勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し

文字の大きさ
上 下
17 / 30

17.お手本

しおりを挟む

 依頼主:ピケット

 取引場所と時間:ギルドの受付カウンター近く、正午くらい

 依頼ランク:D

 報酬:金貨1枚 銀貨2枚

 依頼内容:都から北北西およそ10キロ先にある巨大地下牢迷宮の一階層から三階層にて、覆面をつけた二人組のプレイヤーキラーが暴れていて大変迷惑しております。出没するのは夕方から夜にかけての時間帯が多いみたいです。自分たちのパーティーも被害を受け、仲間が斬られ重傷を負ったので是非捕まえていただきたい。

 ※三日後には都を発つ予定ですので、期限は今日の朝から明後日の正午くらいまででお願いします。

「……」

 なるほどなるほど。見た感じ、数あるDランクの依頼の中でも一番報酬が高かっただけでなく、緊急性も要しているように思えたのでこれに決めることにした。

「迷宮の浅い階層で被害者が出捲るってことは、初心者の冒険者を狩ってイキッてやがるんだな。ふざけやがって……」

「ディルの旦那、また小悪党退治っすか? んー、さすがにこんだけ離れた迷宮が縄張りってわけもねえだろうし、これじゃあ、まるで……」

「うんうんっ、ラルフの言う通り、これじゃまるでディル様って正義の味方みたいだよぉ」

「そういえばそうですわね。ディル様の意図がどうであれ、結果的にはそうなっていますし……」

「こんなこと言いたくないけどー、ディル様って、実は正義の味方なのかもー?」

「くっ……」

 おいおい、ラルフたちが俺のことを正義の味方なんじゃないかと堂々と疑い始めやがった。さすがに人助けの依頼ばかりやってるからか? しかし、俺のことを恐れてる割りにちと図々しい気もする。おそらく、こいつらにしてみたら俺と長く一緒にいることで、悪党の怖さに慣れてきたっていう面も大きいんだろうなあ。

 うーむ、このままじゃ舐められてしまうぞ。ここをどう切り抜けようか……ってそうだ、があった。

「ハッハッハ!」

 俺が腰に手を当てて高笑いを始めると、みんなびっくりした様子で押し黙った。

「正義の味方だあ? 笑わせるなよ、お前ら。俺が自ら悪の手本ってやつをこいつらに見せてやるってんだよ!」

「あ、悪の手本……!? なるほど! ディルの旦那が直々にお手本を示してやるってわけっすか」

「確かに、浅い階層で弱い人をちまちまといじめるのかっこわるう」

「ですわねえ。小心者で小物の小悪党さんみたいです」

「あははっ、マジキモー、ちょーサイテー」

「ハッハッハ! そいつらは俺にしてみたらどうしようもないバカ弟子みたいなもんだが、やり方がみみっちくて気に入らねえ。ちっとお灸を据えてやらんとなあ……」

「「「「ごくりっ……」」」」

 よしよし、額に青筋を浮かせた俺に対してみんないい感じにビビってるし、失った分の威厳はちゃんと補充できたようだ。これで俺の脱力系召喚術がより冴えるというもの。

 しかもガチャ系なので何が飛び出すかは俺でもわからないが、舐められる可能性があるのが問題であって召喚術自体は最強だからな。見てろ、プレイヤーキラーなんてやってる愚かな二人組に天誅……いや、本物の悪党の流儀ってもんをこれでもかと刻みつけてやる……。



 ◆◆◆



「むんっ……我の至高の召喚術を見よっ……!」

「「「おぉっ!」」」

 勇者マイザー、戦士バイドン、僧侶ミーヤが目を輝かせるのも無理はないことであった。神殿内に現れたA級モンスター、クリスタルスパイダーに対して召喚術師エルグマンが出現させたもの、それは大きな剣の形をしたモンスター、オーガブレイドであり、赤黒い目玉が刀身に覗く不気味な容姿だったが、あっという間にモンスターを駆逐したのだ。

「さ、さすがエルグマンさんだ、ディルとは違う」

「あんなゴミ野郎とは比べものにならねえぜ!」

「ホント、最高――って!?」

 僧侶ミーヤがギョッとした様子になるのも仕方なく、オーガブレイドはクリスタルスパイダーを倒しただけに飽き足らず、暴走した様子で剣を振り回し、勇者たちに対しても牙を剥いて攻撃し始める始末だった。

「「「――はぁ、はあぁ……」」」

「まあ、たまにはこういうこともある。気にしないでくれたまえ」

 オーガブレイドからようやく逃げ切り、酷く疲れた様子のマイザーたちだったが、一方でエルグマンは涼しい顔をしていた。

「エ、エルグマン、お前っ、気にしないでって……外れ召喚師のお手本みてえなあんな狂暴なモンスター召喚しておいて、よくそんな無責任なことが言えるな!?」

 耳まで赤くしたバイドンが怒り狂った様子でエルグマンに詰め寄り、その胸ぐらを掴む。

「ふむ……? 我のおかげで倒したのにその言い分はないだろう。それに、大きな力には代償がつきものなのだよ。ま、君みたいな雑魚にはわからんだろうが」

「は、はあ? 俺が雑魚だとおぉ……!?」

「ちょ、ちょっと、やめないか、バイドン」

「そ、そうよ、仲直りっ。ね?」

「フン……」

「ちっ!」

 マイザーとミーヤが割って入ったこともあり、不満そうに握手し合うエルグマンとバイドンだったが、直後に目の前でお互いにすぐ手を拭く等、不穏なムードはいつまでも続くのだった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

異世界に転生したもののトカゲでしたが、進化の実を食べて魔王になりました。

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
異世界に転生したのだけれど手違いでトカゲになっていた!しかし、女神に与えられた進化の実を食べて竜人になりました。 エブリスタと小説家になろうにも掲載しています。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...