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29話 振る舞い
しおりを挟む名前:カイン
レベル:33
年齢:16歳
種族:人間
性別:男
冒険者ランク:A級
能力値:
腕力S
敏捷B
体力A
器用C
運勢D
知性S
装備:
ルーズダガー
ヴァリアントメイル
怪力の腕輪
クイーンサークレット
スキル:
【削除&復元】B
【ストーンアロー】D
【殺意の波動】D
【偽装】D
【ウィンドブレイド】E
【鑑定士】B
【武闘家】C
テクニック:
《跳躍・中》
《盗み・中》
ダストボックス:
吸収の眼光25(特殊攻撃)
アルウ(亡霊)
毒針19(特殊攻撃)
疲労17
頭痛13
眠気11
あれから十日ほど経った。僕は王位争いに自分を利用しようとしてるっていう二つの勢力について色々と思い悩みながらも、【削除&復元】スキルでマイナスの感情や疲労を消しつつ何事もなく活動できたので、レベルやスキルの熟練度を全体的に底上げすることができた。
スキル名:【鑑定士】
熟練度:B
効果:対象に向かって使用することで様々なステータスを調べることが可能。また、使用していない状態でも対象の弱点や視野内に隠れているもの等、見えるはずのないものが見えるようになる。
こうして改めて所持スキルの効果を鑑定してみると、当初と比べて新たな項目が追加されてるのがわかる。これも熟練度が上がったことの影響だろうね。
「――はあ……」
至って順調に見えてそれでも溜息が尽きないのは、肝心のA級の依頼が中々見つからないことだ。
最後にこのランクの依頼を受けたのが十日以上前、それも例の殺され屋が僕を罠にかけるために作った偽の依頼だから、あまりにもなさすぎる。これじゃ、僕が目標にしてるS級冒険者に昇級するのは一体いつになるのやら……。
「あの、カイン様」
「あ、エリス……」
普段はカウンターか、その奥の部屋にいることの多い受付嬢の彼女が依頼スペースまで来るなんて珍しい。この辺の壁に依頼の書かれた紙を貼るのは、確かギルドの係員の中でも補充員の仕事のはずだからね。何かあったのかな……?
「僕に何か緊急の用事とか……?」
「何も言わず、こちらへよろしいでしょうか……」
「あ、う、うん……」
多分何か僕に話があるとは思うんだけど……こんなにかしこまっちゃって、一体なんについてだろう? 以前ああいう恐ろしい話を聞かされたこともあって、僕は最近彼女と親し気に話をするのをなるべく控えてるんだ。
エリスと仲良く話したりこうして一緒に歩いたりするのはもちろん嬉しいんだけど、これじゃ彼女の身の安全にも影響するかもしれないと思って少し離れると、なんと彼女のほうから寄ってきて手まで繋いできた。
「エ、エリス……?」
「カイン様は私のこと、お嫌いですか……?」
「そ、そんなっ。むしろ……す、好きなほうっていうか、その……」
「う、嬉しいです……。カイン様ったら、最近よそよそしかったので……」
「そ、それは――」
「――わかってます。でも、寂しかったんです。だから、今だけは……」
「……う、うん……」
胸がこれ以上なく高鳴る。エリスと繋いだ僕の手から異常な鼓動が伝わるんじゃないかって心配してしまうほどだった。それを知ってか知らずか、彼女は僕の手を一層強く握ってきた。
「……バレないようにしているので大丈夫ですよ。それに私はただの受付嬢ですから。あと、誰にでも愛想よく振る舞ってます。こうして手を繋ぐのはカイン様とくらいですけど……」
「ははっ……」
なるほど、エリスがみんなに愛想よく振る舞うのは、周りに対して僕だけの特別な存在だって思われないようにするためなんだ。そうすることで、僕と親しい彼女を狙えばギルド全体を敵に回すことになるし、僕の力を利用しようとしてるっていう例の二つの勢力に対して牽制できるからね。
カウンターの前まで行った途端、エリスの表情は変わらなかったけど、いつもの仕事をする人――受付嬢――のオーラを一気に纏うのが感じ取れた。仕事をするときとそうでないときの切り替えがちゃんとできる有能な人だってことがよくわかる。
「カイン様、これをご覧ください……」
「……こ、これは……!」
神妙な表情のエリスから渡された一枚の紙を見て、僕は目を疑った。
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