「ダメダメッ」
「いまいちですぅ」
「きっ……君たちにはこのセンスがわからないというのかあぁっ!」
サーシャたちが即座にダメ出しする中、ロディが真っ赤に充血した目を俺に近付けてきた。
「ア、アルファ君はどう思ったのだ!?」
「……んー、俺も悪いけど、どれも微妙だと思ったかな」
「ガーン……!」
両手で頭を抱えるロディ。この中じゃ《ビクトリーズ》が一番マシに見えるが、もう絶対あると思うし被るから申請が下りないと思う。
「リーダー、真面目に考えてるの?」
「サーシャ、私は至って真面目だっ!」
「ロディお兄ちゃんのセンスゼロッ」
「うるさーい!」
「正直、《ヒーリングデストロイヤーズ》は好きですけどねえ」
「おおっ!? ミュートよ、気に入ってくれるか!?」
「でも、目立ちすぎますぅ」
「う、確かによく考えてみればそうだな……」
リーダー、よく考えずに言ったのか……お、胸ポケットがざわめいてるし、マリベルたちの意見にも耳を傾けてみるか。
「アルファよ、わしは二番目のギャグが気に入ったがのー」
「我は三番目のギャグが良かった……」
「どれも中々のギャグでしたわっ」
「ユリムは一番目のギャグが面白かったでしゅう」
「……」
どのギャグが面白いか競ってるわけじゃないんだよなあ。それにしてもリーダーって、ドワーフの彼女たちにも影響を与えてるっぽいしもしかしたら色んな意味で持ってる人なのかもな。ボスのゴーレムも投石で倒してたし……。
あ……そうだ、彼女たちを見てピンときた。
「パーティー名だけど、《リファインズ》でどうかな? 色んなものに磨きをかけていくって意味で……」
「お……いいねえ、さすがアルファ君! 可憐なアルフェリナさんの兄なだけあるっ!」
「アルファ、いいね、それ!」
「アルファお兄ちゃん、センスあるねー」
「アルファさん、素敵な響きですねぇ」
どうやら決まったらしい。これも、俺をここまで磨いてくれた最高の鍛冶師でもあるマリベルたちのおかげなんだけどな。
「アルファよ、お見事じゃ。なんかお主の名前っぽい響きじゃのお」
「そういえば、確かに……」
アルファとリファインズか。確かに似ている。これも偶然ってやつか。
「いい名だ、アルファどの」
「あぁ、ありがとう、カミュ」
「素晴らしいですわ、アルファ様……」
「ど、どうも、ルカ」
「センス抜群れふ、アルファしゃんっ」
「そ、そりゃよかった、ユリム」
みんなの目がハートマークになっててなんだか怖くなってきた。
「ところでアルファよ、誰を嫁に――」
「――あ、そうだ、そろそろ寝ないとっ……」
俺は無理矢理彼女たちとの会話を断ち切った。飯も食ったし、パーティー名も決まったしであとは明日に備えてゆっくり休むだけだな。胸ポケットがかなりざわついてるけど、もう夜だししばらくしたら落ち着くだろう……。
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