勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し

文字の大きさ
上 下
16 / 30

16.胸

しおりを挟む
「ククッ……」

 あの泥棒、俺の手紙を読んでさぞかし震えあがったことだろう。

 依頼主のファルルにも、『本当にありがとうございました。将来、私をあなたのお嫁さんか愛人にしてください!』という台詞とともに凄く喜ばれたのでよかった……っと、目つきの鋭さに反比例して思わず口元が綻んでしまう。俺もようやく悪党が板についてきたってところか。

 ファルルから報酬のおまけとして本人自称のファーストキスを頂いただけでなく、泥棒の家まで頂戴する格好になったのに、罪悪感の欠片も覚えずにこうして笑うことができてるわけだからな。

「ウブな依頼人のハートだけでなく、泥棒を存在ごと抹殺して家まで奪う、と……。いやー、ディルの旦那の外道畜生っぷりには頭が下がりやす……」

「本当だよぉ。でもディル様みたいな大悪党って格好よくてリゼ大好きっ」

「ですわねえ。ディル様のことを思うと、わたくし体が火照っちゃいます……」

「あたしもー。気付いたらディル様のことばっかり考えちゃうー」

「ハハハッ。俺を褒めるのはいいが、お前たち、を忘れてるぞ……?」

「「「「あっ……!」」」」

 今、俺は新しい我が家のソファでラルフたちからマッサージをしてもらっている最中だったのだ。今日からここが俺たちの本拠地で、あの洞窟はもう別荘ってことでたまに利用する程度でいいだろう。あそこは一応ダンジョンだからなのかたまにモンスター湧くしな……。





「――ふう、よく寝た……あ……」

「ディル様、おはよぉ」

「おはようですわ、ディル様……」

「ディル様、おはよー!」

「……」

 この状況は、天国なのか……? 俺は小さなものから大きなものまで、様々な膨らみを惜しげもなく披露したリゼ、ルリア、レニーと一緒にベッドで朝を迎えていた。

 ま、まずいぞ、いくらなんでもこれは……。喜ばせようってのはわかるし実際に嬉しいんだが、正直想定外すぎて鼻血が出そうになっていた。ああ、ダメだ、もしそんなところを見られてしまったら、俺は大悪党の癖に女慣れしてないウブなやつだとして笑い者にされてしまう――

『――あんっ♡ ディルの旦那、愛してるっす♡』

「うっ……」

 そこで俺はラルフのおぞましい台詞を想像することで、なんとか鼻血を抑えることに成功した。毛にまみれた分厚い胸板もセットで想像してしまったので、若干吐き気まで催してきたが。

「フッ、みんな、おはようだ……!」

 俺が爽やかな笑顔とともに言ってのけると、みんな脱帽した様子でお互いに顔を見合わせていた。

「えへへ、さすがディル様、憎たらしいくらい女の子慣れしちゃってるよぉ」

「リゼ、それはもちろん、ディル様にとってはハーレムなど呼吸のようなものなのでしょう。なんせ大悪党様ですからねえ」

「あぁん、ディル様ったら、ちょっぴり怖いけど超素敵なのー!」

「ハッハッハ! 俺はこれまでいくらでも、男たちだけでなく女たちもちぎっては投げ、ちぎっては投げしてきたからなあ!」

「「「ごくりっ……」」」

 リゼたちは、俺が女の子たちに囲まれることが最早当たり前すぎて飽きてしまい、手を出すことすらない、そういう風に思ってくれてるっぽいのでよかった。本当の俺は女慣れなんてしてないただのウブな男だから……。でも不思議と慣れてきてる感じはするから、いずれは本物の魔王にだってなれるかもしれない。

 さあ、そのためにも冒険者ランクをガンガン上げていかないと。既にEランクからDランクまで上がったわけだが、大悪党を目指してるやつがこの程度で満足できるわけもない。

「――なっ……?」

 ってなわけでギルドを目指して家を出た俺たちの前に、眼帯の男を筆頭にいかにもガラの悪そうな連中が集まっているのがわかった。どいつもこいつも眼光が異様に鋭いし、まさか俺を倒しにやってきたんじゃないだろうな……って、あれ? 警戒してたら、一斉にひざまずいてきた。なんだ……?

「うおぉっ! 大悪党のディル様、噂を聞いて駆けつけてきやした!」

「どうか弟子にしてくだせえ!」

「水汲み、洗濯、なんでもやります!」

「「「「「押忍っ!」」」」」

「……」

 俺の弟子、ねえ。汗臭い野郎ばっかりだし面倒すぎるな。よし、ここはサクッと召喚術を使って解決するとしよう。

「「「「「ぬはっ!?」」」」」

 詠唱後まもなく、冷水が落ちてきてやつらにぶっかかるのがわかった。リゼたちも含め、みんなぽかんとした顔だ。相変わらず脱力系の効果だが、さて、ここをどう乗り切ろうか……よし、あの作戦でいこう。

「おいお前ら、目を覚ませ!」

「「「「「えっ?」」」」」

「そんなヤワで半端な精神じゃなあ、死ぬか僧侶になるしかねえってことだあっ! それくらい、てめえらと俺はハートに差があんのよ! ハハハッ!」

「「「「「……」」」」」

 一瞬の静寂とともに、みんな格の違いを感じたらしく、青い顔で一様に退散していった。一人だけ眼帯の男がひざまずいていたが、俺が肩を叩くと隻眼から一筋の涙を流して立ち去った。彼についてはちと惜しい気もするが仕方ない。

「ヒュー、さすが、ディルの旦那。そりゃこんな本物の悪を目の当たりにしちまったら、半端な悪の自分がちっぽけに感じるわな」

「だねぇ、リゼなんてディル様があまりの迫力だからお漏らししそうになったもんっ」

「あら、わたくしもですわよ? 別の意味でびしょぬれですわ……」

「あたしもぉー!」

「……」

 俺は自然と胸が熱くなってきていた。悪党を演じてるうちに、順調にそっちの方向に近付いてきてると感じるな……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

処理中です...