なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し

文字の大きさ
上 下
11 / 78

第11話

しおりを挟む

「いらっしゃいませ。あなた方のご身分は?」

 冒険者ギルドの受付にて、現れた三人組のパーティーに対して受付嬢がそう訊ねる。

「はあ? 僕たちはあの超有名パーティー『神々の申し子』だぞ。そんなの見ればわかることだろうが!」

 依頼の失敗報告に来たバルドが受付嬢を睨みつける。

「申し訳ございません……」

「フン、まあいい。今度から気をつけろ。そういえばあの受付嬢はいないのか? ほら、イリスとかいう名前の子だ」

「イリスでございますか? えっと……その方でしたら、急遽『神々の申し子』パーティーの担当を変えてほしいということで、このわたくしめ、イザベラが応対することになりましたが」

「な、なんだと!? あの子は僕好みの美人な上、優しい子だから気に入っていたのに、なんで……」

「バルド、それならきっとあれでしょう。ラウルが気持ち悪いと思ったんでしょうね」

「あー、シェリー、それありえるね! こんなことになるなら、もっと早くラウルのやつを追放してればよかったねえ」

 雑談を始めたバルドたちに対し、受付嬢のイザベラが鋭い眼光を飛ばす。

「あの……わたくしめでは不満でございますか?」

「あ、いや、なんでもない。まあ別に君でも構わないが、僕と話したいならそれなりに気を使ってもらいたいものだ。フッ……」

 キザっぽく前髪を弄ってみせるバルドだったが、イザベラは顔色一つ変えることがなかった。

「それで、今日はなんのご用件でございましょう?」

「チッ、可愛げのないやつ……。依頼の失敗報告だ。とはいえ、勘違いしないでくれたまえよ? エンシェントミイラを50体倒す予定だったが、アクシデントがあったためにかなわなかっただけだ。正直、余裕だったというのに邪魔をされた格好なのだよ」

「はあ。アクシデントと申しますと?」

「誰もが逃げ惑うほどの、強力無比な災害級モンスターが突然発生したのだよ。僕たちはほかの冒険者たちを庇いながらもなんとか倒すことに成功した」

「なるほど、それは災難でございましたね。さすがはSS級パーティーと言いたいところですが、その証拠はございますでしょうか?」

「残念ながら、何一つアイテムを落とさなかったために証拠はない。だが、僕たちの姿を見てくれ。ボロボロだろう? SS級パーティー『神々の申し子』がここまで苦戦したことがいい証拠ではないか」

「…………」

「ん? イザベラとやら、何故黙っているのだね? さては、僕に惚れたか? フッ。困ったものだ。モテる男は辛いとはよくいったものだな……」

「バ、バルド、妙です。様子がおかしいですよ」

「バルド、ちょっと見てよ、あたしたちの格好……」

「へ……? シェリー、エミル、一体何を言って――」

 それまで余裕の表情だったバルドが、一転して強張った顔で声を詰まらせる。何故なら、彼らには痣どころか服の乱れさえもなかったからだ。

「はて? あなた方が災害級モンスターと戦ったという証拠はどこにあるのでございますか? それどころか、普通のモンスターと戦った痕跡すら一切見受けられませんが……」

「「「うっ……」」」

 イザベラの鋭すぎる指摘に黙り込むバルドたち。その醜態振りは、様子を窺っていた周りの冒険者たちから次々と失笑が上がるほどであった。

「そ、そんなバカなことがあるか! 僕たちは確かに災害級のモンスターと戦い、見事に退治してみせたのだ! だから、今回の失敗はノーカンだ!」

「残念ながら、明確な証拠がない限りそれはできません。あなた方SS級パーティー『神々の申し子』は今回の依頼に失敗した上、虚偽の発言をなさいました。よって、あと一回失敗すれば降格処分となり、さらに罰金として次回クエストを受ける際は銀貨1枚を提出してください。それでは」

「ち……畜生! こんなの何かの間違いなのに、ふざけやがって……。覚えていろっ!」

「ま、待ってください、バルド!」

「バ、バルド、ちょっと待ってよぉ!」

 椅子を蹴り上げて立ち去るバルドと、それを慌てた様子で追いかけるシェリーとエミル。

「『神々の申し子』に注意マーク、と……。彼らの担当から自ら外れたイリスは中々の慧眼でございますね」

 イザベラは淡々とメモを取りつつ、感心したように呟くのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...