ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し

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4話 拾い物

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「うぐぐ……」

「……」

 教会近くにいる謎の人物にある程度近付いたところで、唸るような声が俺の耳に届いた。

 な、なんだ? 何かヤバいスキルでも発動してるのか……? っていうか、例のやつはうずくまったまま動こうとしない。後ろから見た感じ、所々破れたズボンや上着を纏っていて髪は短くもないし長くもない、声は中性的で性別すらも判別できないが、とても小柄だしまだ子供なのはわかる。

「おい、大丈夫か?」

 怪我や病気かもしれないので、一応声をかけてみる。

 甘いと思われるかもしれないが、一方的にスキルで追い払うなんてことになったら後味が悪いってだけの話で、助けるつもりはまったくないんだ。戦うことはリスクを背負うことでもあるし、避けられるのであればそれに越したことはない。

「だ、誰だい……?」

 その子は、苦みや驚きの成分に加え、泥臭さも加味したなんともいえない顔で振り返ってきた。まだこの段階では少年か少女なのかもよくわからない感じだが、とても綺麗な顔立ちをしている。

「俺はわけあって神授石を拾いにきたんだ。あんたもか……?」

「へえ……。そんじゃ、ライバルってやつだね。追い払いたいところだけど、もうあたしは動けないよ……」

「……」

 あたし、か。服も顔も泥で汚れてるし言葉も荒んでるけど、どうやら女の子みたいだな。ただ、まだまだ油断はできない。もう動けないと思わせて、隙を見て襲い掛かる腹積もりかもしれないからだ。なので一応距離は取らせてもらう。

 凶悪な犯罪者の中には若い子もいるみたいだし、どんな危険なスキルを持っているのかわかったもんじゃないからな。一応【分解】で分析して調べることはできるが、俺のスキルだと触れるほど近付く必要があるんだ。

「なんで動けないんだ? 病気か……?」

「……そうだよ。お腹ペコペコ病ってやつ……。あたしは小さい頃に親に捨てられて孤児院にいたんだけどねえ、最近になってそこから抜け出してきたんだよ。戻れば助かるかもしれないけど、今更あんなところに戻るつもりもないのさ……」

「……」

 孤児か……なるほどな。大体事情が読めてきた。

「あれか……お仕置きかなんかされて、抜け出して神授石を拾って金稼ぎしうようとしたけど、腹が減りすぎて動けなくなったってことか」

「あははっ……。あたしが言いたいこと、全部言われちゃったよ。ま、そんなとこだね。あの孤児院の酷さは、お仕置きなんて言葉が可愛いって感じるくらいの代物だけどさ……」

「そんなに荒れてるのか……」

 一度、冒険者ギルドで噂になってるのを俺は聞いたことがあって、最近院長が交代してから虐待が常態化して、子供たちが次々と抜け出してるなんて囁かれてたが、本当だったんだな。

「今までだって、少しでも口答えしようもんなら一日水だけなんてことはざらにあったんだけどさ……今じゃもっと厳しくなって、水すらも与えなくて体罰のおまけつきさ……」

「酷いな……」

 最早、お仕置きどころか虐待の域すらも超えてしまっているように思う。これでは抜け出すのも無理はないだろう。

「あー、目眩がする……。目を瞑ってもグルグルが止まらないし、もうそろそろくたばりそうだよ。せめて来世は、もう少し食える家に産まれたいもんだねえ……」

「……」

 倒れるようにして地べたで大の字になって、恨めしそうな笑みを空に向ける少女の姿は、どこを取っても薄汚いように見えて何故だか美しく感じた。ありのままの姿を曝け出してるからなのかもな。

「――あ、そうだ。あたしの集めた神授石、よかったらあんたに売るよ」

「おー……もう諦めてるとばかり思ってたが……」

「最後のあがきってやつだよ。ラストチャンスッ」

「よし、見せてくれ」

「あいよ」

 俺は少女から神授石を八つ受け取ったが、まだ中身を調べるつもりはなかった。これだけあれば【分解】スキルで弄ればどうにでもなるだろうしな。

「で、いくらで買い取ってくれるんだい……?」

「物々交換で頼む」

「へ?」

「飯奢ってやる。それでいいだろ」

「マ……マジかいっ……!?」

 少女の泥まみれの顔が輝く。

「……ってえ、まさかそのあと、あたしの体を美味しくいただこうってんじゃないだろうねえ?」

「ん、ダメか?」

「べっ……別にいいけどさ、多分満足してもらえないって思うよ。あたしこれでも15歳なんだけど、そういうのって初めてだし、ご覧の通り薄汚いし、それに栄養も足りてなくて胸も出っ張ってないしガキみたいな体だもん……」

「安心しろ。成熟するまで待ってやるから」

「お、サンキュー――って、別にさ、あんたがロリコン野郎なら、痩せ我慢せずにやってもいいって……!」

「こいつ」

「イテッ」

 生意気な彼女の頭を軽く小突いてやると、いかにも気まずそうに舌を出された。

「ご、ごめんよ。ロリコン野郎扱いして……」

「もういいって。お前、名前はなんていうんだ?」

「あたしはね、リリっていうんだ。あんたは?」

「俺の名はフォードだ。よろしくな」

「よろぉー! って、これじゃあさ、なんだか友達になったみたいだねえ」

「ん、別に減るもんじゃないし友達でもいいだろ。かなり凸凹な感じだけどな」

「あははっ。違いないねえ。これじゃ、ご主人様と奴隷にしか見えないよ……」

「よし、じゃあそれ採用するか?」

「えぇー!?」

 俺たちはなんとも苦々しく笑い合った。神授石を拾いにここまで来たわけなんだけど、もしかしたらもっといいものを拾えたのかもしれない……。
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