勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し

文字の大きさ
上 下
7 / 30

7.無慈悲

しおりを挟む

「それ以上近付くんじゃねえぇっ! こいつをぶっ殺されてえのかあぁっ!?」

「た、助けてえぇ……!」

 いるいる、例の人質を取って暴れてる悪党とやらが。

 俺たちは早速依頼をこなすためにメイヤ村を訪れていた。小振りな武具屋の店先で、甲冑を着こんだ恰幅のいい男が斧を掲げながら叫んでいて、その横にはロープで縛られた状態で座り込む女性の姿があった。

「おいお前ら、俺は本気だからな!? 俺の近くにきやがったら、目の前でこの女の首を刎ね飛ばしてやるっ!」

「ひいぃっ……!」

 甲冑の男は血眼で斧をブンブンと振り回し、俺たちを含め、周りにいるやつらに威嚇している。俺は悪党の皮を被ってるとはいえ、中身は至って普通寄りだから見てて本当に腹が立つ。あのままじゃ精神的にもきついだろうし、早く助けてやらないと……。

「ディルの旦那、ありゃかなりやべえっすよ。ちょっとでも近付けば、本当に人質を殺しちまってもおかしくねえかと……」

「ああ、そうだな……」

 確かにラルフの言う通り尋常じゃない暴れ方で、大きな斧を棒きれのように軽々と片手で振り回していることから、一歩でも間違えれば大惨事につながりそうだ。

「うぅ、人質さん、かわいそー!」

「早く解放してあげたいですわ……」

「だねー」

「ああ、なるべく早く人質を助けないと――」

「「「――えっ?」」」

「……」

 俺はリゼ、ルリア、レニーの三人から訝し気な視線をぶつけられてはっとなる。そうだったそうだった、みんなの声に引き摺られた結果とはいえ、また俺が悪党だっていう設定を忘れてしまっていた。ここをどう乗り切ればいいのか……。

「あれですかい、旦那」

「ん?」

「ここで人質を殺されたら、悪党としての面目が丸潰れになっちまうってことっすよね?」

「そ、そうだ。やつが人質を殺すことで、悪党として俺より目立つのは我慢ならんからな。殺すなら俺が人質ごと始末してやる……」

「「「「おおっ……」」」」

 ニヤリと笑みを浮かべた俺に対し、畏怖と尊敬の入り混じった視線が集まるのを感じる。これでいい、これでいいんだ……。

 だが、俺の召喚術はあくまでもガチャ脱力系だから、舐められないためにももっと脅しておいたほうがいいかもしれない。そうすれば、結果がしょぼかったとしてもバイアスがかかって強力に見えるかもしれないし。

「ラルフ、リゼ、ルリア、レニー……お前たちに一つ言っておきたいことがある。俺の召喚術の巻き添えになって死ぬかもしれないが、いいか……?」

「「「「え……?」」」」

「正直、味方でも命の保証はできない。それくらい強力だからだ……」

「「「「ごくりっ……」」」」

 俺の寂しげかつ愉悦的な微笑みに、みんな震えあがってる様子だったがまもなくきりっとした顔立ちに変わった。なんだ?

「悪評高きディルの旦那を新たなリーダーとして迎え入れたときから、死ぬ覚悟はできておりやす……」

「リゼ、死ぬの怖くないもん……」

「逝くときは一緒ですわ」

「玉砕よ!」

「ラルフ、リゼ、ルリア、レニー……ありが――」

「「「「――ありが……?」」」」

 違う、ここで言うのはお礼じゃない。俺は悪党なんだ。ありが、ありが……。

「ありが……蟻が一匹すら消えてなくなるくらい、無慈悲な召喚術を決めてみせるぜ……」

「「「「おおっ……!」」」」

 ふう、なんとかごまかせた。偶然ではあったが、これだけ念入りに脅してやれば俺の召喚術にも箔がつくというものだろう。

 さらに俺は悪党に向かって白目を剥き、クレイジーさもおまけで付け足してやった。その影響なのか、なんだか体が熱くなってくる。最初は演技でしかなかったが、本当に悪人のようになった気分だ。さあて、そろそろおっぱじめるとしようか……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...