2 / 30
2.噂
しおりを挟む「――はあ……」
冒険者ギルドにやってきた俺は、早速仲間やパーティーを募集し始めたわけだが、出てくるのは溜息ばかりでまったく音沙汰がなかった。
面倒だと思いつつも久々に頑張って自己紹介文を作り、パーティー募集用の掲示板に貼ったんだが、誰一人として俺の座るテーブルに近寄ってこないのだ。
一体どういうことだ? まるで俺のいる周辺一帯、見えなくなる結界でも張られて存在すら認識されてないかのようだ。おかしいなあ。こんなはずじゃ……。
そもそも召喚術師ってこんなに需要の少ないジョブだっけか? むしろ人気のあるジョブだと聞いてたんだが。俺は何か妙だと思い、パーティー掲示板を念入りに確認することにした。
「……あ……」
一つの貼り紙が目に入る。
要注意人物名:ディル
性別:雄
ジョブ:召喚術師
外見の特徴:ちょっと長めの髪と顎鬚、やる気のなさそうな垂れ目、中背中肉、ぶかぶかの青装束。
問題行動:女性にはセクハラ、男性にはパワハラで接する最悪の男です。勇者パーティーから総スカンで追放され、血眼で奴隷候補の仲間を物色してる最中ですが、極めて横暴、凶悪な動物的人物なので、見かけたらどうかご注意を!
「おいおい……」
なるほどなるほど。既に勇者マイザーたちに手回しされていたってわけか。これじゃお呼びなんてかかるはずもないな。ちゃんと勇者のサインも記してあるし完璧だ。
しかし大してむかつかないのはなんでだろう? 多分、やつらのやることがあまりにもしょうもないことだからだろうな。ここまで恨まれることをやった覚えはないんだが。
「……」
それでも、腹は立たずとも腹は減ってきた。得意の召喚術がこういうときに使えればいいんだが、これはあくまでも戦闘用で、発動させるには自分以外のターゲットを倒すために使用することが前提な上、精神力もかなり消耗する。
うーん……この分だと誰も来ないだろうし、一人で依頼をこなすのもしんどいよな。それならギルドから立ち去って新たな仕事を探すとしようか。
よくよく考えりゃ、俺の脱力系召喚術じゃパーティーに入れてもらったとしてもすぐ舐められて追い出されるだろうし、召喚術で何が飛び出すかわからないという個性を生かして見世物小屋でも開くほうが得策だな。昆虫かなんか集めてそれをターゲットにすりゃいいんだ。
「――あの、ちょっとそこの旦那、よろしいですかい?」
「え?」
ちょうど立ち上がったときだ。誰かに野太い声をかけられた。ガタイはいいが身なりの悪い乞食みたいな髭面の男だった。
「な、なんだ?」
「仲間を探してるみてえで……へへっ、そういうことなら是非あっしらの仲間になっちゃくれねえかと思いやして……」
「……」
やたらとガラが悪い感じなのに妙に低姿勢で、どう見ても怪しさ満点だ。
溺れた者は藁をも掴むというし、それを見越して俺を騙し、味方になる振りをして金品を巻き上げようとしているケースだろう。
こんなもんで俺を騙せるとでも思ってるのか。せめて美少女を連れてこいと言いたい。いくら追放されたとはいえ、バカにされたもんだな。
まあとりあえず、この男の目的がなんであれ面白そうだし付き合ってやるか。
「ああ、むしろこっちから頼むよ。ちょうどパーティーを探してたからな」
「おおっ、そりゃありがてえ! あっしは戦士のラルフっていいやす!」
「俺は召喚術師のディルだ。噂になってるみたいだから知ってるかもしれないが」
「へい、そりゃもちろん。へへっ……」
「そうか。それなら話は早い」
よーし、盗賊の巣まで案内されたらこの男ごと一掃してやるか。正当防衛として返り討ちにしてやったあと、逆に金を巻き上げてそれを食事代にしてやればいいんだ。いやー、我ながら名案だな。実に楽しみだ……。
24
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜
妄想屋さん
ファンタジー
最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。
彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、
「このパーティを抜けたい」
と、申し出る。
しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。
なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる