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70話 内と外

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「ア、アルウッ、一体どこに行くんだよっ……!?」

「いいから黙ってついて来なさいっ!」

「アルウ様ぁっ、カインさんっ、お待ちくださいませぇぇっ!」

 アルウはこんな何もない空間のどこに僕を連れて行くというんだろう。ファランが不安そうに追いかけてくるのもわかるくらい不気味な場所だし、どこに行っても同じ景色が続くだけだと思うんだけど……。

「「――はぁ、はぁ……」」

 やがて僕はアルウと一緒に倒れるように座り込む。あー、きつかった……って、疲労を削除するのも忘れるくらい頭が真っ白になってた。

「……確かこの辺ね……」

「え、この辺……?」

 今までと景色は一切変わらないような。

「――あ、あったわ、あそこっ!」

「あ……」

 アルウが指差した方向に、何か壁のようなものがぼんやりと見えた。あれは一体……? アルウに引っ張られるようにしてさらに近付くと、その正体は大きめの箱の山だった。な、なんだよこれ……。

「カイン、この箱の中身、覗いてみなさいっ!」

「え……」

「アルウ様、そ、それは……いけませんっ」

「ファランは黙ってなさいっ! ほら、カイン、早くっ!」

「わ、わかったよ……」

 ファランの反応を見るに、なんか凄くヤバそうなものが入ってそうだけど……アルウから促されて仕方なく開けた箱の中には、大量の髑髏がこれでもかと詰め込まれていた。

「う、うわっ!?」

「ププッ……どう、驚いたでしょ!」

「そ、そりゃ……って、これってまさか……」

「カインがしでかしたんでしょ。どこでこんなのを拾ってきたのか知らないけど、これを覗いたとき、本当にびっくりしたんだからねっ!」

「あ、あはは……」

 なるほど、僕が削除したあの髑髏もこのダストボックスの中にあるはずだしね。ってことは、疲労とか頭痛とか眠気とか、ほかのものもこの辺に纏めて箱詰めされてるってことか……。

 って、よく見てみると箱の上部に何が入ってるか書いてある。さすがに頭痛の箱や腰痛の箱はわかってても絶対に開けたくないけど……。

「アルウ、開ける前にちゃんとここを読まなきゃ……」

「カインったら……なーんにもわかってないわね!」

「えっ」

「いきなり開けるから面白いんでしょっ!」

「あははは……」

 まあそりゃそうかもしれないんだけどさあ……。

「でも、変なのばっかり入ってて怖いから、今度はお菓子とかも頼むわねっ!」

「お菓子って……」

 そんなの削除したとして、アルウに勝手に食べられたら減るんじゃ……? って一瞬思ったけど、よく考えたら幽霊だから減らないのか。

「んじゃ、気が向いたら入れておくよ。それじゃ、僕は外でやることがあるからまたね、アルウ、ファラン」

「ちょ、ちょっとっ、まだお喋りしたいんだから待ちなさい、カイン――」

「はい、カインさん、お疲れ様でございます――」

 僕が【削除&復元】スキルで自分を復元させると、慌てた様子のアルウと軽くお辞儀カーテシーをするファランの対照的な姿が視界から消えるとともに、周囲の風景がそれまでとはまったく別のものに見る見る変わっていく。

「――はっ……」

 気が付くとそこは冒険者ギルドの依頼スペースだった。今までずっとダストボックスの中にいたわけなんだけど、あれからどれくらい時間が経ったんだろう?

 恐る恐る懐中時計を見てみる……って、あれっ!? 僕は時計が壊れてるのかと思って何度も確認したけど普通に針は動いてるし、何より上部の窓から漏れてくる柔らかい陽射しはまだ朝の時間帯であることを示していた。

 ってことは、ダストボックスの中だと時間が経過しないってことか。思い当たる節はあって、削除した肉とかリーネがいつも新鮮だって褒めてくれるし、時間経過による腐敗がまったく起きてないってことを意味している。

 正直、自分自身を削除して一体なんになるのかって当初は疑問に思うところもあったけど、意外と使えるんじゃないかな。

 アルウやファランに会えるだけじゃなくて、自分が捨てたものを使えるかどうか実際に確認したいときとか、凄く忙しいんだけどじっくり考え事をしたいときとか、そういうときにダストボックスに入るとよさそうだね。

 さすが、僕のオリジナルスキルの進化バージョン【削除&復元DX】だ。さて、何時間も過ごした気がする中でまだ朝だっていうのがとても不思議な気分だけど、改めてS級の依頼を探すとしようかな……。
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