勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し

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1.追放

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「ディル、君を僕のパーティーから追放させてもらう」

「……」

 やっぱりか。今日の狩りが終わったあと、俺はみんなにことごとく不機嫌そうな顔で無視されたかと思うと、宿舎に着くなり勇者のマイザーに部屋まで来るようにと言われたから、そのときからこうなる覚悟はしていたんだ。

 おまけに、既にほかのみんなも集まっていて俺のことをきつい目で見ている。特に幼馴染の少女ミーヤの冷たい眼差しが辛かった。

 俺なりに精一杯頑張ったつもりだけど、期待外れだったのかなあ。彼女の口利きのおかげでなんとか勇者パーティーに入れたものの、面目を潰してしまった形だ。まあこうなった原因はなんとなくわかっている。

「あたしからも言わせて! 理由はわかってるよね、ディル?」

「えっと……ヤカン?」

 俺の言葉に対し、質問してきた僧侶ミーヤを含めて、戦士バイドン、勇者マイザーが一斉にうなずく。案の定ヤカンだったか。

 俺の召喚術は発動すると敵を一発で倒せるが、何が飛び出すかは蓋を開けて見ないとわからなくて、しかも拍子抜けするような倒し方になってしまうんだ。

 この間は俺の召喚した大きめのヤカンがモンスター、サイクロプスの頭に落ちることで倒しちゃって、それを目撃したほかの冒険者たちに笑われたもんだから、不満が爆発しちゃった感じだ。

「おめーにはもううんざりなんだよ、ディル。俺たちがお前の間抜けな召喚術のせいで今までどんだけ恥かいてきたって思ってんだ! ああ!?」

 大柄な男バイドンに胸ぐらを掴まれる。

「それは申し訳なかったな、バイドン」

「おい、ディル、なんだよその不満げな言い方、本当に反省してんのかよ!?」

 そりゃ追放されたわけだし、多少不満げになるのはしょうがないだろうと。

「もちろん少しは反省くらいしてるけど……正直しても仕方ない面もあるけどな。俺の召喚術がパーティーの役に立ってないわけでもないし、それが風変わりなのは仕様みたいなもんだし……」

「言い訳すんな! その舐めた態度も気に入らねえってんだよ!」

「……」

 胸ぐら掴みながら言う台詞じゃないだろうと。

「じゃあどうすりゃいいんだ。泣き喚けばいいのか?」

「てめえ! ぶん殴るぞ!」

「それは困る。痛いのは嫌だからな」

 バイドンが台詞通り殴ってくるかもしれないので、一応召喚術の準備はしておこう。俺の召喚術は脱力系なだけに確かに間抜けなところはあるが、詠唱スピードも威力も抜群なので、やつが殴ろうとした瞬間に決着がつく。

「まあまあ、バイドン、よさないか。もういなくなる人なんだし、関わることもないよ」

「ちっ……そうだな。マイザーの言う通りだ。おめーなんか金輪際関わりたくもねえよ」

「ホントよ、こんなやつ紹介したあたしがバカだった。目障りだから早く消えてっ!」

「……わかった、こんな俺と接してくれて今までありがとう。マイザー、ミーヤ、バイドン。それじゃ……」

 追放されるにしても、元仲間に手を出さざるを得なくなるという最悪の展開は免れたようだ。俺は頭を下げつつその場をあとにした。勇者パーティーに愛着があるし後ろ髪を引かれる思いだが、ここまで嫌われたなら仕方ない。

 ん、声を押し殺すようなみんなの話し声が聞こえてくる。

「――いやー、もしディルに逆上されたらどうしようかとヒヤヒヤしたよ……」

「ま、まったくだ。脅した甲斐があるってもんだぜ。ビビってくれたみたいで助かった!」

「ふう。あいつの召喚術は地味だけど超強いしねぇ……」

「「「乾杯っ……!」」」

「……」

 その超強いやつがいなくなったらどうなるんだと心配にもなるが、祝勝会をやるくらいだしこれでよかったんだろう。

 さて、追放されて居場所がなくなった以上、いつまでも悲嘆に暮れてる暇はない。いくら腕に自信があるとはいえ、召喚術最大のデメリット、すなわち次に使えるようにまで冷却時間を必要とするという問題から、一人でできることには限界があるし仲間を探さないとな……。
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