勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し

文字の大きさ
上 下
6 / 30

6.外道

しおりを挟む

「さあ、お前ら、俺についてこい!」

「へい!」

「うんっ!」

「わかりましたわ……!」

「はーい!」

 前方からはまぶしい朝陽、後ろからは俺の新たな味方――戦士ラルフ、魔法使いリゼ、僧侶ルリア、剣士レニー――の元気な声がぶつかってきて気分は上々だ。宿舎の洞窟を出て、俺たちが向かった場所は冒険者ギルドだ。

 俺は全員A級の勇者パーティーにいたものの、そこから追放されたことで底辺のF級冒険者に逆戻りしてしまったため、最初からランクを上げなきゃいけない。それは前リーダーから見捨てられたラルフたちも同じだってことで、新たに俺がリーダーとなってみんなを引っ張ることにしたんだ。

 ギルドへ到着するなり、早速俺たちは依頼を探し始める。もちろんF級しか選べないのでそこを重点的に。何々……どこぞの屋敷から荷物を駐屯地まで運搬してほしい、遠出する貴族の娘の用心棒として付き添ってほしい、近くの鉱山で魔鉱石を発掘してきてほしい……。

「うーむ……」

 報酬もいいし悪くない依頼が幾つもあるが、どれもこれも悪党として選ぶには相応しくない。そういう意味じゃ、別のプレッシャーが押し寄せてくるな……。

「旦那が何を選ぶのか、楽しみにしておりやす!」

「なんだか怖そうだよぉ」

「きっと、常人では考えられないものですわ……」

「だよねぇー」

「……」

 ラルフ、リゼ、ルリア、レニーの期待の眼差しがさらに重く肩にのしかかってくる。ん、なんか一枚の貼り紙の前に人だかりができてて騒々しいな。

「なんかやべー依頼だぜ」

「これ、絶対受けないほうがいいだろ」

「明後日にはAまでいくんじゃね?」

 Aというのはおそらく依頼のランクのことだろう。今一番熱い依頼で、誰も攻略できそうにないからこんな発言が飛び出すんだ。一体どんな依頼なんだろう、俺も見てみるか。

 依頼主:リャック

 取引場所と時間:ギルド入口 午前10時半

 依頼ランク:F

 報酬:金貨1枚 銀貨3枚 銅貨5枚

 依頼内容:都から西北西3キロ先、メイヤ村中央通りにある自分の武具屋『ヘルファイヤ』で立てこもり事件が発生いたしました。店先で酔っ払った男が客を人質に取って暴れています。どうかお助けを! 期限は人質の体力を考え、本日より三日までとさせていただきます。

 ※報酬は人質が無事だった場合のみ発生しますのでご了承ください。

 なるほど。冒険者になりたてでも受けられるFランクにしては破格の報酬だが、その分受ける人が少ないってことを見越したものだろうな。

 確かに迂闊に飛び込めば人質を死なせてしまう可能性もあるし、下手すりゃ報酬を貰えないどころか評判すら下がってしまう、リスクがバカでかくて手を出し辛い依頼だ。それでも、成功すればかなり美味しいといえるだろう。俺はもう評判なんて地に落ちてるようなものだし、そもそも悪党だから怖いもの知らずだしいけそうだな。

「よし、これにするか、お前たち」

「「「「えっ……?」」」」

「ん?」

 ラルフたちがみんな不思議そうにしたので俺は一瞬わけがわからなかったが、まもなくはっとなった。そうだ、俺は悪党っていう設定だったんだ。なのにこんな依頼を受けるというのはある意味矛盾してるのかもしれない。

 そうだな……言ってしまったものはもうしょうがない。悪人がこの依頼を受けるもっともらしい理由を考えるんだ……んー、ああでもないこうでもない……よし、あれでいこう。

「――俺はなあぁ……許せねえんだよ……」

 額に青筋を浮かせるイメージで、俺は宙を睨みつけた。

「「「「許せない?」」」」

「ああ……大した力もねえくせに俺より目立とうとする悪党がよ……」

「な、なるほど。よくよく考えてみりゃ、これって悪党同士の抗争みたいなもんっすよね。さすがディルの旦那!」

「ディル様はぁ、大悪人だもんねっ」

「うふふ、ディル様ったら、相手が格下といえど、同じ悪人を見て負けず嫌いの虫が働いたのですね……」

「ディル様、小悪党を蹴散らしてやってー!」

「ああ、任せろ、お前ら。こんなやつ、人質ごとぶっ飛ばしちまうぜ……」

「「「「ごくりっ……」」」」

 不敵な笑みとともに吐いた俺の台詞に対し、関係ないやつらも含めてみんな青い顔で黙り込んだ。これならしばらく舐められずに済みそうだな……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

投擲魔導士 ~杖より投げる方が強い~

カタナヅキ
ファンタジー
魔物に襲われた時に助けてくれた祖父に憧れ、魔術師になろうと決意した主人公の「レノ」祖父は自分の孫には魔術師になってほしくないために反対したが、彼の熱意に負けて魔法の技術を授ける。しかし、魔術師になれたのにレノは自分の杖をもっていなかった。そこで彼は自分が得意とする「投石」の技術を生かして魔法を投げる。 「あれ?投げる方が杖で撃つよりも早いし、威力も大きい気がする」 魔法学園に入学した後も主人公は魔法を投げ続け、いつしか彼は「投擲魔術師」という渾名を名付けられた――

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...