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第32話

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 変動ステータス

 名前:望月《もちづき》 塔矢《とうや》
 性別:男
 レベル:15

 HP:5020/5020
 SP:5010/5010
 腕力:1
 俊敏:1
 器用:6
 知力:1
 魔力:1

 固定ステータス

 才能:B
 人柄:F
 容姿:B
 運勢:C
 因果:B

 スキル:【HP&SP+5000】【HP&SP自然回復力50%上昇】【ブレードリングトラップ】

 装備:レザージャケット レザーブーツ ダガー



 変動ステータス

 名前:鹿沼《かぬま》 美佐希《みさき》
 性別:女
 レベル:13

 HP:5019/5019
 SP:5009/5009
 腕力:1
 俊敏:1
 器用:1
 知力:1
 魔力:5

 固定ステータス

 才能:C
 人柄:F
 容姿:C
 運勢:D
 因果:C

 スキル:【物理魔法耐性50%上昇】【共有】【魔術師】

 装備:レザーベスト レザーブーツ ロッド



「……」

 想定外の情報を前に、僕は唖然としていた。

 こりゃとんでもない。今まで戦ってきた右列とは全然違う。

 ステータスを見れば一目瞭然だけど、普通に強い。というかHPもSPも桁外れだ。こんな凄そうなスキルが三つもあるなんて、召喚士のガリュウから当たり判定されるのも納得だ。

 スキルの効果については、それぞれの名称を見ればなんとなくわかるけど、【ブレードリングトラップ】っていうのが唯一まったくわからないので詳細を調べてみる。

 何々……敵の攻撃があった際、または敵との距離が近いとタイミングで刃がクルクルと周囲を飛び交うそうだ。

 へえ。つまり、このスキルは攻撃と防御の両方を兼ね備えてるわけだね。

 もう一つ、気になるのは女の持っているスキル【共有】で、味方同士であれば上昇系のスキルが共有されるっていう効果だ。それでお互いを強化できる上、弱点をカバーし合えるから地味に厄介だ。

 こりゃ、100%殺すつもりでいかないと、こっちのほうがお陀仏になる可能性もありそうだ。

 ただ、やつらは鑑定系スキルを持ってないので、僕たちについてよくわからないはずだし、左列だからと舐めてかかる可能性もある。それは充分なアドバンテージだ。

 今回の相手は今までよりずっと強いとはいえ、負ける要素も見当たらない。唯一の懸念材料なのがサクラの精神状態だ。

 仇が目の前にいるんだから当然っちゃ当然なんだけど、目つきが山賊の頭時代に戻ってしまってる。

 話しかけることすらも躊躇してしまう、そんな悲愴な雰囲気なんだ……。

「……」

 僕はサクラを刺激しないように、そっと連中へと近づいていく。

 ユイのほうを見ると、それがわかったのか神妙な顔でうなずいていた。

 いくら相手が非道な右列であることが濃厚だといっても、モンスターではないのだから会話くらいできるはず。

 99%黒だと思っても、本当に黒なのかどうかはわからない。話してみて判断したいところ。万が一、別の人間が犯人だっていう可能性もある。

 それに、あいつらがクズなのはわかりきってるけど、それでもどんな連中なのかくらいは知っておきたい。

 まず戦う前に話す必要があると感じたのは、相手も同じなのか、襲い掛かってくる気配は今のところなかった。

 左列を舐めているっていうのもあるのか、悠然と僕らのことを待ち構えているといった印象だった。

 僕たちはある程度距離を置いてから幹の上に着地して、二人組のほうへと歩いていく。

「そこにいる二人組は右列だよね?」

「ククッ。そうですよ」

「ああ? んじゃあおめーはカスの左列か?」

「……」

 このミサキって人、なんかやたらと口の悪い女性だな……。

 やたらと挑発してくるので、心配になってサクラのほうを見やると、放心状態で固まっている様子。

 怒りを通り越して呆れちゃってるのか、あるいはトラウマが原因でショック状態に陥っているのか、それはわからないけど心配になってくる。

 やつらが仇であるかどうかが判明次第、なるべく早く決着をつけたほうがいいかもしれない。

「そうだよ。僕たちは正真正銘、左列の生き残りだ。ところで、戦う前にお前たちに聞いておきたいことがある」

「いいですよ。なんでしょう?」

「戦うだぁ? おい、脳みそあんのかよ、おめー。戦うじゃなくて甚振られるの間違いだろうが!」

「まあまあ、ミサキさん、そう言わずに話だけでも聞いてあげましょう」

「わ、わかったよ、トウヤ。さっきから虫けらがワーワー鳴いてるから、ついつい突っ込みたくなったんだよ……」

「……」

 虫けらだって? 僕たちのような左列は人間ですらないのか。わかってはいたけど、右列って本当にこういうのばっかりなんだな。

 それでも、僕にとっては口が悪いミサキ以上に不気味に感じたのは、このトウヤとかいうクールな雰囲気の男だ。

 左列が虫けらっていう認識でいるのはミサキと同様のはずなのに、それでも話を聞く姿勢なのがまず怖い。

「ここにいる、サクラの兄さんを殺したのは、お前たちなのか?」

「……ええ。その通りです。覚えていますよ。哀れな左列の中でも、私はに基づいて獲物を狙いました」

「とある法則?」

「そうです。それは、家族、恋人、親友等の片割れを狙い、目の前で殺すことです。何故かわかりますか? それだけ、復讐しようと必死になるからです。なので、そこにおられるサクラさんもあえて生かしたというわけです。それをゆっくりと踏み潰すのが何よりの快感ですから。ゆえに、ここまで生き残ってくれて感謝しかありません。以上です」

「……そうか。よくわかったよ。清々しいまでのクズだね」

「ククッ。そうですね。まあ正直者ともいいますが」

「はっ。おめーらみたいななんにもできねー雑魚よりはよっぽどマシだろ! この世はなあ、力、結果こそが全てなんだよ!」

「そうか。確かに一理ある。それなら、思い知らせてやらないとね……」

「ブッ。思い知らせるって……笑わせんな! おめーら左列がなんの力もない虫けらだってこと、ちゃんと理解してんのか⁉」

「まあまあ。ミサキさん、お話もここで終わりのようですから、思う存分暴れてください。もしかしたら、あっけなく結末を迎えてしまうかもしれませんが……」

 僕たちと二人組は、自然と距離を置き始めた。もう、いつ戦いが始まってもおかしくない状況だ。

 だけど、その前に一つだけ確認しておきたいことがある。

「サクラ、大丈夫だよね?」

「サクラさん、私たちだけでも――」

「――いや、やる。絶対に。大丈夫だし、お願いだからやらせて。この手で、兄さんの無念を晴らしてやりたいんだ……」

「……」

 虚無の表情のサクラにこんなことを言われて、止められる人なんているだろうか? いや……そんな人間、いるわけがない。

 頭に血が上りすぎて影響が出ないかどうか心配だけど、それでもこのまま見守るしかなかった。
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