上 下
41 / 78

第41話

しおりを挟む

『『『『『ウゴオォォォッ……!』』』』』

 冒険者ギルド付近にて、四方八方からクレスに襲い掛かるゴーレムたち。

「なんの、これしきっ……!」

 クレスの持つ大鎌が唸りを上げたのち、囲んでいたモンスター群が少し遅れて真っ二つになる。

「「「「おおぉぉっ……!」」」」

 ダリアたちの歓声を背に受けながら、クレスが得意げに自身の大鎌を撫でてみせる。

「ふう……。やっぱり大鎌ってやつは最高だねえ。俺が隠居してる間に少し錆び付いてるかと思いきや、そんなことはまったくねえし頬ずりしちまいそうだ……」

「ひゃっほう、クレス、すげーぜっ! さすがはラウルの相棒っ!」

「クレスさん、マジぱねえっす! あのラウルさんの相方なだけあるっすね!」

「……うん。まあまあ、かな……。ラウルのほうがもっと凄いけど……」

「まったくじゃ! ラウル先生には劣るが、あの方のパートナーなだけあるわい!」

 ダリア、セイン、リシャール、オズの賛辞に対し、クレスがいかにも苦そうな笑みを浮かべる。

「おーい。お前らなあ……ラウルがスゲーのは自分のほうが痛いほどわかってんだから、今は俺様だけをヨイショしろっての! なあ、そこにいる青二才もそう思うだろ?」

「……そうだね。確かに君はラウルには遠く及ばないと思うけど、まあ君も充分に強いしユーモアもあるから凄いよ。偉い偉いっ」

「おいおい、そんなに余裕こいてて大丈夫かよ? そろそろ本物の変異種ゴーレムを出したらどうなんだよ。紛い物よりはずっと強いんだろ? 出し惜しみして飼い主がやられちまったら本末転倒だろうに」

「フフッ。まだその必要はないよ。あと、そんなに喜んでるのに水を差すようで悪いけど、君が未だにに気付けないっていうのは凄く不憫だと思ってね……」

「大事なことだぁ……? そんなもん最初から存在しないくせに強がるなって。謝るなら今のうちだぞ? それに、いずれ無自覚モンスターのラウルもここへ来るだろうし、もうお前は詰んでるんだよ」

「そうそう、クレスの言う通りだって私も思うぜっ! な、セイン、オズ、リシャール?」

「「「同意っ!」」」

 クレスの台詞に対し『暗黒の戦士』のダリアたちも同調する。

「フフッ……。後ろで震えながら隠れてるくせに、子猫ちゃんたちがやたらと元気だねえ」

「あぁ? 子猫はてめーだろ! 今なら特別に私の拳骨で勘弁してやるからとっとと降参しろっ!」

「その通りっす! あ、そうだ。ついでにダリア姉さんの結婚相手とかどうっすか!?」

「ふぉっふぉっふぉ! セインよ、それは中々の名案というものじゃ――!」

「――死になっ!」

「「ごはっ……!?」」

「……ププッ……」

 ダリアから両手で拳骨を食らい、痛そうに頭を抱える二人を見て噴き出すリシャール。

 戦況はもちろんのこと、その場の空気においてもクレスたちが完全に押しているように見えたが、対峙している青年は不気味なほどに余裕の表情だった。

「フフッ……。さあ、行け。やつらと遊んでやれ、ゴーレムたち!」

『『『『『ウゴオォォォッ!』』』』』

「はあ、懲りねえなあ。まだやるのかよ……。その余裕、いつまで続くのか見物だな……!?」

 その台詞と比例するかのようにクレスの動きは冴え渡り、発生直後に分裂したゴーレムたちをまとめて一撃で仕留めてみせた。

「わー、見事だねぇ。偉い偉い。ヨシヨシッ。でも……皮肉なことに、君のその強さが却って悲劇を生むことになるだろうね……」

「何ぃ……? こいつ、とうとう頭までゴーレムみてえにガラクタ化しちまったのかよ……!?」

 クレスが挑発しつつ青年に襲い掛かるも、彼は意に介する様子もなく、呼び出したゴーレムを盾にしてひらりとかわしてみせる。

「逃げるだけじゃ、この俺を倒すなんて到底無理だなっ!」

「フフッ。今は避けるだけでも充分だからね。さあ来い、ゴーレムたち――!」

「――しゃらくせえ! 何度ニセモンを呼び出しても同じことなんだよおおぉっ……!」

 出現と同時に数を増やしたゴーレム群に対し、クレスが怒鳴り声とともに刃を浴びせる。その極めて機敏な動作は、今までよりも格段にクオリティが高いものであった……。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...