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第七二回 帰還
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「《カウンターボール》――」
三つ目に新たに覚えたこの術は、ことのほか役に立った。
向かってくる魔法を、黒光りする杖で捕えるようにして受け止め、打ち消すのではなくそれを自分の攻撃魔法として弾き飛ばすのだ。
ブライトマンから受けた光球を、光の素魔法攻撃としてハイドマンに放つことで倒し、ハイドマンから受けた闇の魔法をブライトマンに返すというやり方だ。
素魔法とはいっても、敵の術を素魔法に変換し凝縮したものなわけで威力抜群なのか、一発で仕留めることができていた。
さらに、広間に戻る頃には《エレメンタルチェンジ》という術まで覚えた。これで四つ目だ。
ターニャによれば、杖が輝いてる間なら受けた魔法の属性をなんにでも変えられるそうだ。
属性を変更するのに最初は少し時間がかかったが、レベルが3になる頃には攻撃を受けてから詠唱後すぐに変化してくれるようになったし、慣れもあって《カウンターボール》にスムーズにつなげられるようになった。
――ようやく呪殺の神殿から脱出して、俺のレベル上げの成果をみんなで確認する。
燃費が悪すぎて《ダークフォレスト》は一度しか使えずまったく上がらなかったが、《マジックキャンセル》はレベル5、《カウンターボール》はレベル4《エレメンタルチェンジ》はレベル3まで上がっていた。みんな俺を囲んで祝福ムードだ。
「コーゾー様、頑張りましたね」
「さすがはコーゾーさんですっ!」
「マスター、偉いっ」
「ご主人様、ご立派でしたわ……」
「コーゾー、お疲れなのだー!」
「コーゾーどのは素晴らしいお方だっ……」
「……ああ、ありがとう、みんな……」
いつの間にか、アトリたちだけじゃなくラズエルまで俺を褒め称えている。神殿に入る前と後じゃ態度が全然違うから、何か変な夢でも見てるようだ。しかし、空も暗くなり始めてるし随分遅くなったな。さすがに御者も呆れてそうだ。
「――おおっ……無事に帰ってきたか……」
御者に愚痴られつつリンデンネルクに到着した俺たちは、早速鑑定師クオルのところまで行き、例の薬草で煎じた湯薬を届けた。思ったより元気そうで安心したが、まだ腫れも引いてなくて呼吸も苦しそうだし、とてもじゃないが鑑定ができるような状態じゃなさそうだ。
「師匠、これを飲んで早く元気になってくださいねっ!」
「すまんのう。わしなんぞのために……。それじゃあ早速頂こうか――うっ。コホッコホッ……」
「鑑定師様、湯薬の効果を上げるためにも全部飲んでください……」
「う、うむ……」
あまりにも苦かったのか、クオルは顔をしかめていたものの、アトリの手助けもあって最後の一滴まで飲み干した。
「……ふう……大分楽になったような気がする……。ところで、コーゾーよ……どうじゃ、ターニャは役に立っておるか……?」
「ええ、そりゃもう……」
「おお……そりゃ何よりだ。この苦い湯薬のおかげでわしもあと数日ほどで歩くくらいはできそうだから、急いでお主たちを追いかけるぞ……! イタタッ……」
「いや、鑑定師さん、それはさすがに……」
気持ちはありがたいが、少し動いただけでもまだ相当に痛そうだしな……。
「前代未聞のジョブ……反魔師の可能性を少しでも引き出してやりたいのだ。真の勇者の選定の儀式までにな……」
「師匠、無理をしないでください! それに、あと数日じゃ間に合いません!」
「そうですよ、鑑定師様、ゆっくりしないと……」
「……大丈夫だ。今はギルドのほうにおるが、ターニャの兄のグレッグに既に頼んである。あやつの知り合いにオスカーという憲兵がおってな、これまた実に良い馬を持っておるから、必ず間に合わせるつもりだ……」
「……」
この怪我で、しかももう若くはないはずなのに、鑑定師クオルはやる気に満ち溢れてるな。俺も頑張らないと……。
「まったくもうっ、師匠ったら相変わらず頑固なんですから……! グレッグ兄さんによろしく言っておいてください!」
「うむ。お前が役に立てていると知ったら、飛び上がって驚くであろうな……」
「もー! 私だって鑑定師のハシクレですし、そんなに子供じゃないですよ!」
「ん、ターニャよ、いつもと空気が違うの。まさか、好きな男でもできおったか?」
「うっ……。わかっちゃいましたか……? さすが師匠っ!」
「かっかっか! ……イッ、イタタッ……」
「……」
好きな男? それって、状況的には一人しか該当しないわけだが……俺、何か惚れられるようなことしたっけ……。
「ターニャ、私負けませんから」
「ふっ。我も負けぬ……」
「自分も負けませんよー」
アトリとラズエルの乱入で一層熱が籠ってきた。俺はなんとも気まずいが。
「あたちこそ負けないもんっ」
「わたくしが最後に大逆転して、ご主人様のハートを射止めてさしあげますわ……オーッホッホッホ!」
「あたいが最後に笑うのだ! こんこんっ」
「「「むー!」」」
「……」
