ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、大ハズレと呼ばれる【錬金術】スキルで、自分だけあらゆるものを超便利な能力にチェンジして無双する。

名無し

文字の大きさ
27 / 57

第二七話 暴虐の王子

しおりを挟む

「う……?」

 いつの間に寝たのかと思ったら、もう朝の陽射しが来訪していた。

 あれから三日間が経過したんだが、俺はものの見事に何もしていなかった。一日だけサボるつもりが、体が楽を覚えてしまうとこんなもんだ。

 とはいえ、別にやる気がまったくなかったわけじゃない。魔力トレーニングや実戦訓練、技能変換等を再開する前にもうちょっとリフレッシュしようと思ってたら、丸々三日も惰眠を貪った格好なんだ。

 それでも一応、新しい死亡フラグが増えてないか、毎朝起きたときに自分のステータスを調べることくらいのことはやってる。

 多分今日も何もないと思うが、念のためにこれから『レインボーグラス』で調べて、それから始動するつもりだ。


 名前:ルード・グラスデン
 性別:男
 年齢:15
 魔力レベル:3.5
 スキル:【錬金術】
 テクニック:『マテリアルチェンジ』『レインボーグラス』『ホーリーキャンドル』『クローキング』『マンホールポータル』『インヴィジブルブレイド』『スリーパー』『ランダムウォーター』『サードアイ』『トゥルーマウス』

 死亡フラグ:『呪術に頼る』『に失礼なことをする』

 従魔:キラ(キラーアント)、ウッド(デーモンウッド)


「なっ……」

 珍しく死亡フラグが一つ増えていて、なおかつどこかで見た覚えがあると思ったら、第一王女じゃなくて第一王子に失礼なことをするだと……? ということは、近いうちにお目にかかる機会があるというのを如実に示している。一体何故……。

 そんな疑問が脳裏に浮かぶ中、屋敷内が俄かに騒がしくなってきて、『サードアイ』を確認すると、アイラが血相を変えて俺の部屋へと駆けつけてくるところだった。

「――ル、ルード様、大変です……!」

「アイラ、何があったんだ? まさか、第一王子が?」

「え、どうしてわかったんですか……!?」

「やっぱりか。でも、なんでここに……」

 第一王子のローガが直々に伯爵家を訪れたということで、屋敷内はパニック状態に陥っていた。高齢により衰弱した現国王が床に臥せている中、次期国王として最も有力な人物と目されているお方だからだ。

 そもそも、彼は地方へ遠征していたはずだ。その目的とは、陛下の崩御も噂されている中で地方の貴族たちが不穏な動きを見せているということで、牽制目的で王子自ら軍隊を引き連れて威厳を示し、国内外の引き締めにかかっていたのだ。

 そんな複雑な経緯があっただけに、第一王子のグラスデン家への電撃的な来訪は、様々な憶測を生む事態となっていた。

 彼がここへ参上した目的も知らされず、俺たちは急遽大広間に召集されたわけだが、その中央に屈強な兵士らを傍らに置いた殿下の姿があった。

 遠目で見ても第一王子だとはっきりわかる、それくらいの高潔さと迫力を孕んでいた。原作でも見たことがあるんだが、そこはやはりゲームと違って威圧感が桁違いだ。

 その場では召集された人々が切迫感のあまりか挙って沈黙し、息を呑む音や溜め息さえ聞こえてきた。誰もが殿下の言葉を待ち構えており、その動向に注目している様子だった。

 そういえば、彼は大の妹――第一王女のマズルカ――思いで有名な男で、シスターコンプレックスとも揶揄されるくらいだったはずだ。

 とりわけ殿下の有名な異名というのが、冷血の王女と対をなすだ。彼に無断でマズルカに近づいた貴族や、王女の陰口を叩いた使用人を問答無用で斬り捨てたという恐ろしいエピソードも持つ。

 そのため、ここにいる者たちは俺を含めひれ伏すだけでなく、緊張と不安からか互いに視線のみを交わしつつ、ローガの一挙手一投足をじっと見守っているといった様相だった。

 一人一人の表情には、畏怖と敬意が入り混じった様子が窺えた。これ以上ないほどに剣呑な空気の中、ローガの鋭い眼光が薙ぎ払うように周囲を一巡すると、さらに一層の静寂が波紋の如く広がっていった。

