勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し

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第三章

50話 支援術士、岐路に立たされる

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ついに【創造神の試練】をクリアしましたよ、師匠ししょう! 聞こえますか、師匠ししょう?』



俺はMMOWG(多人数参加型戦争ゲーム)【矛盾バストーロ】で師事しじした師匠ししょうるプレイヤーネーム【クマメタル】に連絡を取ったが、例のごとく闘いにっているのだろう。全く反応が無い。

世界を震撼しんかんさせた一千万オーバーキルのテロリスト【クマメタル】と同じ名前で、仮想現実世界にいてプレイをするイカれた変態。なに如何どうって、仮想現実世界にいて、のプレイヤーネームで登録とうろく許可きょかされたのか、首をかしげげる事しきりだ。



『カルマ、やっぱり鳥は良いな! 空を自由にべる!』



イカれた変態は例のごとく、俺の話は全く聞いていなかったようだ。はぁ、トランスしている師匠ししょうにはなにを言っても届かない。自分のルールを忠実ちゅうじつに実行する災厄さいやくす。【られたらり返す】、いたってシンプルなのルールに全てをける狂人きょうじん

全てと言って良いプレイヤーからきらわれる存在そんざい、【凶神オーバーアウト】と呼ばれる禍々まがまがしいたましい燐光りんこう師匠ししょうだった。



師匠ししょう、またモンスタープレイですか? 楽しんでますね【アルグリア戦記】!』



『まあな、血のエフェクト処理しょり以外は最高に、興奮こうふんするぜカルマ!』



其処そこ仕様しようなので仕方ないですよ。あきらめて下さい師匠ししょうれから俺やりましたよ。【創造神の試練】をクリアしました!』



『ほう、鬼畜きちく仕様しようのマゾゲー(マゾヒズムを楽しむ変態のゲーム)シナリオをクリアするとは、お前はイカれてるよカルマ?』



否々いやいや、アンタにだけは言われたくないよ! イカれた変態が、俺を変態性へんたいせい嗜好者しこうしゃのように言うのは納得がいかない! 断固反対だんこはんたいする!



れで、鬼畜きちくシナリオの報酬ほうしゅうなんだったんだ?』




完全かんぜん制覇せいはクリアの特典は、一千億英雄ポイントけん・身体能力値の限界突破券げんかいとっぱけん・スキルわく撤廃券てっぱいけん・ユニークスキル創造券そうぞうけん・特別シナリオ【ゲーム世界へ転生】の選択券せんたくけんが各一枚づつですね!』



中々、破格はかくな特典内容だった。能力値(筋力STR耐久力VIT知力INT敏捷AGI器用DEX魅力CHA)を英雄ポイント分で、人種種族の成長限界値の上限を設定変更が出来る。但し、スタート時の能力値は初期設定値のままなので、所謂いわゆる俺Tueeeは出来ない。

スキルわく撤廃てっぱいって、無限むげんにスキルをセットして良いらしい。勿論もちろん、スキルもカスタマイズ可能だ。

【アルグリア戦記】では、キャラアバターごとにスキルレベルの成長上限値が設定されている。其の成長限界値を、英雄ポイントを使用してカスタマイズする。初期設定値は変更不可な仕様しようなので、最初からの俺Tueeeは勿論もちろん出来ない。



ユニークスキル創造って、もうチートだよね?



最後の特別シナリオ【ゲーム世界に転生】の選択券せんたくけんいたっては、インダストリア社の運営チームが悪乗わるのりしてネーミングしたとしか思えないものだった。



『ほう、【ゲーム世界に転生】か? 浪漫ロマンじゃないか、! はっははははは~!』



豪快ごうかいに笑う師匠ししょうに、『ははは、・・・・・・』と苦笑にがわらいで応答おうとうする俺だった。



なんにしても、楽しんで来いカルマ! 一回いっかいりの人生だ、いの無いようにな!』



全くその通りだ。一回コッキリの人生だ。



俺は亡くなった幼馴染おさななじみの分も、人生を楽しむと決めていた。



『じゃあ、師匠ししょう! ! また連絡しますから、楽しみにしていて下さい!』



『おう! またなカルマ!』





----------





俺はめずらしくおどけた調子のカルマとの通信つうしんを切った。そして、自分がした闘いの顛末てんまつを見届ける。


地平線ちへいせん一杯いっぱいに、人類じんるいだったむくろが転がっている。

惨憺さんたんたる光景こうけいに、感情の無い目を向ける。

生きとし生けるもの全てが炭化たんかしていた。

其処そこ灼熱地獄しゃくねつじごくごとく、ほのおの熱が充満じゅうまんしていた。



俺は大空を滑空かっくうしながら、気持ち良く熱風と舞う。



凄いなカルマのやつ。誰一人としてクリアした者がいない、鬼畜きちく無理むりゲーシナリオをクリアするとは。恐れ入ったぜ、俺には無理だ。退屈たいくつで死んじまう。なにが楽しくて【カルマ値(行動に因るゲーム設定上の善悪の数値)】を調整しながら遊ばなければならないんだ。