シャイルたちまで……。なんだかモテてるというより弄られてるみたいだなあ。この先、どうなることやら……。
三つ目に新たに覚えたこの術は、ことのほか役に立った。
向かってくる魔法を、黒光りする杖で捕えるようにして受け止め、打ち消すのではなくそれを自分の攻撃魔法として弾き飛ばすのだ。
ブライトマンから受けた光球を、光の素魔法攻撃としてハイドマンに放つことで倒し、ハイドマンから受けた闇の魔法をブライトマンに返すというやり方だ。
素魔法とはいっても、敵の術を素魔法に変換し凝縮したものなわけで威力抜群なのか、一発で仕留めることができていた。
さらに、広間に戻る頃には《エレメンタルチェンジ》という術まで覚えた。これで四つ目だ。
ターニャによれば、杖が輝いてる間なら受けた魔法の属性をなんにでも変えられるそうだ。
属性を変更するのに最初は少し時間がかかったが、レベルが3になる頃には攻撃を受けてから詠唱後すぐに変化してくれるようになったし、慣れもあって《カウンターボール》にスムーズにつなげられるようになった。
――ようやく呪殺の神殿から脱出して、俺のレベル上げの成果をみんなで確認する。
燃費が悪すぎて《ダークフォレスト》は一度しか使えずまったく上がらなかったが、《マジックキャンセル》はレベル5、《カウンターボール》はレベル4《エレメンタルチェンジ》はレベル3まで上がっていた。みんな俺を囲んで祝福ムードだ。
「コーゾー様、頑張りましたね」
「さすがはコーゾーさんですっ!」
「マスター、偉いっ」
「ご主人様、ご立派でしたわ……」
「コーゾー、お疲れなのだー!」
「コーゾーどのは素晴らしいお方だっ……」
「……ああ、ありがとう、みんな……」
いつの間にか、アトリたちだけじゃなくラズエルまで俺を褒め称えている。神殿に入る前と後じゃ態度が全然違うから、何か変な夢でも見てるようだ。しかし、空も暗くなり始めてるし随分遅くなったな。さすがに御者も呆れてそうだ。
「――おおっ……無事に帰ってきたか……」
御者に愚痴られつつリンデンネルクに到着した俺たちは、早速鑑定師クオルのところまで行き、例の薬草で煎じた湯薬を届けた。思ったより元気そうで安心したが、まだ腫れも引いてなくて呼吸も苦しそうだし、とてもじゃないが鑑定ができるような状態じゃなさそうだ。
「師匠、これを飲んで早く元気になってくださいねっ!」
「すまんのう。わしなんぞのために……。それじゃあ早速頂こうか――うっ。コホッコホッ……」
「鑑定師様、湯薬の効果を上げるためにも全部飲んでください……」
「う、うむ……」
あまりにも苦かったのか、クオルは顔をしかめていたものの、アトリの手助けもあって最後の一滴まで飲み干した。
「……ふう……大分楽になったような気がする……。ところで、コーゾーよ……どうじゃ、ターニャは役に立っておるか……?」
「ええ、そりゃもう……」
「おお……そりゃ何よりだ。この苦い湯薬のおかげでわしもあと数日ほどで歩くくらいはできそうだから、急いでお主たちを追いかけるぞ……! イタタッ……」
「いや、鑑定師さん、それはさすがに……」
気持ちはありがたいが、少し動いただけでもまだ相当に痛そうだしな……。
「前代未聞のジョブ……反魔師の可能性を少しでも引き出してやりたいのだ。真の勇者の選定の儀式までにな……」
「師匠、無理をしないでください! それに、あと数日じゃ間に合いません!」
「そうですよ、鑑定師様、ゆっくりしないと……」
「……大丈夫だ。今はギルドのほうにおるが、ターニャの兄のグレッグに既に頼んである。あやつの知り合いにオスカーという憲兵がおってな、これまた実に良い馬を持っておるから、必ず間に合わせるつもりだ……」
「……」
この怪我で、しかももう若くはないはずなのに、鑑定師クオルはやる気に満ち溢れてるな。俺も頑張らないと……。
「まったくもうっ、師匠ったら相変わらず頑固なんですから……! グレッグ兄さんによろしく言っておいてください!」
「うむ。お前が役に立てていると知ったら、飛び上がって驚くであろうな……」
「もー! 私だって鑑定師のハシクレですし、そんなに子供じゃないですよ!」
「ん、ターニャよ、いつもと空気が違うの。まさか、好きな男でもできおったか?」
「うっ……。わかっちゃいましたか……? さすが師匠っ!」
「かっかっか! ……イッ、イタタッ……」
「……」
好きな男? それって、状況的には一人しか該当しないわけだが……俺、何か惚れられるようなことしたっけ……。
「ターニャ、私負けませんから」
「ふっ。我も負けぬ……」
「自分も負けませんよー」
アトリとラズエルの乱入で一層熱が籠ってきた。俺はなんとも気まずいが。
「あたちこそ負けないもんっ」
「わたくしが最後に大逆転して、ご主人様のハートを射止めてさしあげますわ……オーッホッホッホ!」
「あたいが最後に笑うのだ! こんこんっ」
「「「むー!」」」
「……」
シャイルたちまで……。なんだかモテてるというより弄られてるみたいだなあ。この先、どうなることやら……。
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