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3.精霊術師、真相を知る
しおりを挟む「お、俺……?」
本当に自分が声をかけられたのかと疑ってしまうが、彼女が微笑みつつうなずいてくれたので安心することができた。
受付嬢ソフィア……近くで見るとよくわかる。熾天使と言われるだけあって本当に美しすぎる人だ。おそらく、俺が喧嘩を仲裁したってことで報酬をわざわざ持ってきてくれたんだろう。ありがたい話だ。
「身を挺して喧嘩を仲裁なさるなんて、本当に勇気のある行動です……」
「ど、どうも。無謀ともいいますがね」
「いえ、そんなことはないです。だってあなたは、あの鉄壁パーティーの一人ではないですか」
「え、ええっ? 俺のことを知ってるんですか……?」
あの熾天使が俺のことを知っていたという事実に思わず声が上擦るが、彼女はそんなことを気にする素振りもなく笑ってくれた。
「もちろんです。だって、レオン様はここ最近で一番依頼を達成してると評判のパーティーにいらしたので」
「…………」
俺の名前まで知ってくれてるなんて……。あまりの嬉しさに呆然としてしまうも、周りから羨むような棘のある視線に突っつかれて我に返る。
そうだな、現実問題として、俺はもうあのパーティーの一人ではないんだし、嘘をつくのも失礼だからちゃんと言ったほうがいいだろう。
「ああ、その件については、俺は何も関係ありませんので」
「ええ?」
「メンバーのドルファンっていう白魔術師が凄いだけなんで……俺自体は大したことないし、がっかりさせちゃってすみません」
「あ、あの……レオン様、今、ドルファンと仰いましたか?」
「え、はい」
なんだ? 受付嬢ソフィアがはっとした顔で俺を見上げてきた。
「実はその件で、最近妙な噂を耳にしたことがあるのです。一部ではかなり評判の悪い方のようでして、支援の腕は普通なのに、パーティーの特徴を事前に調べてそれを自分の手柄にするとかで」
「え、ええ……?」
そういえば、ドルファンがパーティーに入ってきたのは一番あとだったような。そうだ、確か最初のほうで依頼を受けていたとき、あの男はいなかった。その頃から既にダメージを受けたような覚えはあまりないんだよな。ってことは、一体……?
「…………」
ダメだ、考えてもわかりそうにない。最初のほうはモンスターが弱いだけで、ドルファンに関しては元々普通の白魔術師だったけど、俺のパーティーで成長したっていう可能性もあるんじゃないかな。
それとも、俺に何か力があるとか……いや、なんの精霊とも仮契約すらできてないんだし、まさかな……。
「と、とにかく、俺はもうあのパーティーを追放されちゃったんで……関わりのないことです」
あいつらがどうなろうと関係ないし、今の俺は自分のことで精一杯だからな。
「追放だなんて、そんな……。レオン様はあんなに頑張っていらしたのに。何一つ文句を言わずに重い荷物を抱えておられましたよね……」
「そんなところまで見てくれてたんですか」
「はい。あんなにも身を粉にして貢献できる方がパーティーにいるなら、どれだけ心強いかといつも思っていました」
「ど、どうも。照れます」
「ふふふ。あなたならきっと……いえ、必ずや成功するでしょう」
「ええ?」
「私は今まで色んな冒険者の方々を見てきましたが、あなたには特にオーラがあります。絶対に諦めないでください」
「ど、どうも……」
「あと、これが喧嘩仲裁の報酬です。では、私は仕事が残っていますのでこの辺で失礼しますねっ」
ソフィアは笑顔で俺にお金の入った小袋を渡すと、あっという間にカウンターの奥へと消えていった。
おおっ……中を覗いたら、銀貨3枚、銅貨50枚も入っていた。これは助かる……。
それにしても、彼女は物凄くシャイだって聞いてたけど、そんなことは微塵も感じなかった。頭が良くて余計なことを喋るタイプじゃないからそう思われた可能性のほうが高そうだな。
オーラ、か……。正直諦めかけてたが、ソフィアのおかげでやる気が出てきた。もう少しあがていみるとしようか。
というわけで俺は早速、目を皿にして依頼を探し始める。これから一週間くらいのホテル代と飯代は手に入れたが、その次があるかどうかは自分次第だからだ。
んー……やっぱりいいのがないなあ。もうすぐ夕方になりそうだし今日はやめておくか――って、待てよ。俺はとある貼り紙を思わず二度見してしまった。諦めかけてたら、凄い依頼を発見した……。
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