「ふん、そんなものはクソらえだ!」 



俺は我道わがみちをいく。自分のルールにのっとって、【アルグリア戦記】を楽しむ。そんな大陸たいりく統一とういつ制覇せいはために、楽しみを封印ふういんしてまで作業ゲー(楽しみの無い行為を繰り返すゲーム)のような事なんか出来るかってんだ!



プレイヤーネーム【クマメタル】は、そう毒突どくづくとに燃える翼をひるがえし大空をばたく。プレイアバター【ラフレシア】として、十の災厄アンタッチャブル一角いっかく、【不死鳥ふしちょう】として災厄さいやくをバラく。



アルグリア大陸の生きとし生きるもの全ての頂点ちょうてん十個体じゅっこたいの内の一体をプレイするクマメタルに取って、闘いとは殲滅せんめつを意味する。ようするに皆殺みなごろしが、彼の流儀りゅうぎだった。

十の災厄アンタッチャブル】には、縄張りテリトリーから外には移動不可の制限が付く。ゆえにアルグリア大陸の住民達は、十の災厄アンタッチャブル勢力圏せいりょくけんおかさない。所属国家ごと滅ぼされた数多あまた教訓きょうくんが、たましい脳髄のうずいに【畏怖いふ】としてきざみ込まれていたからだ。

【不死鳥ラフレシア】の縄張りテリトリーは、【アゾット炎獄えんごく】。炎が燃えさか地獄じごくのような火の監獄かんごく。誰もおとずれない炎獄えんごく守護しゅごする鳥は、ほむらやす事無ことなく、炎獄えんごく以外の空を翔ぶ事はかなわなかった。



自分が燃やし尽くした灰燼かいじんから立ち昇る命の残照ざんしょうを、美味おいしそうに吸い込み大空をまわる。



アルグリア大陸の四十七国家を掌中しょうちゅうおさめる事を目指めざさず、全ての勢力を倒す殲滅せんめつプレイヤーである【クマメタル】にとって、【アルグリア戦記】とは息抜いきぬきにほかならない。

攻撃されなければ、攻撃をしないルールを持つ【クマメタル】は、俺を攻撃しろ、毒饅頭どくまんじゅうらえと、で、今日も陽気ようきに【アルグリア大陸】を飛翔ひしょうしていた。





----------





『ぽ~ん♪ マスター、ようこそ仮想空間へ! 本日のご用命ようめいを、おうかがいします!』



現実と仮想現実の世界とのエントランスである【ポータルサイトの案内人】の【ナリア】が、いつものごとく行き先をたずねる。



『やあ、ナリア! 【アルグリア戦記】で頼む!』



あおひとみあお毛玉けだまごとたぬきが、了解りょうかいとばかりに、空中くうちゅう可愛かわいらしくうなずく。



『いってらしゃいませ、マスター!』



『ああ、行って来る!』 





----------





『【カルマ】さま! ようこそ、【アルグリア戦記】へ! 現在、継続けいぞくプレイ中のアバターはごいませんが、新規しんきアバターでプレイを始められますか?』




純白じゅんぱくの空間に浮かぶ執事服に身を包んだ黒猫の姿の、【アルグリア戦記の総合案内人】である【ジョドー】が、つねに変わらない慇懃いんぎんな動作でカルマを迎えた。



『ああ、ジョドー。今回は【ゲーム世界に転生】の【カルマ】でプレイするよ!』



『なるほど! 【創造神の試練】クリア特典ですかカルマさま? ほう、特別シナリオですね、・・・・・・【ゲーム世界に転生】? なんと厨二病ちゅうにびょうあふれるネーミングでしょう! のジョドー、あきれを通り越して笑ってしまいそうです!』



そう言いながらも、全く感情を表に出さないポーカーフェイスの執事に、カルマは内心ないしん苦笑くしょうをしてゲームスタートの準備を始める。

特別シナリオ【ゲーム世界に転生】を選択券で指定し、プレイアバター【カルマ】を選択する。



あれ、封印ふういん状態じょうたいじゃないぞ? 如何どうなってるんだ?