「ル、ルード様。殿下は一体、なんの用件でここへ参られたのでしょう……」

「……さあな、アイラ。それでもあの剣幕を見ると、あまりよろしくない用事っぽいが……」

「はい……」

 殿下の赫然たる様子を見て思い出されるのが、俺が謁見の間で第一王女に口づけしたことだ。もしかしたら、それが王子の耳に入ったのかもしれない。

 ただなあ、口づけしたといっても頬っぺただぞ? それも、男のほうからやるとなるとわけが違うように思うんだ。どう考えても子供みたいだろ。恥ずかしいから何度も言わせないでくれ。思い出させないでくれ。

 とはいえ、極度のシスコンで妹に近づいただけで斬り殺すような男だから、その可能性がなくもないので恐ろしい。ちなみに、ローガの魔力レベルはマズルカに匹敵するといわれていたはず。

 正確にはどれくらいなのか『レインボーグラス』で確認しようかと思ったが、マズルカと同じくらい察知能力が高そうだから二の足を踏んだ。

 ん、周りからは俺が第一王女に謁見したとき何か失礼な行為をしたんじゃないかっていう声がヒソヒソと聞こえてきた。それが伝わったらしく、弟のクロードやヘラ、シア、レーテの三馬鹿がこっちを向いてほくそ笑むのが見て取れる。

 それもあってか、父ヴォルドが堪り兼ねた様子で勢いよく前へ出るとともに、王子の御前に額突いた。どうやら、俺がマズルカと謁見した際に無礼な真似をして、それで王子がああも赫怒しているのだと解釈したようだ。

「で、殿下ぁぁっ! どうやら我が愚息のルードめが、マズルカ様との謁見の折に不敬を働いたとお見受けいたします。ですので、今すぐこの場でやつを処刑するゆえ、どうかご慈悲のほどをば……!」

 おいおい、この場で俺を処刑するって、正気なのか……。俺だってそう簡単にはやられんぞ。

「ルード様、どんなときでも私がご一緒いたします」

「アイラ……」

 アイラの小さな声には確かな覚悟が滲んでいた。彼女も状況を察したらしい。もし俺が父とやり合うようなことになれば国賊扱いされてしまうだろうが、そうなったとしても俺と一緒にいるのを選択したってことだ。

 彼女は表向きはグラスデン家のメイドだが、実際は王家に仕える間者なのに。これは原作じゃ当然ありえない展開だ。それだけ俺の思いを汲んでくれているってことなんだろう。俺も彼女の思いに応えなくては……。

「この戯けめっ!」

「はっ、ルードめは戯けでございますうぅうっ!」

「何を申すか! 戯けとは貴様のことだ、ヴォルド!」

「……は?」

 俺とアイラが覚悟を決める中、第一王子ローガとヴォルドのやり取りは、思わぬ方向へと流れようとしていた。

「心して聞くがよい。余はルードに感謝の言葉を述べに参ったのだ。近時、マズルカの機嫌がすこぶる良いのは彼のおかげだと聞いておったからな」

「……し、しかし、殿下は憤慨の御様子でしたので、ルードめが何かやらかしたのではないか、と……」

「余がかくも憤っておったのは、貴様らがそのような恩人をあろうことか幽閉し、冷遇しておったと耳にしたからだ!」

「もっ……申し訳ございませぬううぅっ!」

「「……」」

 俺はアイラとぽかんとした顔を見合わせる。なんだか体の力が一気に抜け落ちた感じだ。

「ゆ、幽閉と一概に申しましても、愚息を懲らしめるために致し方なく命じたことであり、軟禁よりも少々厳しい程度のものでして、そこまで厳しい処罰ではございませんでした。その点については、侍従殿からも彙報があったかと――」

「――もうよい。貴様らに見る目がないと申したいだけだというのに、話にならぬ。余は貴様らのような節穴などとではなく、恩人のルードと話すゆえ、決して邪魔立ていたすな。逆らえば命はないと心得よ」

「はっ……!」

 ヴォルドのやつ、跪きながらも震えてるのがわかる。それが悔恨によるものなのか、あるいは病状が悪化しているのかは判別できないが、俺とアイラにとっては胸のすくような展開であることに違いなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

処理中です...