底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

文字の大きさ
上 下
19 / 61
第一章

清掃師、罠に気付く

しおりを挟む
「助けてー!」
「……っ!?」

 あのパーティーが何を探してるのか探るべく、ちょうど雑音を【一掃】したときだ。誰かの助けを求める叫び声が耳を突いた。この声……多少声色を変えてある感じだが、どこかで聞いたことがあるような……。

「ん、誰かの声が聞こえるのう?」
「ですわねえ」
「妙に悲壮感のない叫びだ」
「大声を上げる練習でしゅか?」

 確か……そうだ、【回復師】のレイラのやつだ。あいつが助けを求めてるだと? ジェイクたちが仲間にいるのに変だな。それにカミュの意見のように俺も切羽詰まってる感じの声には聞こえなかった。

「……」

 例の特異な自然現象が迫る中、俺は焦る気持ちや興奮を【一掃】し、冷静に考えてみた。

「アルファよ、そんなに難しい顔をしてどうしたのじゃ?」
「アルファ様、どうしたんですの?」
「アルファどの、どうしたのだ?」
「アルファしゃん、どうしたのれふう?」
「わかった……」
「「「「えっ?」」」」

 その答えはすぐに出た。大体、俺たちのほうが先に第二セーブポイントに向かったのにレイラが先に着いてるというのはどう考えても不自然だったので、そこから糸口を掴むことができた。

「叫び声の持ち主は狼を擦ろうとしてきた連中の一人レイラで、その狙いがわかったんだ。あのパーティーを留まらせて、それを助けようとする俺を自然現象に巻き込ませるために、ああして助けを呼んでると見せかけて時間稼ぎをしてるってわけだ……」
「なっ……なんと愚かなことじゃっ!」
「下劣すぎる……」
「さすがは下等生物ですわね」
「酷いれふうー」

 マリベルたちが怒る間にも、どんどん霧が蔓延して視界が悪くなってきている。時間がない。

「なあ、みんな。ちょっとの間隠れててくれないか?」
「「「「えっ?」」」」
「集団で行くと警戒されて逃げられるかもしれない。助けを呼んでるやつに危害を加えてる連中だと勘違いされる恐れもある。おそらくそれも罠の一つだ」
「なるほどのう。し、しかしアルファよ、お主一人で行っても警戒されることに変わりはないと思うぞ? その場凌ぎで警戒心を【一掃】するやり方もあるが、あれはあくまで一時的じゃからお薦めはできん。効果範囲から離れたときに逆にお主に対する疑念や違和感を高めて面倒なことになるのじゃ」
「いや、大丈夫だ。【一掃】とか関係なしに
「「「「ええっ……?」」」」

 マリベルを筆頭にみんな驚いてる様子。相手の罠を逆に利用してやるつもりだ。

「――っと、こういうわけだ」

 俺が作戦内容を手短に話すと、みんなの顔に安堵の色が広がり始める。

「それならいけるじゃろうな!」
「さすがは我のアルファどの」
「わしのじゃっ!」
「あらあら、アルファ様はわたくしのものですのよ?」
「ユリムのれふー!」
「「「「ムムッ……」」」」
「あは、は……」

 特殊な自然現象が迫るこんなヤバい状況で俺の取り合いみたいなことするんだから、やっぱりドワーフって異次元な存在だ。



 ◇◇◇



「見つからない以上、もう脱出すべきだっ!」

 視界が悪化の一途をたどり、既にほんの周辺しか見えなくなっている第二セーブポイント付近、一人の背は低いが逞しい体つきの男が唾を飛ばしながら叫んでいた。

「この山は視界が極端に悪くなると超危険な自然現象が発生すると言われていてだなっ!」
「もうっ! リーダー、それ言うの何回目!?」

 それに対して声を荒げたのは赤いお下げ髪の少女だった。

「誰かが助けを求めてるのに簡単に見捨てるなんてできないよ……!」
「お……落ち着くんだサーシャ。私はだな、みんなのためを思って――」
「――そんなのわかってるよ!」
「う……」

 少女サーシャの剣幕を前に、それまで威勢がよかった男もたじたじの様子であった。

「え、えーん、わたし怖いよぉ……」

 継ぎ接ぎだらけの熊のぬいぐるみを抱えた幼女が泣き出す。

「ほ、ほらっ! シェリーだって泣いているじゃないかっ!」
「泣いてるのはリーダーも同じでしょ!」
「こ、これは雪が目元に当たって溶けたものだっ!」
「こんなときにしょうもない言い訳しないでよっ!」
「うぐっ……」
「でも……サーシャさん、さすがにもう無理だと思いますよ? 残念ですが、これだけ探してもいないわけですし……」

 おっとりした青い長髪の少女があきらめた様子で首を横に振る。

「わ、わかってるよ、ミュート。けど……助けを呼んだ人が、今どれだけ心細い思いをしてるかと思うと、あたし……耐えられなくて……」

 しきりに溢れ出す涙を拭うサーシャ。

「サ、サーシャ……」

 サーシャの肩に手を置くリーダーの男。

「リーダー……?」
「サーシャ、君はかつてほかの登山者パーティーからはぐれ、遭難していたときに助けてもらった過去があるからむきになるのは私もわかる。わかるが――」
「「「――あっ……」」」
「ん?」

 急にサーシャたちがはっとした顔になり、リーダーだけが混乱した様子で目をしばたたかせる。

「ど、どうしたのだ!?」
「「「あ、あれ……」」」
「……はっ!」

 リーダーの男を含むパーティーの面々が目にしたもの、それはこちらに向かってくるであった……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...