キャラアバターのステータス情報を見ながら、カルマはいぶかしむ。



スキルと能力値欄のうりょくちらんで、ポイント固定の封印ふういん表示ひょうじが無い!

はて、特別シナリオってイージーモードなの?

まあ、無いなら無いで問題は無い。



次に能力値を限界突破券で上限値を解除かいじょにして、英雄ポイントで上限一杯まで限界値を上げていく。



う、うん? あれ、未々まだまだ上がり続けるぞ?



一千億英雄ポイント券を使用してポイントを獲得かくとくしてと!



おっ! 百億英雄ポイントで【無限表示】にったぞ!



筋力STR耐久力VIT知力INT敏捷AGI器用DEX魅力CHAの各能力値をマックスの【無限表示】まで上げる。

状態値である生命力HP魔力MP精神力MSP持久力EPは、育成次第で人種種族関係なく無限に成長が可能だった。



状態値まで【1】ポイント固定だったら、【創造神の試練】はクリア出来なかっただろう。

次にスキルだ。れは悩むな。スキルわく撤廃券てっぱいけんで制限を解除かいじょ。現在所持している全てのスキルを付与するのは、容易たやすい。

だが、スキルは生き物なのでスキル同士で相性が悪いと、逆に力を発揮はっき出来できない。

目指すは両親の早世そいせいを阻止する。【創造神の試練】でアルグリア統一とういつ制覇せいはげた仲間達の無念むねんを全て改変かいへんする。

ために全ての特典とポイントを使用して、プレイヤーネーム【カルマ】なら絶対にしない無双むそうプレイをると決めていた。自重じちょうはしない。

十二万三十四回。合計でプレイアバター【カルマ】の両親が亡くなった回数だった。両親が脳裏情報マインドインフォメーション事切こときれるたびに、胸の奥がチクリと痛んだ。自分のために文字通り命を投げ出した両親。

辛苦しんくを共にし、文字通り命をけて大陸たいりく統一とういつ制覇せいはげた仲間達。誰もが身体に、心に傷をっていた。共に戦い共に笑い共に死んだ仲間達。何万回と見た戦友ともの死。無念むねんおもい。全て俺が変えてやる。運命シナリオくつがえなお改変かいへんする。



カルマはそう心に決めていた。



スキルの選定せんていは、最終スキル構成を想定そうていして逆算ぎゃくさん(目的地から逆に辿たど算段さんだん)で作り上げていく。両親を仲間を助けるため、カルマは未来地(最終目標)を設定し、現在地(生まれた時)から小目標を設定し、ルートを設定していく。れをすスキル構成を的確てきかく付与ふよしていくのだった。



お、アイテムの持ち込みも制限がないぞ?



スゲー、流石さすがは特別シナリオ! やっぱりスーパーイージーモードだ!



つねのカルマなら喜ぶどころか、しぶい顔にる状況だが、なにせ今回はまんいちにも失敗は許されない。何故なぜなら特別シナリオ券は一枚しかない。失敗すれば再度【創造神の試練】をクリアしてももらえるか不明ふめいだった。

過去のシナリオでもシナリオマラソン(特典目当てで何回も同じシナリオをプレイする事)での特典とくてん獲得かくとく防止ぼうしために、初回しか獲得かくとく出来できない限定特典も存在そんざいしたからだ。



ふ~ん、子孫しそんでの継承けいしょうプレイは、不可ふかなのか?



全てのカスタマイズを終えたカルマは、ジョドーに【ゲームスタート】を申告しんこくする。



『準備は万全ばんぜんのようですね。カルマさま、・・・・・・』



執事の言葉には、うれいがあった。顔には全く表さない感情かんじょうが、ノンプレイヤーキャラクターをよそおうジョドーのこころうちった。



如何どうしたの、ジョドー? なにか心配事でもるの?』



普段とは様子の違うジョドーにカルマは、小首こくびかしげる。



『いえ、全く問題はありません! 【カルマ】さま、準備が整いました! !』



『行って来、えっ?(なに、お元気でって?)』



珍妙ちんみょうな顔をしたままのカルマが、エフェクト処理しょりされ分解ぶんかいされながら消えてった。







To be続きは  continuedまた次回で! ・・・・・・
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