勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し

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27.殺伐

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 依頼主:ケフカ

 取引場所と時間:港町イルベルタ入口付近 朝6時

 依頼ランク:B

 報酬:金貨10枚 銀貨19枚

 依頼内容:イルベルタの船着き場に巨大なタコのバケモンが住み着いちまって、船を出せない状態が続いて困ってんだ。頼むから誰か助けてくれ!

 ※期限は一週間以内だ。それ以上はもう待てねえ。どうかよろしく頼む!

「おおっ、これは……」

 このケフカとかいう依頼主、船を出せなくてかなり焦ってるのかBランクにしては破格の報酬でAランク並みだった。これは絶対に引き受けるべきだろう。

「「「「じー……」」」」

「うっ……?」

 圧を感じると思ったら、ラルフたちが訝し気に依頼の貼り紙と俺を交互に見比べていた。

 いくら金のためとはいってもまた人助けの内容だし、さすがに大物の悪党にしては怪しいと思い始めてるのかもしれない。義賊という線もあるがやりすぎるとただの正義の味方だしなあ。このままじゃ舐められてしまう。どうしたもんか……。

 と、とりあえずその場しのぎに何か言うんだ。何か……。

「海は男の浪漫だからな……」

「「「「……」」」」

 ラルフたちは奇妙だと感じてるのかシーンと静まり返ったままだ。さすがに海が好きだからっていうのは人助けする理由にしては厳しいか。ダメだ、この路線はやめとこう。海賊に知り合いがいるからみたいなことを言っても、そこから話を広げなきゃいけないわけですぐ嘘がバレそうだしなあ。

 もっとこう、迫力のある……ラルフたちに恐怖心を植え付けられるような理由が欲しい……って、その手があったか。

「ハハハッ! 何がモンスターだ。薄っぺらい悪が。恐怖ってのが足りてねえんだよ」

「「「「えっ……」」」」

 お、明らかに動揺してるのが伝わってくる。この調子だな。

「今にも大量殺戮が起きそうな、そういう殺伐としたムードがいいんじゃねえか」

「「「「ごくりっ……」」」」

「俺が……この俺が本当の恐怖ってのを見せつけてやるぜ!」

「「「「おおっ!」」」」

「ただ、正義の味方なんかと勘違いされたくねえからな、当然今回も変装するっ……!」

「さすがディルの旦那……ただの人助けと見せかけておいて、本当の恐怖っていう緩急で落とす作戦……憎たらしいほど悪党っす!」

「リゼ、鳥肌立ったぁ。見て見てっ」

「わたくしも、もうじゅっくりですわ……あんっ」

「あたしも、くらくらしちゃうのぉー!」

「ククッ……俺が港町を恐怖の色で塗りまくって、集まってくる全世界の美少女どもさえも濡らしてやる! ハハハッ! ハハッ……」

 さすがに今回はヒヤヒヤしすぎてちと疲れた。次はちゃんとした理由を決めてから依頼を受けるとしよう……。



 ◆◆◆



「ねぇねぇ、マイザー、この依頼なんていいんじゃない……!?」

 冒険者ギルドにて、勇者パーティーの一人ミーヤが指差したのは、港町で巨大なタコの化け物が暴れているので一週間以内に退治してほしいという依頼だった。

「お、いいじゃんか! ほかのAランクの依頼よりよっぽど報酬も上だし、倒したら目立つしで美味しすぎる! なぁ、マイザー」

「……そ、そうだね。いいかもしれない……」

 だが、僧侶ミーヤと戦士バイドンの熱量に対して、勇者マイザーの表情と声はいずれも冷めたものだった。

「もー、元気出してよ、マイザーったら、それでも勇者!?」

「ミーヤの言う通りだって、マイザー。さっさと攻略して名誉挽回といこうぜ!」

「う、うん――」

「――いや、ちと待ちたまえ。勇者パーティーなのに今度はBランクに挑戦だと? 格的には最低でもAだろう、そこは」

 いかにも不快そうにエルグマンが待ったをかけるが、ミーヤとバイドンの顔はそれ以上に不機嫌そうであった。

「ふむ、怒った猿の真似か。まあまあ面白いから続けろ」

「ふざけないでよ、もう!」

「まったくだ、エルグマンッ! 元はといえばてめえがしっかりしないからこうなったんじゃねえかよ!」

「今度は責任転嫁か。やれやれ――」

「――こいつっ! よく聞け!」

 バイドンがエルグマンの胸ぐらを掴む。

「む、貴様、なんの真似だ……?」

「なんの真似だ、じゃねえよ糞召喚術師。これはな、勇者マイザーの名誉挽回のためでもあるけどよ、エルグマン……てめえの力を試すためでもあるんだよ」

「試すだと? 我の魔力の豊富さを知っての狼藉か……?」

「はっ! いくら魔力があってもな、底辺パーティーにいたやつが偉そうな口聞いてんじゃねえ!」

「ふむ。我の召喚術ならどんな相手であれ一撃で倒せると思うが……」

「よーし、なら見せてもらうぞ!」

 こうして殺伐としたムードを色濃く引き摺りつつ、勇者パーティーは港町へと出発するのだった……。
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