勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し

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21.宴

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「ういー……おめえさんはよ、【魔王の右手】って知ってるか?」

 冒険者ギルドにて、一人の酔った眼帯の男がテーブルの向かい側でパイプを吸う男に対してこう切り出した。

「ふー……ん、なんか聞いたことある物騒な異名だな! でもただの悪党なんだろ?」

「バカ、ただの悪党じゃねえよ。あのお方はな、義賊みてえなもんだ」

「へえ、何したんだよ?」

「……ひっく……根性のねえ腐った悪党どもを懲らしめてくれてるって話よ。いわゆる大物の悪ってやつだな」

「なるほど、そりゃ【魔王の右手】なんて言われるのもわかるぜ!」

「右手どころか……いずれ昇ると思うぞ、あのお方なら魔王にまで、な……」

「「「「……」」」」

 その隣のテーブルには勇者パーティーが座っており、いずれも神妙な面持ちで流れてくる会話に耳を傾けている様子であった。

「なんか腹立つ。こっちには勇者がいるのに、魔王がどうの、生意気よっ……!」

 いかにも不機嫌そうに捲し立てる僧侶ミーヤ。

「ねえねえマイザー、あたしたちで倒しちゃいましょうよ、【魔王の右手】とかいうの」

「んー……だからってこっちからわざわざ出向くのもなぁ……」

「マイザーったら消極的よ、勇者のくせに!【魔王の右手】をぶっ倒すのよ!」

「お、おい、聞こえちまうぞ、ミーヤ。聞いた感じヤバそうな相手じゃねえか」

「バイドンったら、何びびってるの? 別に聞こえてもいいわよ。【魔王の右手】? どうせ雑魚でしょ!」

「こらこら……まあミーヤの気持ちもわからんでもないけどね。小物だの大物だの、程度がどうであれたかが悪党なんだし、そこに優劣なんてつけられても」

「ねー!」

「まあうちには頼りがいのある召喚術師も入ったし、機会があればやり合ってもいいかな」

「おー! 確かにエルグマンさんの召喚術も強いし、あたしたちで瞬殺できそー」

「む? 我としては、そこにいる肉壁がちゃんと機能してくれるならやっても構わんが……」

「お、おいエルグマン、てめえ俺を肉壁扱いかよ! ふざけんな! ディルならそんなの必要なく一瞬で終わらせるぜ――あっ……」

「「「……」」」

 バイドンの一言により、その場はなんとも気まずい空気に包まれるのであった。



 ◆◆◆



「「「「「乾杯っ!」」」」」

 冒険者ギルドの一角にて、俺たちは互いにグラスを合わせ、目前に用意された豪勢な料理に舌鼓を打ち始めた。いやー、脳が痺れるほど酒も料理も旨い。あれもこれも食べたくなって胃袋がもう一つ欲しくなるほどだ。

 Dランクの依頼を攻略しCランクとなったことで、早速報酬の金貨1枚銀貨2枚を惜しげもなく使って祝勝会ってわけだ。知名度もうなぎのぼりなのか、ちらちらと俺のほうを見てくる冒険者たちやギャルの姿もあってすこぶる気分がよかった。

「さすがディルの旦那、オーガみてえにドカドカ食べるっすねえ」

「すっごぉーい。リゼも一緒に食べられちゃいそうっ」

「是非わたくしも食べていただきたいですわ……」

「あたしも食べて食べてー!」

「あっしも!」

「ハッハッハ! お前ら……本当に食っちまうぞ!?」

「「「「キャー!」」」」

 野太い声を含む黄色い歓声が上がる。俺としても気分は最高……に見せかけてるだけで、実際はもう限界が近付いていた。

「うっ……」

「ディルの旦那?」

「「「ディル様?」」」

「い、いや、なんでもない……」

 あぁ、吐き気がする。これ以上飲み食いしたら間違いなく吐いてしまう。だが、ここでやめてしまえば悪党としての格がグンと下がりそうだ。うーむ、どうするべきか……。

「――ッ!?」

 そこで、俺は足元の食べかすに這い寄る黒光りの虫けらを発見した。こいつに召喚術を使えば何か都合のいいことが起きるかもしれない。満腹という見えない敵も一緒に倒してくれるはず……。

「あ、ゴキブリだ!」

「「「「ひえっ!?」」」」

 というわけで俺はみんなの注意を足元に引き付ける間に杖を掲げ、召喚術を行使した。

『モキュッ』

「おっ……」

 テーブル上に真ん丸としたスライムが召喚されると、美味しそうに飯を平らげ始めた。おー、なるほど、俺の代わりに食べてくれるってわけか。なんか嗜虐心を煽る顔、食べ方なせいかむかむかしてくるが感謝しないとな。さて、最後は俺が始末をつけるか……。

『ムキュッ……?』

「ありがとうな。お前の命は無駄にしない――」

『――ミュバッ!?』

 俺はスライムを抱きしめながら優しく囁くと、一気に力を入れて潰してやった。

 多少罪悪感はあるが、あくまでもこいつじゃなくて俺が食ったことにしないといけないし仕方ない。まあ、俺の召喚獣として出てきたわけだからまた運がよければ会うこともあるだろう、多分……。
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