87 / 87
87.精霊術師、闘志を燃やす
しおりを挟む「ルコ、素材を持ってきたよ」
「ルコー、見て見てー」
「ほら、見なさい、ルコ」
俺たちは闘技場ダンジョンのボス、ストロングガーディアンを倒し、さらに最速記録を達成したこともあって、レア素材の『守護者の怒り』をゲットして持ち帰ったところだった。サラマンダーの鱗以上に熱を感じる青い石だ。
「お、おおぉっ! これまた、とんでもない代物でありやすねえっ!」
「ぐすっ……」
目を輝かせて素材を見つめるルコの前で、泣き声を発する人物がいた。
「ルコったら、素材くらいでそんなに喜んで、おかしいです……えぐっ……」
「あ、あっしからしたら、なんでこんなことでファレリア嬢が悲しんでるのか、さっぱりわからないっすよ!」
ルコからファレリアと呼ばれたこの子は、最近俺が契約した哀のオリジナルの精霊の幼女で、俺たちが闘技場ダンジョンに行く際、カレティカの森で彼女の泣き声や地の精霊を頼りに探し当てた子なんだ。
それも、あのファレリアの花が咲いていた場所だった。あそこでずっと契約してくれる人が来るのを待っていたらしいが、あまりにも引っ込み思案なために、俺が花を採取したときは泣き声すら上げられなかったんだそうだ。
それで寂しさと後悔のあまり、俺の夢の中に出現したとのこと。契約すると人の同情や共感を得やすくなるだけでなく、繊細さを得るので魔力もかなり上がるんだとか。
「まったくもって、余にはこれくらいで喜ぶのも悲しむのも意味不明だし、けしからんっ!」
ルコとファレリアの様子を見て何故か憤ってるのは、怒の精霊として目覚めたばかりのマリアン王女だ。確かによく考えるとそれっぽかったとはいえ、彼女が精霊だとはさすがに気付けなかった。
怒の精霊と契約すると、相手が従いやすくなって物理攻撃力もアップするらしい。
とにかくこれで喜怒哀楽の精霊たちが揃ったので、いよいよリヴァンたちとの決戦も近いってわけだ。
「みなさん、楽しそうですねえ。くすくすっ……」
3人の精霊たちの様子を見て可笑しそうに笑ってるのは、楽の精霊であるソフィア嬢だ。彼女は冒険者ギルドからしばらく休暇を貰ったってことで、今じゃ宿舎で俺たちと一緒に生活している。
ちなみにソフィアによると、あれから【天使の翼】のリーフはあそこがなくなったために完全に女の子となり、本人もその気で美少女として磨きがかかったそうで、パーティーに加入したいという男たちが宿舎に押し寄せてるらしい。
いつかは無効化も切れるだけに、そのときを想像したら色々と気の毒になるが、まあ元に戻ったとしても彼は花嫁に選ばれるほど魅力があるから大丈夫だろう。
「――ほいっ、できたよっ、これがアッチアチの、闘志のガントレットでありやすねえっ!」
「「「「「「おおぉっ……!」」」」」」
出来上がったアイテムを見せてもらうと、それは大きな手袋のようなものだった。
「ルコ、ありがとう。それにしても腕が一段と上がってるし、もう師匠を越えたんじゃ?」
「そ、そそっ、そんなことはないでありやす! 照れやすううぅっ!」
ルコは今にも昇天しそうな顔だ。
「それで、どんな効果があるのー?」
「どういう効能があるのかしら?」
「どういった効き目ですか? ぐすっ……」
「どうした効用なのだ!?」
「どのような効果なのです?」
「そ、そんなにみんなで一斉に詰め寄られたら、やっぱり照れやすよぉっ! これを装備すると、物理攻撃力が格段に増すんでありやす!」
「へえ、なるほど。結構しっくりくるなあ」
俺は早速、闘志のガントレットを左手に装着してみることに。右手には星のブレスレットがあるし、杖も持たなきゃいけないので邪魔になるしな。
無効化能力を弱める狂気を前にして、風刃の杖じゃ得意の打撃力も弱まっていたし、かなり心強い武器になりそうだ。また、大きいし丈夫なので盾としても使えるはず。
ただ、狂気の化身であるリヴァンたちを倒すにはもっと強い装備も必要になってくるかもしれない。なので、これからも慢心することなく様々なダンジョンで最速記録を達成し、レア素材を獲得するつもりでいる。
ソフィアによると、既に上位の狂気による脅威が迫りつつあるらしいしな。どんな事件が起こるかはまだわからないが、次は上級パーティーの影に潜入することになるだろう。
これから俺たちにとって本当の闘いが始まるといってもいいだろうが、それでも負ける気はまったくしない。なんせ、こっちには無の精霊――すなわち最強の精霊王や、心強い喜怒哀楽の精霊たちがついているんだから……。
2
お気に入りに追加
1,299
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説

ゴミスキル【スコップ】が本当はチート級でした~無能だからと生き埋めにされたけど、どんな物でも発掘できる力でカフェを経営しながら敵を撃退する~
名無し
ファンタジー
鉱山で大きな宝石を掘り当てた主人公のセインは、仲間たちから用済みにされた挙句、生き埋めにされてしまう。なんとか脱出したところでモンスターに襲われて死にかけるが、隠居していた司祭様に助けられ、外れだと思われていたスキル【スコップ】にどんな物でも発掘できる効果があると知る。それから様々なものを発掘するうちにカフェを経営することになり、スキルで掘り出した個性的な仲間たちとともに、店を潰そうとしてくる元仲間たちを撃退していく。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!
世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。
美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。
忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。
そこでひどい仕打ちを受けることになる。
しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。
魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。
彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。
感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。
深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。
一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。
さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。
彼らはどん底へと沈んでいく……。
フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》
魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます
こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。
こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。
名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
5分間の制限時間?クリアタイムが全て5分を超えているのに?
ボス部屋の攻略時間ではなく、それを含めた『ダンジョンの攻略時間』ですよ。
ソフィアさん一択
嫁にするなら彼女が一番いいかもしれないですね。
精霊の実体は、女性しかいないのですか?屑の詐欺師には、両指を切断!足も折って!白魔法で癒す作業を永遠にさせる!
男もいることはいるんですけど、無系の精霊は女性ばかりですねw
>屑の詐欺師には、両指を切断!足も折って!白魔法で癒す作業を永遠にさせる!
ドルファンが違う意味で人気者にw