勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し

文字の大きさ
上 下
13 / 30

13.囮

しおりを挟む
 俺の大事なお宝で盗賊を釣る、という案が正式に決まり、それからは骨格に肉付けするように怒涛のスピードで盗賊捕縛作戦の内容が固まっていった。

 まず、俺たちの中で一番弱そうなリゼが囮になってお宝の入った小袋を持ち、盗賊に油断させて近寄らせるというものだ。

 なんせ今回のターゲットはかなり警戒心が強いらしく、屈強な男相手だとそもそも襲ってこないそうだ。

 なのでラルフは論外として、俺も同じ男なのでパーティーの女性陣、すなわちリゼ、ルリア、レニーの中からお子様然としたリゼが選ばれた格好だ。

「どきどき……」

 台詞通り、落ち着かない風のリゼが荷物を手にする。盗賊が現れる夕刻も近付いてきたし、俺のお宝を手にしたことでかなり緊張も高まってそうだ。

 だが心配ない。彼女が襲われたとわかれば、近くで見守っている俺たちがすぐに飛び出して――って……リゼがこっそり小袋の中身を見ようとしていたことに気付き、俺はすぐさま怒りの形相で詰め寄った。

「リゼエェ……」

「ひゃうっ、ディル様、ごめんなしゃい。どうしても気になっちゃって……」

「じゃあ仕方ない、ルリア、頼む」

「はーい、承知いたしましたっ」

「……」

「あの……」

「……ん?」

「その……ディル様、申し訳ありません。わたくしのことをそんなに見て下さるのは嬉しいのですけど、少々照れてしまうのですが……」

「あ、ああ、そうか」

 ルリアがやたらとそわそわしてて落ち着かない様子。

 これはもう、俺が余所見でもしたらその隙に荷物の中を覗く気満々だな。というわけで少しの間視線を剥がしたあと、すぐ戻してやったら案の定、小袋のほうにルリアの視線が釘付けになっていた。しかもちょっとニヤけてたぞ……。

「はい、没収」

「うぅ……」

「次、レニー」

「任せてー」

 俺はレニーに小袋を渡した。この子は天然っていうか何考えてるのかよくわからないってことが結構あって、覗いちゃいけないっていうのをすぐ忘れて覗こうとするんじゃないかっていう怖さはあるが、女性陣はもう彼女しかいないわけだしこの際しょうがない。

「レニー、わかってるな、絶対覗くんじゃないぞ?」

「う、うんっ」

「……」

 俺が詰め寄って念を入れると若干動揺していた様子だったので少々罪悪感を覚えたが、ちゃんと脅しておかないとな。こういうとき、凄みが一層増すから悪人として見られてて本当によかったと思う。

「ディル様のお宝、見たらダメ、絶対に見たらダメ……」

「そうそう」

 レニーが自分に言い聞かせてる様子。結構物分かりがいいタイプらしい。

「ダメダメ、見たら、見たらダメ……」

「……」

 ちょっとくどいが、仕方ないか。

「ダ……ダメなんだから……!」

「おい!」

「あぅ……」

 彼女が小袋に顔を近付けてたので没収することにした。これ多分、欲望に一番弱いタイプだ。

「で、ではあっしが!」

「いや、ラルフがやるくらいなら俺がやる!」

「うぐ……絶対開けないのに……」

「それはともかく、ラルフはある意味盗賊みたいな顔だからな」

「酷いっす、傷つくっす。ディルの旦那の鬼、悪魔、魔王っ!」

「おいおい、それは俺にとっちゃ誉め言葉だぞ?」

「そ、そうでありやした!」

「「「プププッ……」」」

 リゼたちが笑う中、照れたような顔を見せるラルフ。彼は見た目と反して中身は乙女みたいなやつなんだが、ガタイがいい上に強面ってこともあってさすがに盗賊も近寄らないだろうしな。

 俺の場合は男とはいえ痩せ気味だし、猫背になっていかにも自信がなさそうに歩けば大丈夫だろう。それに、よく考えたらこの宝は俺が持っているのが一番いい。なんせこの宝の値打ちは俺にしかわからないともいえるものだから、盗賊にもその大事そうな様子がひしひしと伝わるかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

異世界に転生したもののトカゲでしたが、進化の実を食べて魔王になりました。

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
異世界に転生したのだけれど手違いでトカゲになっていた!しかし、女神に与えられた進化の実を食べて竜人になりました。 エブリスタと小説家になろうにも掲載しています。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...